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評価者研修の目的は?研修で学べる内容もあわせて徹底解説

近年、正しい評価を行うために査定する側の研修や基準確認が積極的に実施されています。背景には年功序列制度の廃止加速化による、評価制度の見直しが挙げられます。では具体的に評価時に起きやすい問題は何でしょうか。評価者研修で学べる内容を含めて解説していきます。

評価者研修とは?

評価者研修とは評価側社員の評価知識を深めたり、OJTで評価スキルを高めたりする制度です。一般的に「研修」と言えば、新入社員や転職者などの、在籍歴が浅い社員に対して行われるでしょう。

しかし、本制度は勤続年数関係なく、評価者に該当する社員が対象となります。社員の仕事に対する価値観が以前よりも変化しているため、数多くの企業で評価者研修が導入され始めているのです。

評価者研修の導入状況

研修の導入状況は約7割を超えています。(2016年産労総合研究所による調査)日本における大半の企業が、評価者に対して研修制度を実施していると分かるでしょう。

現在は売り手市場により、優秀な社員の確保が困難な状況です。在籍社員への育成やモチベーション向上が重要になるため、評価者研修への注目が集まっています。そのため、今後も評価研修の導入件数は増えていくでしょう。

評価者研修の目的

評価者研修最大の目的は評価の平等性を保つためにあります。査定は評価者の力量や考え方に左右される部分が大きいです。例えば、上司の部下に対する好き嫌いで評価にバラつきが出るケースも多くなります。結果を残しても上司の好みでなければ出世できないのです。そんな状況を限りなくゼロに近づけるため、評価者の基準を一定にするための研修が行われます。

また、評価者研修は企業文化を醸成させる効果もあるのが事実です。一般的に指導方針は評価者の思いが優先されます。となると、企業ビジョンに沿わない人材が育ってしまうのは否めません。方向性にバラつきが生じ、希望の人材が育つ可能性は低いでしょう。

そのため、研修で評価者の育成方針を明確にすれば、企業が描いた社員へ育てられます。以上のように、評価者研修は評価の平等性と指導方針の明確化が大きな目的です。

評価者研修の対象者

評価者研修の対象者を解説します。

人材業界、人事担当者

まず最初に押さえておきたい対象者は人材業界・人事担当者です。評価者研修を受ければ評価で大事にすべきポイントや設定すべき項目などが分かります。

年功序列制度が崩れている日本の中で、徐々に評価が能力主義へとシフトされているのも事実。評価すべき項目が在籍年数や年齢などから「どれだけ業績を上げたか?」「どのくらいスキルを伸ばしたか?」といった成果や力量へと変わっているのです。

となれば評価項目が複雑になるのは言うまでもありません。一般的に人事評価は人事担当者が作成するか、もしくは人材業界の企業が開発した評価システムを使うかに絞られます。

このような流れから人材業界と人事担当者は評価研修を受けるべきなのです。人事評価の知識がなければ品質の高いものは出来上がりません。評価に対する学びを深めてこそ、人材育成につながります。

経営者

とくに大きな会社であれば人事評価は人事担当者へ一任している場合も多いでしょう。人事における業務全般を委任し、経営者自身は業績を追う仕事に専念する場合もあります。

とはいえ経営者が人事評価評価業務を放任するのは得策ではありません。なぜなら、人事評価は会社の業績に大きく関わる業務だからです。

例えば人事評価の抜本改革に乗り出せば、社員の成長へとつながって売上アップが期待できるでしょう。質の高い評価ができると、優秀な人材の流出も防げるはず。古くから「人は財産」と言われる通り、お金をうみ出すのは人材なのです。

そのためにも、経営者自ら評価研修を受ける必要があります。学んだ知識をいかして評価制度の見直しを図ったり、評価システムのビジョンをより明確にしたり。今までの評価制度よりもレベルアップが期待できます。

被評価者

一般的には評価研修対象者は人事担当者と経営者です。

実際に様々な企業を見渡しても、被評価者は研修をほぼ受けていません。とはいえ、被評価者も評価制度研修を受けられます。被評価者が評価者研修を受ければ、評価に対するギャップを埋められるメリットがあるのです。

