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扶養手当とは?相場や支給条件、家族手当との違いについて解説

会社に勤めていると、状況に応じて手当を支給してくれるケースもあります。これは会社独自で設けられている福利厚生によるものであり、月々の給料とはまた異なります。この福利厚生の内容は、職を変えるときに必ずチェックすべき項目といえるほど重要です。

福利厚生のなかには、子どもや配偶者などを養っている場合に支給される「扶養手当」があります。この手当は会社のなかでも多く取り入れられていますが、条件や支給額はそれぞれ違いがあるのです。また、他に類似している種類もあるため、よく仕組みを理解していない方もいると思います。この記事では、実際の相場や条件、類似した手当の違いなどについてご紹介します。

扶養手当とは

会社がスタッフの福利厚生として行う制度の1つを「扶養手当」といいます。この制度では、スタッフに養っている家族がいるときに、本来の給料とは異なる形で手当が支給されます。基本的に所帯主の子どもや配偶者などがいるときに当てはまることが多いでしょう。国内では、お金に関して家族の事情を考慮した制度があり、その他にも養っている人数によって税金や保険にかかる料金が少なくなることもあります。

この手当は法令によって決められているのではなく、会社が福利厚生の1つとして行っているものです。そのため、会社によってその内容や条件が変化する場合もあるでしょう。最近では既存の制度をあらためて変更したり、取り止めを行ったりする会社が増加傾向にありますが、依然として多くの場所で用いられています。経済負担の軽減につながるこの制度は、質の高い人材を獲得するための役割も担っています。

扶養手当の相場

基本的に、スタッフが持っている家族一人ひとりに手当が支払われるものです。法令による制度ではないので詳細な金額を調べることが困難ですが、一般的には手当は以下の額を目安にしておきましょう。

  • 配偶者:10,000〜15,000円/月
  • 子ども:3,000〜5,000円/月

令和2年の段階での調査では、扶養を含めた手当の支給額は各スタッフに17,600円といわれていますが、会社によってその差はある点には注意しましょう。会社の規模によっては、10,000円以上の差がある可能性もあります。

また子どもの数によって金額が変動することも。企業によっては2人目、3人目の子どもでは支給される金額が低下する傾向にあるようです。手当を実施する場合は、どんな条件・金額にするのかを設定しつつ、ムリのない範囲で進めていくことが大切です。

扶養手当の支給条件

手当は会社ごとに行われるものなので、支給の条件に関してもそれぞれ違いがあります。どの会社も同じなのは「養っている家族がいるスタッフ」がターゲットなので、条件についてもそれに関係したものとなるでしょう。どの条件で「養っている」と判断するのかについては、社会保険の内容を確認して結論づける場合が多いといえます。

また、自分1人だけでは生計を立てるのが困難な家族をサポートする制度であるため、自身だけで生活ができるほどの経済状況がある方に対しては条件として認められません。基本的に、手当は「年収130万円に満たない者」という条件があるので、それ以上の稼ぎがある方も対象ではなくなります。その他にも、会社によっては以下のような条件もあります。

  • 所得税の課税の対象である103万円の稼ぎがある場合は対象外であるケース
  • 同じ住居でなくても対象者として該当するケース

これらは法令による縛りがないため、会社の都合によって決めることが可能です。

扶養手当を導入するメリット、デメリット

この手当を取り入れる利点、注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。ここではそれぞれのポイントについてご紹介します。

メリット

取り入れる利点として、以下の2点があげられます。

  • スタッフの仕事に対する意欲の増加
  • 会社に対して好印象を与える効果

基本的に養っている家族がいれば享受できる手当なので、独身者と比較すると単純に給与額の増加ともいえるでしょう。

現在では少子高齢化社会による影響で、人材の数は徐々に減少傾向となっています。その状況で質の高いスタッフを獲得したり、規定人数の求職者を確保したりするには、会社に就職する利点を全面的にアピールする必要があるでしょう。

その1つのエッセンスとなるのが、今回の手当ともいえます。ある程度の支給額によって会社で働く利点がスタッフに伝われば、手当のない場所との差別化を図ることが可能で、より多くの人材を確保できるでしょう。

デメリット

利点だけではなく、いくつかの注意すべきポイントも存在します。おもに養うべき家族がいないスタッフ、あるいは条件があわずに制度の恩恵を受けられなかったスタッフによる不満が募りやすい点です。

どうしても社内で福利厚生を受けられる方、受けられない方が存在してしまうので、公平ではないと感じるスタッフもいるでしょう。そのため社内の雰囲気が悪くなったり、仕事に対しての意欲が低くなったりなど、最悪の場合は離職につながるケースもあるのです。

また、手当による注意点はスタッフ同士の問題だけではありません。条件を細かく審査せずスタッフによる申告が中心である場合は、不正で手当を受ける問題につながることもあります。

この問題が公になったら、余計に社内の雰囲気はもちろん、会社に対しての信頼性も低下してしまう恐れがあるでしょう。これらの課題を解決するためには、不正で手当を受けられないように細かく審査したり、適宜条件を確認したりなどの措置を取る必要があります。

