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業務標準化とは?行うべき理由とその進め方を徹底解説!

「従業員一人に仕事が偏っている」「担当者が休むとある仕事がストップしてしまう」という悩みを抱えている会社は少なくありません。

業務標準化は企業の生産性向上や業務の効率化を図る上で有効ですが、そもそもどんな手段なのでしょうか。概要とその重要性、適切な進め方を解説します。

業務標準化とは?

ある仕事について「誰もがいつでも同じ手順で同じような結果を出せる状態」にするように業務改善に取り組むことを指します。業務フローが明確になると、従業員は一定のルールに従って迷うことなく業務を進められるので、時間の無駄がなくなります。

「ある部署や個人に仕事が偏っている」「急な病欠があると困る仕事がある」「担当者ごとに仕事の成果に差が生まれる」といった現状があるなら、業務標準化を図ることで解決できるでしょう。

たとえば、担当者が不在の場合に仕事が進まなくなったり、担当者以外の従業員が仕事をしようとすると手順を調べるための無駄な時間が発生し、標準化ができていないといえます。

一つの仕事を誰でも簡単にできるようにしておけば、部署内の従業員の精神的負担が軽減できるでしょう。部署内で仕事をカバーし合える環境と関係づくりがしやすくなるため、従業員がプライベートと仕事を両立できるようになる点はメリットだといえます。

会社としては、従業員が担当外の業務について調べたり、他の人に聞いたりする時間的コストや人件費の削減が期待できる点がメリットです。また、共有が不足している仕事を担当外の従業員が進める場合には仕事の効率も落ちるため、会社の生産性に大きな影響を与える手段だといえるのが、業務標準化です。

業務標準化を行うべき理由

業務標準化を行うべき理由は3つです。

人事変動への対応のため

会社では従業員一人ひとりがいつまでも同じポジションに居続けるわけではありません。昇進や退職などを理由に人事変動を行う場合が多いでしょう。産前・産後休暇や育児休暇を取得する従業員がいる場合にも、柔軟な人事対応が求められます。こうした流動的な人事にスムーズに対応するためにも、業務標準化が重要です。

ある業務の担当者が不在となっても、誰かが代わりを務められる状態であれば業務はストップせずに進められます。しかし、業務標準化がされておらず担当者しかその業務の詳細が分からない状態だと、詳細を把握するまでに時間を要してしまうでしょう。また、業務フローが明確でないため、人的ミスが発生しやすくなります。

たとえば、担当者が急に病欠した場合について想定してみましょう。急な事態では引き継ぎの時間は持てません。この時、業務標準化が行われていれば他の従業員が正しい手順で正確に業務を進められます。これにより、担当者の「急に休んで申し訳ない」という罪悪感や自責感の軽減も期待でき、部署内で支え合える環境が整うでしょう。

業務品質のばらつきを防ぐ

業務標準化は「誰でもいつでも同じ成果を出せる状態」にするため、同じ仕事に取り組んだ場合の成果がばらつくことを防げます。業務品質を一定に保つことは、企業の信用度や印象にも影響を与えるでしょう。誰でも同じように仕事を進められる状態が、企業にとって理想的なのです。

そのためには、業務のマニュアルを作り込んだり、業務を進める上での注意点を共有しておく必要があります。口頭では伝え漏れや、認識不足が発生しやすくなるので、いつでも見返せる動画や書類にまとめておくことが重要です。

もしも業務標準化がされていない場合、伝達不足によって生じた一つのミスが、会社全体に損失を与えるような大きなミスに繋がりかねません。一見すると、従業員一人ひとりの知識やスキルには差があるため品質のばらつきは仕方がないと思うかもしれませんが、マニュアル作成や業務フローの確立などによって業務品質のばらつきは予防できます。

また、誰でも同じように業務を進められる環境があるということは、新入社員や新しく部署に異動してきた従業員に対する教育においてもメリットがあります。マニュアルなどを渡した上で指導や引き継ぎを行えば、よりはやく業務知識が身につきます。また、不明点があれば、マニュアルをまず確認するようになるのでコミュニケーションコストが削減できるでしょう。

業務の属人化を防ぐ

業務の属人化を防ぐ意味でも業務標準化は重要です。業務の属人化とは「担当者でなければできない業務があり、担当者がいないと仕事が進まない状態」を指します。業務が属人化していると、一部の従業員の業務負荷が高くなり、作業量の多さから仕事の進捗に遅れが生じやすくなります。進捗の遅れは、会社の業務全体に影響を及ぼすため、あまりに遅れている場合は顧客からのクレームが発生する可能性もあります。

また、業務が一部の従業員に偏っていると、必然的にその従業員だけ残業が続きます。「自分がいなければ仕事が回らなくなる」という重圧から、精神的な負担も大きくなるでしょう。この状態は従業員のワークライフバランスが実現しにくいため、離職や休職につながりやすくなります。業務の属人化を防ぎ、優秀な人材を長期的に確保するためにも、業務標準化が大切なのです。

