「自社開発できるSIer」はなぜパッケージを選んだのか?
多くの企業が悩む「人事データの点在」から一元管理を実現させたADK富士システム様の運用術
東北地方において自治体・医療・金融など地域の社会インフラをITで支えるADK富士システム株式会社。ITのプロフェッショナル集団である同社が、独自のエンジニア評価・スキル管理の仕組みとしてスキルナビ(旧ESI)を導入したのは今から10年以上前のこと。なぜ自社開発が可能なIT企業が外部パッケージを選んだのか。そして、形骸化しがちなスキル管理をいかにして全社に定着させ、近年の「人事データ一元化」へと拡張させたのか。同社が歩んできた、地に足のついたDXの変遷を紐解きます。
Excelの限界と「評価の透明性」という課題
-スキルナビ導入以前に感じていた課題は?
以前はExcelによるスキル評価・管理を行っていました。しかし、誰がどのように評価したのかが見えにくく、評価の透明性・公平性を保つことに限界を感じていました。
「Excelだと、誰がどのように評価したのかが見えにくい。評価の公平性を保つために、もっと仕組みが必要だと感じていました」
-スキルナビとの出会いのきっかけは?
IT分野でのスキル標準化ニーズが社内で高まっていた時期、CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が策定した、IT人材の育成や評価のための共通枠組みを指します)をベースにした評価制度の構築を検討していました。評価システムの見直しを進める中でスキルスタンダード研究所にコンサルティングを依頼し、その流れでスキルナビ(当時のESI)との出会いがありました。
「導入時に、スキルセットや人材像をしっかり作り込めたことが大きかった。あのコンサルティングプロセスがなければ、今もExcelで悩んでいたかもしれない」
「作れるからこそ、作らない」――IT企業が下した論理的な決断

-自社開発は検討しましたか?
IT企業ですから「自分たちで作れる」という選択肢は常にありました。しかし、スキル管理に特化した外部パッケージを活用するほうが、コスト・リソース・ノウハウの面で現実的という判断に至りました。
「スキル管理に特化した外部の専門パッケージを活用するほうが、コスト・リソース・そして運用のノウハウの面において、現実的かつスピーディーであるという合理的な判断に至りました」
その理由は、大きく3つあります。
① スキル評価の設計には「IT開発とは別の専門知識」が必要
スキル管理システムの構築は、単なるデータベースやUI開発の問題ではありません。CCSFのスキル標準をベースにした評価設計、職種・職掌ごとのスキルセット定義、人材像の整備——これらはシステム開発の知見とはまったく異なる専門性が求められます。スキルナビを選んだことで、困ったときにスキル管理の専門家へいつでも相談できる体制が得られました。
② 評価ロジックの複雑さと、変更・保守コストの高さ
弊社では習得スキルの個数をベースにした判定方式を採用し、これを昇給・昇格と連動させています。一見シンプルに見えますが、評価ロジックをわずかに変更するだけでスコアが大きく変動し、人事評価全体に影響が及びます。
「平均値方式への移行を一度試みましたが、結果の変動が大きすぎて見送りました。自社開発でこの複雑なモデルを保守し続けるとしたら、制度変更のたびに多大な開発工数が発生します」
担当エンジニアの退職や異動があればロジックの継承リスクも生まれます。長年の運用実績を持つ専業ベンダーのシステムには、こうした複雑さへの対応知見が蓄積されています。
③ 「可視化」を超えた、従業員が自分ごと化する仕組み
スキル管理ツール導入でよくある失敗が、「データは集まるが誰も活用しない」という形骸化です。スキルナビにはスキル評価を昇給・昇格と直結させる設計が組み込まれており、従業員が自分のスキル状況を真剣に意識する仕組みが備わっています。Excelや自社開発では再現の難しい部分です。
定着の秘訣は「昇給・昇格との直結」

-スキル評価が現場に根付いた理由は何ですか?
社員の入力漏れは「ゼロ」です。
スキルナビのワークフロー機能も重要な役割を果たしています。評価期間の開始とともに対象者へ自動で通知が飛び、管理画面では「誰がまだ入力していないか」をリアルタイムで一覧できます。管理者が個別にリマインドする手間が大幅に減り、入力率を安定して高水準に維持できています。
しかし、定着の最大の要因は制度設計にあります。
「評価に紐づいているから、従業員自身がスキルの現状と向き合うようになった。それが定着の一番の理由だと思います」
スキルの可視化・管理にとどまらず、「従業員が自分ごととして取り組む動機づけ」まで設計されている点が、スキルナビを10年以上使い続ける重要な理由のひとつです。
CCSFをベースにしたスキルセットにより、SE・PM・インフラエンジニアといったIT職種ごとに評価項目が明確化され、「ジュニア→ミドル→シニア→エキスパート」というキャリア段階と連動した評価体系が整備されています。従業員は自身のキャリアの方向性を選択・表明でき、目標とする職掌に向けた不足スキルが一目でわかります。
10年以上で広がった活用範囲――スキル評価から人事データ一元管理へ
-現在はどのような形で活用されていますか?
導入当初はスキル評価が中心でしたが、現在は人事管理の基盤として幅広く活用されています。活用範囲は以下のように広がっています。
新しいシステムへの移行期のため操作の慣れは必要ですが、今まで行なっていた資格データの手動転記が不要となるなど、業務効率化の効果がすでに出始めています。
-クラウド版への移行はいかがでしたか?
クラウド版への移行後、システムレスポンスが大幅に改善されました。以前はオンプレミス環境でのパフォーマンスに不満を感じることもありましたが、現在は快適に利用できています。システムの安定性・可用性が向上したことで、利用者からの不満もほぼなくなりました。
10年以上という長期間にわたって同一ベンダーの製品を使い続けることで、蓄積されたデータの継続性も維持されています。過去からのスキル評価の推移が一貫したデータとして残っており、長期的な人材育成の分析に活用できる点も、継続利用の強みのひとつです。
従業員・マネージャーの意識の変化

