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360度評価で納得感のあるコメントとは?具体的な例文と評価のポイントを紹介!

より公平で納得感のある人事評価の手法として、「360度評価」が注目を集めています。この時、評価する側はフリーコメントを記入する必要がありますが、何を書けば良いのかと頭を悩ませる人は少なくありません。

今回は、評価対象者のやる気を削がずに適切なコメントを残すためのコメント例文を紹介します。押さえておくべきポイントと共に、実際の評価の際の参考にしてください。

360度評価で適切なコメントをするコツ5つ

5つのコツを紹介します。

上司はマネジメント能力を重視

部下に指示を出してチームを束ねる上司に対しては、上司のマネジメント能力を重視した評価をすることが大切です。

現場に近い作業よりも、部署やチーム内のメンバーの業務量や能力を把握して滞りなく仕事を進めるよう采配することが上司の仕事です。全体を俯瞰した対応ができているか、部署全体の業務効率や売り上げアップに貢献できているかなどを意識して評価を行うことが求められます。

部下は仕事を実行するスキル重視

部下は基本的に上司の指示を受けて仕事を進めます。そのため、業務一つ一つを実行するスキルを重視して評価を行う必要があります。

従業員一人の業務遂行能力には行動力や持っているスキルなどが含まれます。それらに着目したコメントをすると、評価を受けた本人もコメントの内容をより実務に役立てられるでしょう。

感情を過度にいれない

コメントは客観的にも納得できる内容であるように心がけ、あまり主観に偏りすぎないように注意しましょう。必要以上に感情を盛り込んでコメントすると、正当な評価をしているとは言い難いからです。

問題点や改善点があるなら、理論的に記載し、相手に意図が伝わるように意識する必要があります。

批判の評価ばかりにしない

コメントが批判や不満ばかりでは、評価を受け取った従業員は仕事へのモチベーションが下がってしまいかねません。改善点を指摘することは大切ですが、その一方で良くできている点や評価できる行動についてもコメントすると良いでしょう。

批判ばかりコメントされることが続くと、萎縮してしまい仕事のパフォーマンスが低下してしまうだけでなく、人間関係や職場の雰囲気が悪くなってしまう可能性もあります。360度評価で記載するコメントは「より良くするためのフィードバック」です。目的意識を持って評価に取り組むようにしましょう。

伝わりやすさを重視する

コメントは読み手に意図が伝わるように工夫しましょう。どんなに相手を思って書いたコメントでも、伝わらなければ意味がありません。結局何が言いたいのか分からない文章になっていないか、語解を招く言い方をしていないかなど、文章を読み直して確認することが大切です。

文章を伝わりやすくするために、結論から述べること、一文を短めにすることを意識すると良いでしょう。

業種別 360度コメント例・評価ポイント

3つの業種について紹介します。

営業職

営業職は企業の売り上げに直結する仕事をしている分、つい数字や成績についてコメントすることが多いのではないでしょうか。営業だからと数字のことばかりコメントしては、従業員にとっては重圧に感じられるでしょう。

営業職では、「スキルアップのためにセミナーに参加した」や「細やかな報告を行った」など、成果ではなく従業員本人の日頃の行動に対する評価も行うことが大切です。

【営業職】上司から部下へのコメント例

売上目標の達成率は80%だったのに対し、部署内の平均は90%だった。これは他のメンバーより週当たりの訪問件数が少ないことが要因だと思うので、1件当たりにかける時間を減らして訪問数を増やしてみてはどうか。

部署内のムードメーカー的役割を担い、明るく話しやすい雰囲気作りに貢献してくれている。チームをまとめる者としてありがたく思う。

【営業職】部下から上司へのコメント例

自らも営業担当として客先に出向きながら、部署全体のサポートをしてくれるので頼もしい。以前クレーム対応をしていただいたが、フォローをした上で改善策を考えてくれたため、自身の成長を感じた。

その反面、営業として外出している時間が長く、事務的な業務連絡や承認確認ができず滞ることがある。

技術職

技術職は、従業員一人ひとりが持っているスキルや知識を重視しやすい職種です。しかし技術職は流れ作業や安全面に配慮した作業が必要な分、どれだけ効率的かつ安全に業務を進められるかも重要です。

そのため、技術職の評価コメントはスキルだけではなく、「業務改善にどのように貢献したか」「スムーズに仕事を進められるコミュニケーションを取れたか」などにも注目しましょう。

【技術職】上司から部下へのコメント例

より高いレベルを目指して常に励んでいる姿勢が良い。新たな資格取得を目指しているようなので、ぜひ実務に活かしてもらいたい。

危険な作業を行う現場では、現場作業員同士の声掛けや適切な安全確認が重要だが、あまりしっかりと行っているように見受けられない。今後は積極的にコミュニケーションを取り、自身の資格や知識を周囲にも伝えながら、安全意識を高められたらより頼もしい存在になるのではと期待している。

