ヒューマンスキルとは?注目されている理由や構成要素、高める方法を解説

近年、ビジネスシーンにおいて「ヒューマンスキル」の重要性が改めて注目されています。
多様な働き方や価値観が広がる中で、単なる業務遂行能力だけでなく、人との関わり方やコミュニケーション能力といったスキルが求められる場面が増えています。
本コラムでは、ヒューマンスキルの概要や注目されている背景、具体的な構成要素、さらにスキルを高めるための方法について、分かりやすく解説していきます。
ヒューマンスキルとは?
ヒューマンスキルとは、アメリカのハーバード大学教授のロバート・カッツ氏によって提唱されたビジネススキルのひとつであり、彼はマネジメント層に必要な能力をテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つに分類しており、その理論はカッツ理論と呼ばれています。
本項目では、それぞれのスキルがどのようなものなのかについて解説します。
信頼関係を築くヒューマンスキル
上記で紹介した通り、ヒューマンスキルはカッツ理論における能力のひとつです。
ヒューマンスキルは、良好な人間関係を構築し、スムーズなコミュニケーションをおこなうために必要なスキルです。
ヒューマンスキルにはさまざまな構成要素がありますが、構成要素については次項において詳しく解説します。
業務を遂行するテクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務を進める際に必要な知識やノウハウ、技術の熟練度のことを指し、基本的なスキルである汎用的スキルと、特定の業種・職種に特化した専門スキルに分かれます。
具体的な汎用的スキルとしては、資料作成やプレゼンテーションといったビジネススキルや、プログラミングなどのITスキルがあります。
本質を捉えるコンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、複雑な状況や課題を整理し、物事の本質を見極める力を指します。
自身の知識や収集した情報を組み合わせて問題の核心を把握し、的確な判断や戦略立案に活用させることに用いられます。
特にマネジメント層に重要なスキルとされ、事業やチームを俯瞰しながら、本質を捉えて適切な判断を下すことに役立つスキルです。
ヒューマンスキルにおける8つの構成要素
本項目ではヒューマンスキルを構成する8つの要素について解説します。
リーダーシップ
リーダーシップとは、指導力や統率力のことであり、目標達成を目指して周囲を導き、組織やチームをまとめる力を指します。
リーダーシップというとリーダーや上司に必要な能力、というイメージを持たれがちですが、目標達成を目指し、成果をあげるために必要なスキルであり、リーダーに限らず誰にでも必要な能力といえます。
ネゴシエーション能力
ネゴシエーション能力とは交渉力と言い換えることもでき、異なる立場や意見を持つ相手と交渉し、双方が満足する合意に至るまで粘り強く関わり続ける能力のことを指します。
一方的な主張を押し通すのではなく、相手の立場や利益を理解しながら取引や調整をおこなうことが求められるため、幅広いビジネスシーンにおいて必要なスキルといえるでしょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、自分の考えや意図を相手に明確に伝えるとともに、相手の意見や気持ちを正確に理解する力を指します。
口頭での会話はもちろん、文章、ボディーランゲージも含まれます。
円滑な人間関係を築き、誤解や摩擦を防ぐうえで欠かせないスキルであり、あらゆる業務や職種で必要とされる基本的かつ重要な能力です。
プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力とは、自分が考えている内容や意思を正確に相手に伝える力を指します。
仕事の場面では、話の構成や分かりやすい資料を作成し、聞き手の理解や共感を得ながら、他者へ効果的に自分の意思を伝えるスキルといえます。
プレゼンテーションは多くの場面で活用されるため、説得力や表現力を高めるためにも重要な能力だといえるでしょう。
ヒアリング能力
ヒアリング能力とは、いわゆる傾聴力のことであり、相手の話に耳を傾け、その内容を正確に理解し共感する能力のことを指します。
相手の意図や背景を汲み取りながら丁寧に話を聞くことで、信頼関係の構築や円滑なコミュニケーションに繋がるため、ビジネスにおいては顧客や取引先、同僚などあらゆる人間関係において重要なスキルであるといえるでしょう。