スキルナビ導入後、従業員とマネージャーの双方に大きな意識の変化が生まれました。
・自分のスキルの強み・弱みが可視化されていなかった
・昇進に何が必要かが不明確で、モチベーションにつながりにくかった
・レーダーチャートで強み・弱みを視覚的に把握できるようになった
・目標職掌に必要なスキルが明確になり、自律的な成長につながっている
・職掌ごとのJDが公開されているため、自発的なキャリア形成・意思表示がしやすくなった
・評価の根拠が主観的になりやすかった
・データに基づく育成会話が実現し、1on1やアサイン判断の質が向上した
「誰がどのスキルを持っているか、すぐに把握できる。以前はヒアリングして回っていたことが、画面を見るだけでわかるようになりました」
ADK富士システムが活用するスキルナビの機能
10年以上の利用を通じて、ADK富士システムが特に価値を感じている機能を紹介します。
📋 スキル評価設計 SE・PM・インフラエンジニア等のIT職種に対応したスキルセットを、CCSFベースに、コンサルティングサポートを受けながら自社仕様にカスタマイズ。同時に、スタッフ部門に対応した人材像、スキルセットもITスキルとは別に構築。
🗺️ キャリアモデル・パス可視化 総合職、技術・技能職のキャリアパスをシステム上で定義。従業員が目指す方向を選択・表明でき、昇進に必要な不足スキルをレーダーチャートで視覚的に把握できる。
🔄 ワークフロー管理 評価期間の開始と同時に自動通知。管理画面で未入力者を一覧できるため、入力率を高水準に維持。リマインド対応などの管理者工数を大幅に削減。
📊 スキルマトリクス(部下一覧表示) マネージャーが部下のスキル・資格状況をクロス表示で一覧できる機能。1on1準備やプロジェクトアサインの判断に活用。自己評価とMgr評価のギャップも把握可能。
🏆 資格・研修の一元管理 資格情報・研修履歴を一元管理し、有効期限アラートや承認フローも標準搭載。手入力作業を大幅削減し、資格取得促進の仕組みとしても機能。
🤝 スキル管理専門家によるサポート スキルセットの見直しや制度変更時に専門家へ相談できる体制が常時確保。自社開発では得られない「スキル管理のプロフェッショナル」とのパートナーシップが、10年以上の継続利用を支えている。
今後の展望

-今後、スキルナビをどのように活用していきたいですか?
導入から10年以上が経過し、現行のスキルセットや人材像が最新のビジネスニーズに合わなくなってきている部分もあります。IT業界は技術の変化が速く、クラウド・AIといった新領域に対応したスキル定義へのアップデートも課題として認識しています。専門家に相談しながら、スキルセットの見直しを計画的に進めていきたいと考えています。
「スキル管理の専門家にいつでも相談できる体制があることは、10年以上使い続けてきた中で、大きな安心材料になっています。課題が出てきたときに一緒に考えてもらえる——そういうパートナーシップを今後も大切にしていきたいです」
-スキルナビの導入を検討している企業へのメッセージをお願いします。
特にIT企業の方には伝えたいことがあります。「うちはエンジニアがいるから作れる」という発想は理解できます。しかし、スキル管理の本質は技術ではなく、評価設計・制度設計・人材像の整備にあります。その領域には、IT開発とはまったく異なる専門知識が必要です。
私たちの判断は、「作れるからこそ、作らない」というものでした。専業ベンダーとのパートナーシップを通じて得られる専門知識とサポート体制は、自社開発では決して代替できない価値があります。10年以上使い続けてきた事実が、その答えを示していると思っています。
ADK富士システム株式会社(https://www.adf.co.jp/)
株式会社リクルートにて、大手企業を中心とした人材採用支援に従事。営業マネージャーとして組織を牽引する傍ら、採用管理システムの立ち上げや、RPO・BPO(採用部門代行)などの新規事業開発、人事コンサルティングを数多く手がける。その後、IT・SaaS企業にて営業組織の統括を経験。2023年、株式会社ワン・オー・ワンに参画し、現在はCS(カスタマーサクセス)組織を管掌。2025年より同社取締役に就任。
ADK富士システム株式会社
設立:1982年(昭和57年)1月(9月決算)
資本金:8,000万円
従業員数:116名 ※グループ従業員数:147名(2025年10月時点)
事業内容:DXソリューションサービス・プロダクトサービス・受託開発サービス
話者プロフィール
金子 卓也 様(企画部部長)
石川 弘明 様(推進担当)