このように、手当はスタッフによって経済的な負担を軽減できる大きな利点があります。その一方で、支給の有無によって社内の雰囲気が悪くなったり、不正に活用されていたりする恐れがある点にも注意しましょう。

扶養手当と家族手当の違い

類似する福利厚生に「家族手当」があります。ここではそれぞれの特徴や違いについてみていきましょう。

家族手当とは

家族手当とは、その名前の通り家庭を持つスタッフへの手当のことです。これは法令による制度ではなく、会社ごとの独自の福利厚生の1つであり、金額や条件などは決められておらず、それぞれ異なります。会社によっては福利厚生として、この手当を導入していない場所もありますが、両方を取り入れているところもあります。

それぞれの違いとしては「養っている人の有無に関係があるか」です。家族手当は養っている人がいるかに関係なく、家庭を持っている一人ひとりにあわせて支給されます。一方で扶養手当の基本的な条件は「養っている人がいるか」です。そのため、配偶者が条件から外れた収入額を得ていたら、対象から外れます。この基準も会社によって変わるので、支給の条件を確認してみましょう。

これらの手当は給料として発生するのかについては、明確な取り決めはありません。福利厚生の1つとして考えると、給料としての支給という扱いではなくなるでしょう。しかし、就業規則や契約であらかじめ条件をはじめとした詳細がはっきりと決められていたら、労働の見返りとしての支給である可能性もあります。

家族手当の現状

この手当は現在、どのくらいの割合で導入されているのでしょうか。ここでは、家族手当の実際についてみていきましょう。

家族手当の導入率

公的機関の調査によると、約76%の企業がこの手当を取り入れているとされています。さらに会社の規模によって大きな偏りがあるわけではなく、小規模から大規模なところも変わらないという結果でした。そのため、規模に関係なく多くの企業はこの手当を取り入れていることがわかります。

また、手当を取り入れている90%以上の企業は、配偶者にも支給をしていますが、得られている収入によって制限を設けていることも多いです。今後仕事をする予定があったり、収入の制限を超えてしまったりする場合は、その点をよく考えたうえで働くことが大切です。

家族手当の相場

支給される金額についても気になるのではないでしょうか。会社によっても異なりますが、大まかな相場は以下の通りです。

  • 配偶者:10,000〜15,000円/月
  • 子ども:3,000〜5,000円/月

受け取る際は上記の金額を目安にしておきましょう。法令によって決められているものではないため、社会の変化によって相場が変動することもあるでしょう。今後、手当が大きく減額あるいは増額する可能性も十分にあります。手当の額を決める際は、自社の状況だけでなく社会全体の流れも汲んだうえで設定することも大切です。

また、こちらも同様に不正受給を引き起こす問題もあります。基本的にスタッフからの申告内容に見合った額を支給することがほとんどであり、厳密な審査をする企業は少ないといえるでしょう。そのため、導入の際は明確に決まりごとを設けて運用する必要があります。決めておきたい内容としては、以下の通りです。

  • 手当の内容
  • 支給する条件
  • 申告の手順
  • 対象から除れる場合に伝える義務
  • 規定以上の支給があった際は返金が可能であること
  • 不正に支給していた際の処分について

このように、支給額や条件だけでなく、その後の不正や誤りに関する処置についても詳細に決めておきましょう。最近ではマイナンバーでの取り扱いが増えてきたため、配偶者の収入についても確認がしやすくなっています。こちらから確認ができる範囲を広げられると、不正が行われる頻度もゼロに近づくでしょう。

家族手当を廃止、見直す企業が増えている

現在では家族手当の導入をやめて、あらためて福利厚生について見直している企業も多くなっています。実際に手当の支給をしている企業の割合は徐々に少なくなっているとされています。そのなかでも配偶者への支給は減額、あるいはなしとなる傾向になっているのです。

この背景としては、男性が中心に仕事をするのではなく、配偶者とともに働くことになった時代になったことが考えられます。時代の流れとともに昔までの生活とは異なり、さまざまな働き方が増えていったため、手当の意味が少なくなっているのが現状です。家庭を持っていない独身の方の割合も増加傾向にあるので、不平等を感じる人が増える問題も増えてきています。

配偶者における支給額を減少する理由には、控除の改正が行われたこともあります。配偶者の控除では、一定額の主婦に対しての所得税を少なくするものです。その限度額によって仕事の量を減らす方も増えていましたが、その控除額が増えたのです。それによって手当の条件である一定額を超える方が増えることによって、支給の割合自体が少なくなってきたという背景もあります。今後も時代が進むにつれて、この傾向は徐々に広がっていくでしょう。

扶養手当の支給条件を確認しましょう

扶養手当は福利厚生によって得られる手当のなかでも、多くの会社で導入されている制度でもあります。しかし、法令で決められている制度ではなく、会社によって条件や支給額が異なる点には注意しましょう。この手当に類似している制度には「家族手当」があります。それぞれ同じように感じる制度ですが、厳密には内容が異なるため、同時に取得できる会社もあります。

ただし、社会の流れにともない手当の内容を見直したり、取りやめたりする会社もあるため、今後はその動向についてよくチェックしておく必要があるでしょう。福利厚生による手当を検討している企業がある場合、今の社会の流れについてもよく確認しておくことが大切です。