業務の属人化を防ぐことで、従業員一人ひとりが複数の業務に対応する力を身につけられる点も、業務標準化の大きなメリットでしょう。従業員がマルチスキルを習得して個々に成長していけば、会社全体の業績アップや業務効率化が期待できます。

業務標準化の進め方

4つの手順に沿って進めましょう。

業務の現状把握

まずは現状把握に努め、ボトルネックがある業務について現在の業務フローを確認します。現状把握の対象となるのは、属人化している業務や時間が掛かりすぎている業務、作業量が偏っている従業員が抱えている業務などが望ましいでしょう。担当者へのヒアリングなどを行って確認を行い、どの業務がどこでなぜストップするのか確認するのです。

この時、意識したいのは「業務の見える化」です。たとえば、ある見積書の承認を行う場合の業務フローを「部下からの見積書を承認する」と表現するのは不十分かもしれません。詳細を聞いてみると、「部下からの見積書の内容を3日以内に確認して、問題なければ書類へ判子を押すと同時に社内システムで承認処理をする」という細かい業務があらわになる場合もあるでしょう。一つ一つの手順や期限を細かく確認しておけば、正確な現状把握が可能になります。

標準化する業務を決める

業務内容を見える化し、工数や詳細な作業内容、作業手順や発生頻度、業務自体の難しさなどを確認したら、どの業務の標準化に取り組むかを決定します。属人化しているからといっても、その業務が会社全体の利益に与える影響は小さいかもしれません。標準化する必要性があるのか考慮しながら、優先順位をつけることが重要です。また、視点を変えてみると標準化するよりも、外部に委託した方が効率的な業務もあるでしょう。さまざまな観点から標準化する業務を決めましょう。

より会社の成績に直結する業務から取り組めば、取り組みの効果が目に見える形で表れ、担当者のモチベーション維持も期待できます。何よりも会社としての成長が見込まれるので、優先順位づけは重要です。一度に複数の業務について着手しては、思うように進まなかったり不備が出やすくなるので注意しましょう。

マニュアルを作成

誰でも同じ成果を再現できるように、マニュアルを作成します。業務マニュアルと聞くと、業務の手順のみ記載したものをイメージしやすいですが、業務標準化のためにはその業務を行う目的や全体的な業務フローのどこに当たるのかも記載しましょう。目的意識や共通認識を持つことで、認識のズレがなくなり業務品質を一定に保つことが可能になります。

マニュアル作成にあたって大切なのは、分かりやすさです。誰でもいつでも同じように作業するためには、マニュアルを見た人によって解釈が変わってはいけません。テキストでの説明だけでなく、動画や画像も活用して全員が同じように理解できるマニュアルを目指しましょう。

テキストのみで理解しにくいマニュアルは、閲覧のハードルが高く「ただあるだけ」となりやすいものです。見やすく分かりやすいマニュアルは、実務でも活用しやすく、人に聞くといった時間も短縮できます。

また、マニュアル作成は紙に印刷するのではなくデジタルデータで作成、保存をしておくことをおすすめします。なぜなら、マニュアルは随時更新されるものであり、画像を含めて丁寧に業務手順を記載すると量が多くなるからです。更新の都度印刷すると手間がかかり、最新版がどれか判別しにくくなるので注意しましょう。

スマートフォンやタブレットでマニュアルをいつでも確認できる状態であれば、誰でも一定の品質で業務を進められるのでより望ましいといえます。ただし、はじめから完璧に整えるのは時間も根気も必要になるので、少しずつ段階的に進めると良いでしょう。余裕があれば予測されるトラブルと、トラブル発生時の対応マニュアルも作成しておくと安心です。

定期的な見直し

マニュアルを作成してからも業務標準化は続きます。マニュアルを運用して実務を開始して初めて、見逃していた課題点や改善点に気づく場合があるので、定期的な見直しは欠かせません。「マニュアルに従えば間違いない」という油断が、思わぬトラブルを招く恐れがあると知っておきましょう。

見直しを行う際は、実際に標準化した業務に携わっている従業員にアンケートを取ったり、直接意見を聞く機会を設けると良いでしょう。常に改善と更新を行うことで、より効果的に業務標準化が実現できます。

突然の人事変動でも、業務標準化で柔軟に対応を

業務標準化は、社内の業務効率化が期待でき、会社の成長につながります。誰でもスムーズに同じような成果を生み出せるようになることで、従業員がお互いの担当業務をカバーし合えるようになり、従業員一人ひとりの作業負担が軽減されます。これにより、優秀な人材の流出防止にも役立つでしょう。また、いつでも誰でも再現できる業務フローを確立しておけば、突然の人事変動にも柔軟に対応できるようになります。

業務標準化を進める際は、すべての業務に対して一度に取り組むのではなく、優先度の高い仕事やより会社としての成果につながる仕事から取り組むことをおすすめします。適切な業務フローやマニュアルを作成して、業務の標準化を目指しましょう。