コーチング能力
コーチング能力とは、相手に直接物事の「正解」を教えるのではなく、対話を通じて相手の自発的な学びを促しながら、相手の成長を実現していくスキルです。
相手の考えを引き出す質問やフィードバックを行いながら、自ら答えを導き出せるようにサポートします。
また、コーチングにおいては指導者と対象者が対等な関係であることが前提とされ、相手を尊重し、信頼関係を築く姿勢が不可欠です。
ファシリテーション能力
ファシリテーション能力とは、会議や打ち合わせなどの話し合いの場において、参加者が意見を出しやすい雰囲気づくりや会議の進行、取りまとめなど、案内・調整する能力のことを指します。
議論が脱線しないよう整理したり、対立する意見を調整したりする役割も求められます。
多様な意見を引き出し、参加者全員が納得できる場づくりをおこなうため、組織やチームで成果を上げるうえで重要な能力といえます。
向上心
向上心とは、自分自身の能力やスキル、知識をより高めようと努力や挑戦を続ける心や精神力を指します。
現状に満足せず、常に成長を模索し続けるための心構えといえ、新しいことに積極的に取り組む原動力となります。
ビジネス環境が変化し続ける中で、自己成長を追求する向上心は、個人のキャリア形成だけでなく、組織全体の発展にも大きく貢献する重要なヒューマンスキルの一つです。
ヒューマンスキルが注目されている理由
近年ヒューマンスキルには注目が集まっています。
本項目ではヒューマンスキルが注目されている理由について解説します。
ビジネスの環境変化へ適応するため
近年、働き方の多様化や、リモートワークの普及によって、コミュニケーションの取り方に変化がうまれ、今までのビジネス環境と同様の対面中心の円滑な対応が困難になってきています。
そのため、どのような働き方や環境にもスムーズに対応し、円滑なコミュニケーションをとることができるヒューマンスキルの向上が注目されています。
人材の多様化へ適応するため
近年は多様な考え方や立場、経歴をもった人々と働くことが当たり前となっているため、一人ひとりの個性や考え方を尊重した対応が求められています。
こうした環境では、円滑なコミュニケーション能力などのヒューマンスキルが欠かせません。
人材の多様化に適応し、多様な人々と協働して成果を出すためにも、ヒューマンスキルが重要視されています。
AIではできない役割があるため
AIなどの急速な進化により、さまざまな業務が自動化されてきていますが、創造性や共感力、倫理的な判断など、まだ人間にしか対応できないものは多くあります。
そういった、AIでは対応できない部分に対応する際には、相手の気持ちに共感して理解したり、人間関係に配慮した判断を下すヒューマンスキルが不可欠となるため、ヒューマンスキルの重要性は高まっています。
社員と職場全体の成長を促すため
ヒューマンスキルは、社員個人と職場全体の成長のために必要なスキルです。
個人においては、自身の強みや弱みを理解し、成長につなげることができ、また、職場においてはコミュニケーションの向上や信頼関係の構築、チームワークの強化につながります。
このように、ヒューマンスキルにより、社員個人の成長と組織全体の生産性や働きやすさの成長をはかることができるため、ヒューマンスキルの重要性が改めて注目されています。
ヒューマンスキル向上のメリット
ヒューマンスキルを向上させることは個人だけでなく組織にもメリットをもたらします。
本項目では具体的なメリットについて解説します。
職場環境改善につながる
ヒューマンスキルが向上すると、コミュニケーションを社内全体で取れるようになり、情報の共有がスムーズになります。
その結果、部署間やチーム内など、社内全体の連携が強化され、風通しの良い職場環境が実現できます。
また、職場環境が改善されることによって、従業員のストレスの軽減や働く意欲の向上にもつながり、離職者の低下にも期待できるでしょう。
人間関係が良好になる
ヒューマンスキルの向上により、上司や同僚、部下との円滑なコミュニケーションが可能となり関係性が良好になり、結果としてチームワークが向上し、業務を円滑におこなうことができるようになります。
また、ヒューマンスキルを向上させることで、社内だけでなく、取引先や顧客との関係性も良好になることが期待できるでしょう。
キャリアアップにつながる
ヒューマンスキルの向上は、個人のキャリアアップにも直結します。
良好な人間関係を築くことのできるコミュニケーション能力は、昇進や重要なポジションへの異動などのキャリアアップにつなげるための大きな要素となります。
