DX人材育成とは?必要性やメリット、育成を実現するためのポイントを解説
デジタル技術の進化や市場環境の変化が加速するなか、企業が競争力を維持・向上させるためにはDXの推進が欠かせなくなっており、その鍵を握るのがDX人材の存在ですが、専門人材の不足や育成方法に悩む企業も少なくありません。
本記事では、DX人材育成の概要から、その必要性やメリット、具体的な育成ステップや成功のポイントまでを分かりやすく解説します。
DX人材育成とは
DX人材とは、DXを推進するための専門的なスキルを備え、それを実際の業務の中で発揮できる人材のことを指します。
単にデジタル技術に詳しいだけではなく、自社の業務内容や課題を深く理解し、周囲を巻き込むリーダーシップや円滑なコミュニケーション力も兼ね備えていることが求められます。
こうしたスキルを従業員が身につけられるよう企業が支援し、DXを担う人材へと育てていく取り組みを「DX人材育成」といいます。
近年DXの推進は多くの企業で求められており、DX人材を育成することは重要な課題の1つといえるでしょう。
DX人材育成の必要性
DX人材育成について解説しましたが、なぜDX人材育成が必要なのでしょうか。
本項目では大きな2つの理由について解説します。
DX人材の人手不足の問題
多くの企業がDX推進に向けた取り組みを進めていますが、DX人材の不足が大きな課題となっています。
特に中小企業では、デジタルやデータ活用に精通した専門人材を確保できず、構想はあっても実行に移せないケースが少なくなく、その結果、競争力の強化や業務改革が進まず、DXが停滞してしまう場合が多いです。
こうした課題を解決するためには、外部採用に頼るだけでなく、社内人材を計画的に育成するプログラムを充実させ、継続的にスキルを習得できる機会を設けることが重要です。
DX人材育成の「リスキリング」とは
リスキリングとは、従業員が新たなスキルや知識を習得し、変化するビジネス環境に適応するための学習プロセスを指します。
デジタル技術の進展や市場環境の急速な変化に伴い、従来の業務スキルだけでは対応が難しくなっています。
そのため、既存人材がデータ活用やデジタル技術に関する知識を身につけることが重要です。
DX人材育成において、リスキリングは即戦力を生み出す重要な育成手法であり、組織全体の競争力向上にも直結します。
DX人材育成のメリット
DX人材を育成することにはさまざまなメリットがあります。
本項目では代表的な3つのメリットを解説します。
システム全体の一貫性を維持できる
DX推進を外部ベンダーに委託すると、打ち合わせや認識のすり合わせが難しくなり、エンジニアの技術レベルや知識の差がある場合は、完成度に不満が生じる場合があります。
その結果、設計意図と異なる仕様や連携が不十分なシステムになる恐れもあります。
一方、社内のDX人材ですべて対応が可能な場合においては、目的や背景を踏まえた判断が可能となり、システム全体の一貫性を保ちやすくなるため、リスクの軽減にもつながります。
自社事業に最適化したDXを推進できる
事業方針や業務内容を深く理解している自社の社員をDX人材へと育成することで、自社に最適化したDXを推進しやすくなります。
業務フローや既存システムを熟知していることにより、現場の問題点を正確に把握し、実態に即した正しい企画の立案や開発が可能となります。
その結果、実効性の高いDX施策を着実に実行できるようになります。
DX推進に最適な組織体制を構築できる
DX推進は一部門のみで完結する取り組みではなく、複数の部署・社員が連携しながら全社的に進めていく必要があります。
そのため、各部署の役割や業務内容、組織全体の状況を把握している社員が中心となって推進することが重要です。
社内事情に精通したDX人材が中心となることで、部門間の調整や情報共有が円滑に進み、DX推進に最適な組織体制を構築しやすくなるでしょう。
DX推進に必要とされるスキル
本項目では実際にDX推進をおこなうために必要とされる5つのスキルを解説します。
ビジネスを構築するスキル
DX推進には、単に新たなデジタル技術を導入するだけでは不十分であり、既存のビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に見直し、企業全体の在り方を再構築する視点が求められます。
そのため、現状の業務フローを分析し、課題を整理したうえで最適な業務プロセスへと再設計するスキルが必要です。
加えて、変革に対する抵抗を乗り越えるために、従業員の意識改革を促し、組織全体を巻き込みながら改革を推進していくスキルも重要とされます。
データを有効に使うスキル