【技術職】部下から上司へのコメント例

相談事や悩み事を伝えやすく、内容によっては改善に取り組んでくれるので働きやすい職場環境だと感じる。実際に業務の効率が上がっているので、頼りになる存在だと思う。

ただ、作業中に話しかけられることが多く、作業に集中できない場合がある。話しかけられること自体は嬉しいので、タイミングを選んでいただけるとより効率的に仕事を進められるように思う。

事務職

事務職は別の部署の業務がスムーズに進むようサポートしたり、会社のお金を管理したり、従業員の個人情報を管理したりと、幅広い分野で活躍する重要な職種です。だからこそ、ミスなく仕事を進めることや、短い時間で多くの仕事をこなすことが求められるでしょう。

そのため事務職に対するコメントは、「大きなミスなく仕事をしたか」「効率化のための提案や取り組みを行ったか」などを踏まえた評価をすると良いでしょう。

【事務職】上司から部下へのコメント例

経理業務でのミスが散見されたため、確認を徹底して再発防止に努めてほしい。大きなミスではなかったが、全体に影響を及ぼす可能性があることも踏まえると、業務マニュアルの見直しや簿記検定資格の取得を検討しても良いのではないか。

ミスを取り返そうと奮闘していた姿勢を見せてくれたため今後に期待できる。業務フローの改善点を指摘されたことで、部署全体の作業効率向上につながったと感じている。

【事務職】部下から上司へのコメント例

細かな確認事項や注意事項が多い事務の仕事に忙殺され、仕事のヌケモレや進捗遅れが起きていた時、上司からタスク管理やスケジュール管理についてアドバイスを受けた。上司自身の管理方法を具体的に教えてくれたため、自身のタスク管理がうまくできるようになったと感じている。

しかし、指示が明確ではなく、理解するまで時間がかかる時がある。具体的な業務内容と期日などを含めて、より分かりやすく伝えてくれたら任せられた仕事をスムーズにスタートできると思う。

役職別 360度コメント例・評価ポイント

役職別のポイントを解説します。

上司から部下へのコメント

上司から部下へコメントする場合は、できるだけ具体的かつ明確に事実を述べ、褒められる点と改善して欲しい点を記載しましょう。立場上どうしても、上司から部下へのコメントは部下がプレッシャーを感じやすくなります。そのため、感情的になりすぎないことと、主観ではなく客観的な視点で納得感のあるコメントをすることが大切です。

たとえば、「業務効率を20%アップさせるという個人目標に向かって、タスク管理ツールを使ったり、他部署との連絡を密に取っていたりと、実際に行動している姿が見られた。しかし、ツールの使い方に手間取ったり、雑談が増えているようなので、業務効率アップという目的を忘れずに工夫を続けていって欲しい」など、事実を添えてコメントすると良いでしょう。

ポイントは、一方的に「これはダメだ」「こうするべきだ」と意見を押し付けないことです。ただただ部下を悪く言っては、改善につながるどころか部下のやる気を削いでしまいます。改善点を伝える場合は、その中でも褒められるところを見つけてあげましょう。

また、改善点を伝えながら、具体的な改善策を提案することで、部下がその課題に取り組むハードルを低くすることができます。

部下から上司へのコメント

部下が上司を評価する機会というのは、日常ではなかなかありません。そのため、部下からの評価は上司にとって、とても価値あるものです。さらに、部下にとっても日頃抱いている気持ちを上司に伝える絶好の機会となるため、部下から上司へのコメントはポイントをしっかり抑えておきましょう。

部下からのコメントは、具体的なエピソードとともに気持ちを伝えましょう。部下の素直な気持ちを伝え、「その時どう感じたか」「なぜそう感じたのか」「どうして欲しいのか」を明確にするとより良いでしょう。

たとえば、「営業成績が伸び悩んでいた時に、営業部のメンバー一人ひとりと面談をして、悩みをヒアリングしてくれ嬉しく思った。ヒアリングした内容をもとにアドバイスしてくれたので、成績が伸びるようになったので驚いた。このように学ぶチャンスがもっと多ければ、より良い成績を出せるのではないかと思う。」などです。

改善点や希望をコメントするなら、「それをすることでどんな効果が期待できるか」も書き添えると良いでしょう。そうすることで上司が具体的なアクションを起こしやすくなります。

同僚へのコメント

役職上の違いがない同僚へのコメントは、上司や部下へのコメントよりも率直かつ客観的な意見を伝えられます。同僚だからこそ気づいている良さや改善点を知るきっかけになるでしょう。