また、個人のキャリアアップだけでなく、ヒューマンスキルの高い人材は組織の生産性向上にも寄与するため、最終的に会社全体の業績向上にもつながるでしょう。
ヒューマンスキルが高い人に共通する特徴
ヒューマンスキルが高い人は、傾聴力や伝達力に優れ、協調性・柔軟性・自己理解が高く、周囲への配慮や統率力を発揮できます。
本項目では、これらの特徴についてより具体的に解説します。
共感力と相手の理解力が高い
ヒューマンスキルが高い人は、傾聴力に優れているため、相手の発言の背後にある感情や意図の読み取りができるだけでなく、そういった相手の立場や気持ちに対し、共感しながら考える能力に長けています。
このような能力があることで、相手と信頼関係を築くことができ、対立や誤解が生じた場合でも円滑に解決へと導くことができます。
こうした共感力や理解力は、ヒューマンスキルが高い人の大きな特徴と言えます。
的確に伝えるコミュニケーション力が高い
ヒューマンスキルが高い人は、自分の考えを相手に合わせて分かりやすく伝達する能力に優れており、言葉を選び、相手の理解度や状況に応じて表現を工夫することで、誤解のない的確な伝達が可能です。
また、言語だけでなく、表情や身振りといったボディーランゲージや、声のトーンも意識するため、相手により的確な意思の伝達が可能になります。
主体性と協調性を両立する推進力がある
ヒューマンスキルが高い人は、自身の役割をしっかりと果たしながらも、チームのサポートをおこなうことに長けています。
主体性を持って業務を推進する一方で、周囲とともに協力しながら業務の進行をすることができ、困難な状況に直面しても前向きな姿勢を維持し、チーム全体のモチベーション向上にも貢献します。
このように、主体性と協調性を両立する推進力がある点が、ヒューマンスキルの高い人の特徴です。
ヒューマンスキルを高める方法
ここまでヒューマンスキルを高めるメリットや、ヒューマンスキルが高い人の特徴を解説してきました。
それではヒューマンスキルはどのように高めればよいのでしょうか。
本項目ではヒューマンスキルを高める4つの方法について解説します。
社内外研修やワークショップに参加・開催する
社内での研修実施や、社外の研修・ワークショップへ参加することで、ヒューマンスキルの重要性を学んだり、ヒューマンスキルの幅広い知識を習得することができます。
また、研修を実施する場合は、ヒューマンスキルを実践させるアウトプットの機会を多く設けることが重要です。
そうすることで、自身の課題を認識し、スキルを着実に高めていくことができるでしょう。
PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルとは、計画(Plan)を立て、実行(Do)に移し、その結果を評価(Check)、改善(Action)するという行動を繰り返すことで、継続的な成長を目指す手法です。
これらを回すことで業務やプロジェクトの質を継続的に改善することができ、生産性の向上につながります。
ヒューマンスキルを高めるためにも、PDCAサイクルを回すことは重要です。
フィードバックや1on1を行う
ヒューマンスキルは対人関係に関わる能力であるため、どの程度身についているのか、どれほどの高さがあるのかを自身で判断することが困難であるという特徴があります。
そのため、上司や同僚からのフィードバックや1on1を実施することで、第三者視点からの意見を得ることが重要です。
これにより、具体的な改善行動につながり、さらなるヒューマンスキルの向上が期待できます。
人事評価に盛り込む
ヒューマンスキルを人事評価の項目に取りいれることで、定期的な評価が実施され、社員がヒューマンスキルに対する意識を継続的に持ち続ける効果が期待できます。
評価項目に含めることで、日々の業務や行動の中でヒューマンスキルへの意識を促すことができるため、ヒューマンスキルに対する意識が低下してしまうことを防ぎ、社員が継続的にヒューマンスキルの向上を目指す環境を生むことができるでしょう。
ヒューマンスキルとは業務にとても重要なスキル
ヒューマンスキルは、自身の成長やキャリアアップに欠かせないスキルであると同時に、周囲や組織全体にも良い影響をもたらす重要なスキルです。
日々の業務や人間関係を円滑に進めるだけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上や企業の成長にもつながります。
習得には時間と継続的な努力が必要ですが、長期的に見れば必ず自分自身や周囲を良い方向に導くことに役立つスキルです。
ぜひヒューマンスキルの向上を目指していきましょう。