DX推進においては、蓄積されたデータを効果的に活用し、意思決定や業務改善に役立てるスキルが必要となります。
また、単にデータを収集するだけでなく、目的に応じて整理・分析し、経営や現場の判断材料として活かす力が求められます。
具体的には、データ分析の手法を理解することに加え、適切に管理するためのデータマネジメント、さらにビジネスインテリジェンスの理解と応用力が重要となります。
デジタル技術に精通するスキル
DX推進には、デジタル技術に精通するスキルが欠かせませんが、単なる知識の習得にとどまらず、実務で活かせる応用力まで身につけることが重要です。
知識については、基本的なプログラミングスキルやシステム設計能力、さらにAIやIoTなどの先端技術に関する知識が求められますが、応用力については、自社の課題を踏まえ、どの技術をどのように活用すれば課題解決につながるのかを考え、実行に移す力が必要とされます。
セキュリティ対策のスキル
DXを推進することでデータ活用やクラウド利用が進む一方、サイバー攻撃のリスクも高まり、セキュリティ対策が甘い状態のままでは、顧客情報の流出や業務停止といった重大な被害につながる危険性があります。
そのため、DX人材には適切なセキュリティ管理をおこなうスキルが求められます。
具体的には、情報セキュリティマネジメントの知識に加え、ネットワークセキュリティやデータ保護に関する知識を備え、リスクを未然に防ぐ体制を構築できる力が重要です。
コミュニケーションを円滑におこなうスキル
DXを成功に導くためには、これまで解説してきたような技術的なスキルだけでなく、コミュニケーションスキルやリーダーシップスキルも重要となります。
DXは組織全体の変革を伴うため、変化に対する不安や抵抗が生じることもあるため、そうした状況を受け入れ、丁寧な対話を通じて理解を促しながら、部署のメンバーをリードしていく力が求められます。
また、関係者と連携し、共通の目標に向かって協力しながらプロジェクトを推進するスキルも重要です。
DX人材育成を実現するための方法・ステップ
それでは、DX人材の育成はどのように進めればいいのでしょうか。
本項目ではDX人材育成を実現するための具体的な方法・ステップを解説します。
1.DX導入の目的を具体化する
DX人材育成を進める前に、まずはDX導入の目的を具体化することが重要です。
DXの目的は企業ごとに異なり、業界や事業内容、組織課題によって最適な取り組みは変わります。
そのため、自社がDXによって何を実現したいのか、どの課題を解決したいのかという目的を明確に定める必要があります。
目指す方向性を明確にすることで、求められるスキルや必要な人材がはっきりし、効果的なDX人材育成につながります。
2.必要な人材を定義し育成対象者を選ぶ
DX導入の目的を明確にした後は、その実現に必要なスキルや人材を定義し、不足しているスキル・人材を整理します。
既存社員のスキルをスキルマップなどを活用して可視化することで、DX推進に向いている人材を選びやすくなり、今後習得すべきスキルも明確になります。
さらに、人材を選ぶ際は特定の部署に限定せず、広い範囲から候補者を選定することも重要となります。
3.育成プログラムを構築・実行する
目的を具体化し、必要な人材を定義・選出した後に、育成プログラムを構築・実行しましょう。
ここでは、代表的な3つの育成プログラムを解説します。
座学
座学では、DXに関する専門的な知識を体系的に習得することができます。
加えて、DXに関する知識の他にも、DX推進に必要なチームマネジメントやリーダーシップ、マインドセットなども座学により習得することができます。
OJT
OJTは、座学で習得した知識を実際の業務の中で実践し、身に着ける学習方法です。
理論と実務を結び付けるため、座学とセットで実施されることが多く、より実践的なスキルの習得につながります。
社外ネットワーク
DX人材の育成では社内だけで完結せず、社外とのネットワークに繋げることも重要です。
また、IT分野は変化が速いため、常に最新の知識や情報を手に入れる必要があり、それを可能にする環境を整える必要があります。
4.習得スキルを業務遂行に活かす
ある程度の育成が進んだ後は、身につけたスキルを実際の業務に応用することが重要です。
研修で得た知識を実際の業務やプロジェクトに応用することで、理解がより深まり、実践的な力として定着するうえ、成果が見えることで社員は自信を持ち、主体的に取り組む姿勢も高まります。
こうした実務への活用を通じて、DX推進に直接貢献できる人材へと成長していきます。
DX人材育成を成功へ導くポイント
