コラム

人事関連でお役に立つ情報を掲載しています。ぜひご活用ください。

  1. トップ
  2. コラム
  3. 人事労務・人事戦略
  4. 契約社員の雇い止めとは?解雇以外での退職方法はあるのか

契約社員の雇い止めとは?解雇以外での退職方法はあるのか

契約社員の雇い止めとは?

「非正規雇用社員は、正社員ほど立場が安定せず、解雇されやすいのでは?」という疑問を持つ方もいるでしょう。基本的には、契約期間内での解職は不可なのですが、特例として判断されたケースも存在します。本記事では、その特例や雇い止め、解雇以外での退職方法等について解説していきます。

解雇とは

端的に説明すると、社員の同意を得ることなく、会社(使用者)側からの一方的な通知によって「雇用契約」を終了させることをいいます。

解雇には大きく分けて、「普通解雇」と「懲戒解雇」の2種類があります。「普通解雇」は、社員の成績不良や会社の経営難などを名目として行われる解雇です。一方の「懲戒解雇」は、従業員の『規律違反』を理由として、『規律違反』に対する制裁として行われる解雇を意味します。

契約期間の途中での契約社員の解雇は基本的に不可

正規雇用社員と比較して、非正規雇用社員はいつでもクビにできるわけではなく、基本的に契約期間中にクビにすることは難しいです。よっぽどのやむをえない理由であれば解職可能なのですが、具体的にはどこからが公正な理由になるのか線引きが難しいところです。


契約社員の能力不足を原因とする解雇は不可

非正規雇用社員の正当な解職の原因として、『能力不足』を認められたケースは存在しません。そのため、この社員はあまり思ったような成果を出してくれないからクビにすることは、不当な解雇に当たってしまいます。


コロナ危機を名目とした解職について

昨今の新型コロナウイルスの蔓延による経営難の影響でコストカットのために、契約社員をクビにすることも基本的には認可されていないのです。契約期間のうちは会社の経営が困難であったとしても、それが公正な解職の原因にはならないため注意しておきましょう。


懲戒解雇を行う際の要件は正社員と同じ

基本的には契約社員であっても、懲戒解雇する際には正社員と同じルールで行われます。もちろん、何をしたら懲戒解雇に当たってしまうのかの周知は契約社員にもしておく必要があります。社員が就業上の規則を破った際には、本人からも事情をよく聞いた上で「客観的に合理的な理由」であれば懲戒解職をしても、不当な解職にはならないのです。

⇒契約社員について詳しく知りたい方はこちら

特例で契約社員を雇用期間の途中で解雇が認可されたケース

ここまで述べてきた事例とは別に、雇用期間内であっても解職が正当であると判断されたケースを紹介します。

通常であれば、契約期間の途中で、契約を解約する会社側の意思表示は解雇であり、解雇制限法理がストレートに適用されます。その場合、期間に決まりのない『労働契約の解職』のケースに比べて、より厳格にジャッジされます。


採用時の年齢詐称を原因とする解職

会社の面接時に自身の年齢を偽っており、そのまま契約していた場合、契約期間内であっても途中でクビになるというケースがあります。

年齢によって採用基準を明確に決まっているところでは、年齢基準に達していないことで仕事の効率が下がってしまう場合があります。そのため、企業としては得られるはずだった利益を得られないことになり、クビにしてもとくに問題ないと判断されます。


配転命令の拒否や無断欠勤による解雇

会社からの命令に対して応じず、その上で連絡なしに欠勤していたことが原因で解雇されたケースもあります。


無断欠勤を隠したうえ副業をしていた解雇

このケースでは、会社へ連絡することなく欠勤を続けており、休んでいた時間を使って副業を行っていたため、雇用期間内での解雇となりました。


顧客への暴力等が原因となる解雇

企業にとっての顧客に対して繰り返し暴言を吐き続け、同じく勤めている社員に対しても、拳を振り上げたり、壁を高くなどして、威圧的な態度をとっていたことが判明しました。その契約社員への指導も意味をなさず、改善が見られなかったため、そのまま解雇となったケースがあります。


雇い止めとは

働く期間が決まっている非正規雇用の労働者に対して、期間満了をもって労働契約の更改を拒否することをいいます。昨今では「派遣切り」とも呼ばれ、社会問題となっています。

しかし『雇い止め』は、会社側が好きなように行うことができるわけではありません。


合理的な理由が必要

一例を挙げると、臨時性のある業務で有期労働契約を結んで、契約更改をしない場合です。他には「職務怠慢」や「素行不良」、「能力不足」、「経営不振」などが考えられます。


雇い止めが可能な場合

正式に『雇い止め法理』が認められなければ、『雇い止め』をしても良いとされています。

「会社としては十分な指導をしてきたが、本人に改善の兆候が見られない場合」や「始業時間通りに来ず、改善を促しても本人にその兆候が見られない場合」などが、『雇い止め法理』が認められるケースです。

ただし「契約社員として1年以上雇用し続けている場合」や「3回以上契約を更改している場合」には、『雇い止め』の30日前に伝達することが義務となっているので注意が必要です。


整理解雇とは

『整理解雇』は労働者に責任があるものではなく、会社側の経営困難等の理由により行われるものであって、『整理解雇』の4つの要件によって、厳格に判断されています。

その4つの要件とは「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「解雇する従業員選定の合理性」「従業員への十分な説明」がきちんと行われているかどうかです。


退職勧奨とは

『退職勧奨』とは、会社側が従業員に対して「辞めてほしい」と伝え、退職を促すことです。退職を勧めることから「肩たたき」とも呼ばれています。

『退職勧奨』は、社員の合意の元で初めて認可されるもので、会社側から一方的に契約の解除を告げる『解雇予告』とは異なります。


解雇以外で契約社員を退職させる方法

原則として、契約期間内には『契約社員』をクビにできないため、公正な理由で解職する手段を挙げると3つあります。それらについて解説していきましょう。


正社員と同様に退職勧奨を行うことが可能

非正規雇用者に対しても正社員と同様に『退職勧奨』を行うことが可能であり、両者の合意のもとであれば、契約期間内にかかわらず契約を破棄しても構いません。『退職勧奨』を会社側から切り出す際には、契約社員側が拒否した場合を考えて、「このまま会社に残る難点」と「退職することによる利点」を考えておき提案することで受け入れてもらえる可能性が上がります。

『退職勧奨』を受けずに会社に残ったとしても評価はされず、契約期間が終了すればそのまま雇い止めになるリスクや、退職した場合は通常の給与に上乗せして払われるという内容がよく採用されます。


雇い止めをもって退職

厚生労働省は、更改、そして『雇い止め』にかかわるトラブルを防止するための「期間の定められた労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を公表しています。

それによると、使用者は、有期契約労働者に対して、契約の完了時にその契約の更改をするかどうかを明らかにする必要があります。


契約更改の判断基準を記載しておく

引き続き契約を更改するかどうかの基準を「雇用契約」に記載しておくことが重要となります。その際に数字や具体的な内容で書かれていると、のちに争点となった場合に客観的に判断しやすくなるので覚えておきましょう。


まとめ

ここまで見てきたように、「有期契約」=「雇用の終了が簡単にできる」という考え方は、現在では通用しなくなっています。そこで会社は今後、「何のために契約期間を設けているのか」を改めて確認する必要があるでしょう。

これらのポイントをよく理解した上で、契約社員との雇用を考えていきましょう。