例えば「どんな行動が評価に結び付くか?」「評価はどれくらいの項目に分けられているか?」などを知っておけば、自分自身がどんな行動を取っていけば良いか明確になります。実際に取った行動が評価へ結び付けば、昇給や昇格のチャンスとなるでしょう。

結果的に仕事へのモチベーションが上がっていくのです。評価者にとっては被評価者から不満が出る心配も少なくなるため、お互いにとってメリットがあります。

被評価者も評価者研修の受講を検討してみましょう。

人事評価で起きやすい問題とは

人事評価で起きやすい問題は次のとおりです。

無難で甘い評価をしがち

人事評価は無難で甘い評価をしがちです。嫌われ役を買って出る人は現代において少ないでしょう。誰しも波風立てずに業務へ取り組みたいと思うはずです。

例えば、5段階評価で1と5を中心に査定すれば、社内で不満が出てしまうかもしれません。指示通りに業務をこなしているにも関わらず、1と評価されれば納得できない社員も出てきます。

そのため、評価者は3~5の間で甘い評価をつけ、社員から嫌われないよう査定しているのです。とくに社員へ意見が言えない評価者に該当するケースが多く、すべてにおいて緩い空気が流れてしまう原因にもなります。当たり障りのない評価は社員からの反発を防げるかもしれませんが、チーム力の低下は否めません。

評価手順が逆になってしまう

評価手順が正しい順序とは逆になるケースもあります。本来であれば、評価項目を基準に査定。その後、社内で検討し昇格や昇給を決めるのが正しい流れです。

しかし、人事評価の現場では先に出世する社員を決め、評価は後付けしているケースもあります。評価項目通りでいくと出世できないのにも関わらず、評価者の独断と偏見で昇格や昇給を決めてしまっているのです。

当然「業績が伴っていないのになぜ出世できるのか」「正しい評価項目通りにいけば昇格できないのでは」などの不満がうまれます。このように、適正な順序で評価が行われないケースが頻繁に見受けられるため、評価者研修での正しい指導が必要になります。

ハロー効果

ハロー効果によって評価が歪んでしまうケースもあります。ハロー効果は人の良い面や口コミによってポジティブなイメージが膨らみすぎたばかりに、他の部分が見られなくなる現象です。

例えば「社内評判が良いから仕事でも結果を出せるだろう」「挨拶が出来るから営業成績も良いはず」などの良いイメージが先行しすぎて正当に査定されないケースが多々見受けられます。印象と実際の成績は異なるため、他の社員にとっては疑問が生じてしまうでしょう。

また、社内の評判によって評価がゆがんでしまう危険性もあります。部内の評判が良ければ、仕事の能力を度外視してポジティブな思いを巡らせます。結果、本来の評価とは異なったイメージだけの査定になるのです。

とくに強く印象に残ってしまうと、なかなか印象を覆すことは出来ません。評価者研修では、そんな状況でも冷静に判断できる力も養われるのです。

思い込みによる評価

評価者の被評価者に対する思い込みは人事評価で起きやすい問題でもあります。思い込みによって正当な判断ができず、評価を本来よりも上げてしまうのです。

例えば「優秀な学校を卒業しているから仕事もできる」「資格を多数保有しているから成績を残してくれるだろう」など、勝手な先入観によって評価が歪んでしまいます。また思い込みは評価に悪影響を与えるだけでなく、部下の成長を阻む原因でもあります。「口数が多くないから営業から経理へ異動させよう」と、可能性を妨げてしまうのです。口数が多くなくても聞く力に長けていれば、成長できるチャンスもあったでしょう。

以上のように、上司の思い込みにより、部下への正当な評価や育成ができないケースもあります。

自分と比較して評価しがち

人事の現場では評価者自身と被評価者を比較して査定する場合も多いです。上司と似た人が高く評価され、特徴が違う社員は低く評価されやすいのも本ケースに該当します。

例えば、営業部門において、上司自身がアポイント取りに長けている一方、数字をもとにした調査が苦手だとします。評価に関してはコミュニケーション力項目のハードルは高く、分析については低く設定されるのです。