DX人材育成を成功に導くためにはいくつかのポイントがあります。
本項目では5つのポイントを解説します。
育成を目的にしないようにする
DX人材育成をおこなう場合には、育成そのものが目的になってしまうことが多いため、注意が必要です。
研修や学習機会を設けて知識やスキルを身につけても、それが実際の業務で活用されなければ育成した意味がなくなってしまいます。
重要なのは、DXに対する正しい考え方や目的を理解できる研修を実施し、その考え方を現場で実践することです。
育成と実際の業務を結び付け、成果創出まで見据えた取り組みをおこなうことが成功の鍵となります。
小規模プロジェクトからDX推進をする
DXを推進する場合、最初から大規模なプロジェクトに着手するのではなく、小規模なプロジェクトから始めることが重要です。
まずはリスクの少ない部門や限定的な業務プロセスで試行し、効果や課題を検証しながら進めることで、失敗の影響を最小限に抑えられます。
この段階でDXに対する理解や適応方法を学び、実践を通じてノウハウを学ぶことができます。
同時に、小さな成功体験を積み重ねることで、関係者のモチベーション向上なども期待することができるでしょう。
社内で支援体制を設ける
DX人材育成を成功させるためには、社内での支援体制を整えることが不可欠です。
DX推進は、担当者が研修を受けてすぐに成果が出るものではなく、実際に業務変革を実現するまでには一定の時間がかかります。
その過程で孤立してしまうと、負担や不安が大きくなり、モチベーションの低下につながる恐れがあるため、上司や経営層、関連部署など社内全体が連携し、相談や情報共有などの支援がしやすい体制を整え、担当者のモチベーションを継続的に支えることが重要です。
加えて、取り組みの進捗や成果が見えた際には、その取り組みを適切に評価し、成功事例として社内に共有することも欠かせません。
成功体験を組織全体で分かち合うことで、DXへの理解と協力が広がり、継続的な推進力の強化につながります。
外部の研修サービスなども活用する
DX人材を確保する方法は、自社での育成だけではなく、外部人材の活用や、専門性を持つDX人材の新規採用も有効な選択肢となります。
特に専門知識が不足している分野では、外部の力を取り入れることでDX推進のスピードと質を高めることができます。
また、育成の部分に関しても、外部の研修サービスやeラーニングを活用することで、社員のスキルレベルや役割に合わせた学習が可能となります。
このような教育サービスを取り入れることで、より効果的なDX人材育成の実現が期待できます。
適性を見極めた育成と配属をする
既存社員にDX推進の役割を割り振る場合は、個人の強みや興味、これまでの経験を踏まえたうえで、適性に合わせた育成や配属をおこなうことが重要です。
一律に同じ研修を受けさせるのではなく、それぞれの特性に応じた学習機会を提供することで、理解度や習得スピードが高まり、学習の効率や効果が向上します。
また、自分の関心や得意分野を活かせる環境は、仕事への主体性やモチベーションの向上にもつながります。
DX人材育成の成功事例
最後に、実際にDX人材育成を成功させた事例を解説します。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業は2017年12月に社内大学である「ダイキン情報技術大学(DICT)」を設立しました。
DICTでは、選抜された新入社員を対象に2年間の育成プログラムを実施し、高度なデジタル人材の育成を進めています。
さらに、管理職や経営層向けの講座も開講し、全社的なDX推進体制の強化を図っています。
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングスは2021年にグループ社員向けのDX育成プログラム「キリンDX道場」を立ち上げました。
これは人材育成の専門企業と共同で設計されたものであり、従業員全体のDXリテラシー向上を目的としています。
白帯(初級)・黒帯(中級)・師範(上級)の3段階で学べる体系を整え、段階的かつ実践的なスキル習得を促進しています。
DX人材の育成は目的を定め正しくおこなおう
DX人材育成を成功させるためには、目的を明確にし、必要なスキルや人材像を具体化したうえで計画的に進めることが重要です。
そこで有効なのが、スキルを可視化し戦略的に管理できる「スキルナビ」です。
従業員一人ひとりのスキルや成長状況をデータで把握することで、育成計画の最適化や適材適所の配置を実現できます。
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