同僚へのコメントのポイントは、正直であることです。しかし、率直な意見を伝えやすい間柄だからこそ、コメントが悪口や批判にならないように注意しましょう。

たとえば、「自分の考えが先行して周囲に相談せずに行動することがあるので、危うさを感じている。大きなミスにつながる可能性もあるので、何かあった時にチーム間でフォローしあえるよう、情報共有を密にしていきたい。ただ、自分の考えをしっかり持っているので、ミーティングの際に積極的に意見や感想を発表しており、頼もしく感じている。」

評価を受ける人がコメントを読んだ時に、自分の糧として役立てようと思えるように、言葉の選び方や伝え方に注意しましょう。具体的にコメントすることで、改善点の洗い出しや改善策を考える際の参考になります。

360度評価コメントの評価軸とコメント例

評価軸は2つです。

意欲評価

仕事への意欲(やる気)があるかどうかは、360度評価の一つの指標になります。仕事への取り組み方や業務態度から、コメントするようにしましょう。

ここで注意するのは、コメントは評価を受ける人を傷つけたり、仕事へ前向きに取り組む気持ちを損なったりしてはいけないということです。しかし、日常業務においてどうしても「やる気がない」と感じられる人への評価はどう表現したら良いのでしょうか。

意欲的ではない従業員に対して「やる気が感じられないので、もっとやる気を出して頑張って欲しい」とコメントしてはモチベーションのさらなる低下を招くでしょう。この場合は、「せっかく資格を持っているのに知識や能力が活かしきれていないのでもったいないと感じる」など、遠回しに伝えると安心です。どこが意欲的ではないと感じる理由なのかを明らかにすることが大切です。

意欲がある従業員へのコメントは、どんなところが意欲的だったのか具体的に示し、より成長するためのアドバイスを伝えると、その従業員の成長がより早くなるでしょう。

行動評価

行動評価とは、アクションを起こしたかどうか、何をするためにどのような行動を取ったのかを基準とする評価です。結果ばかりではなく過程にも目を向けることで、「見てくれている」という意識付けになります。また、より評価される行動を考えるので結果も伴うようになることが期待できます。

たとえば、「売上目標○万円に対して達成率は85%と惜しくも未達だったが、ギリギリまで顧客に電話営業をかけたり、新規開拓に取り組んだりと、諦めなかった姿を評価したい。前半のスタートダッシュが遅い傾向にあるので、初日から1日5件訪問すると数値改善が見込めると思う。」など、結果以外の部分を評価することが大切です。

360度評価でNGなコメント例

360度評価でのコメントにはNGな書き方があります。NGな書き方をしてしまうと、評価の効果を得られず、せっかく割いた時間や労力をムダにしてしまう恐れがあります。

NGな書き方を避けるため、以下の3つの項目に当てはまらないように記載することが大切です。当てはまるようなコメントは360度評価のコメントとしてふさわしくないため、表現を変えるなどする必要があります。

1.主観的ではないか? 

誰もが「確かにそうだ」と言える内容かどうかを意識しましょう。たとえば「頑張っていると思うので継続して欲しい」というコメントは、客観的にはなぜ頑張っていると言えるのかがわかりません。数値や実際のアクションをもとに評価してください。

2.改善点が不明瞭ではないか?

たとえば「意欲的で良いが意思が弱い」というコメントを受け取ったら、なぜそう感じたのか、具体的にどうしたら良いのかがわからず困惑してしまうかもしれません。改善点を伝えるコメントは、何をどのように変えて欲しいかまで記載するように意識する必要があります。

3.今後につなげにくくはないか?

360度評価を行う目的は、良い点をより伸ばし、悪い点を直していくことにあります。そのため、評価を受ける側が変わるためのアクションを取りにくいコメントは避けることをおすすめします。たとえば「いつも頑張っていると思う」とコメントされても、なぜそう感じたのか、何を伸ばすべきかがわからないためです。

360度評価は伝え方が大事!

360度評価でコメントをする際は、立場や職種、評価軸によって注意するポイントがあります。そのどれもが、相手の成長を促すフィードバックを目的としていることを忘れないようにしましょう。

そのためには、言葉の選び方や伝え方、伝える内容を吟味することが大切です。あいまいな表現にするよりも、具体的なアクションや数字を使って記載するほうが評価を受ける側が参考にしやすく改善に取り組みやすいものです。文章のわかりやすさを意識するとより正確に意図や希望が伝わるでしょう。

コメントの例文を参考にしながら、360度評価の効果を最大限引き出せる評価体制を作っていくことが重要です。