そのため、上司と似た部下が圧倒的に評価されやすいと言えます。データ分析を行い現状を多角的に見ても、評価にはつながりにくいです。評価の軸が自分自身になってしまい、冷静な判断を下せていない状況になります。当ケースを防ぐためにも、評価者研修によって正しい査定方法を学んでいくのです。

評価期末の印象による誤差

評価期末の印象だけで判断するケースも多いです。

例えば、査定直前の成績だけ社内で一番良かったり、反対に全体的に好成績だったものの最後だけ落ち込んだり。断片的に切り取って評価してしまうのです。当然、評価は対象期間トータルで考える必要があります。社員間に不満が生じ、仕事へのモチベーションを下げる原因となります。

また「最後だけ頑張ればいいかな」「期末で結果を残すために調整しよう」などと考える社員もいるでしょう。結果、仕事の生産性が落ち、会社全体の売上も順調に伸びないかもしれません。そのため、評価者研修にて、期末だけの印象に捉われない広い視点で査定する教育が行われます。

評価者研修で学べること

評価者研修で学べることは次のとおりです。

適切な目標設定

評価者研修では適切な目標設定が学べます。目標設定は社員のモチベーションを大きく左右します。設定が高すぎれば挫折する可能性を高め、容易に達成可能な目標は社員の成長につながりません。

そのため、評価者研修では一人一人に合った目標の立て方を学んでいきます。能力・性格・経験年数などによって、臨機応変に目標を設定する大切さを学習していくのです。

近年、部署や役職等の大きな枠組みで目標設定する企業が多く、達成の難易度から不満を生むケースが続出しています。社員が気持ちよく働くためにも、適切な目標設定は重要です。

目標達成のための支援

評価研修には目標達成のための支援も含まれています。目標設定だけでなく、具体的なアプローチ方法もサポートしていきます。「どのような行動を取れば達成できるか」「達成するためにはどんな意識を持てばいいか」などの道しるべを行っていくのです。

行動パターンが明確になれば、目標達成できる確率が高まります。目標達成が実現すると昇格や昇給が実現するため、さらに社員のモチベーションは上がっていきます。

結果、業務効率が上がり、売上向上が見込めるのです。目標達成を支援することは社員のためだけではなく、会社全体の成長につながります。

評価力の向上・公平な評価

評価者研修では公平に査定するための基準が学べます。前述のとおり、評価現場では評価者の思い込みや感情によって査定がぶれるケースも多々見受けられます。結果を出しているにも関わらず、評価者の主観によって評価が上がらない社員もいるでしょう。

最悪の場合、優秀な社員が離職してしまう事態にもなりかねません。そのため、客観的に評価するための基準や査定方法を学んでいくのです。中でも、業績・能力・情意評価による査定の重要性について学習していきます。社員が持ち合わせているスキルだけでなく、やる気や潜在能力も評価対象です。従来の評価形式よりも多角的に査定していきます。

以上のように、評価の不公平感がうまれないよう、研修で明確な基準の説明がなされます。

面談のスキルアップ

評価者研修は面談のスキルアップも含まれます。面談は査定を目的とするだけでなく、社員の成長を促す場です。現在疑問に感じている点や悩みを早い段階で解消できれば、気持ちをあらたに業務へ取り組めます。結果、成長スピードが早く、活躍できる人材へと育つでしょう。

とはいえ、面談で社員の成長を促すには評価者のスキルが必要になります。「社員が本当に困っている点は何か」「どうやったら問題点を解決できるのか」を瞬時に読み取るスキルが重要です。

そのため、評価者研修ではロールプレイングや心理学習を行い、面談で求められる総合的な能力を高めていきます。評価者のスキルが高まれば、日常のコミュニケーションも円滑に取れるでしょう。社内の風通しが良くなり、社員全体のモチベーションが上がります。

評価者が公平な評価を行うためのポイント

公平な評価を行うためのポイントを解説します。

評価軸と基準の明確化

評価者が公平な評価を行うためには、評価軸と基準の明確化を行っていきましょう。

評価軸とは一般的に業績・能力・意欲によって分けられます。この3つの要素を評価の柱に据えていくのです。3要素を明確化しておけば、より公平かつ公正な評価が完成します。

反対に3つの要素のバランスが悪いと「やる気があるだけで評価されている」「偶然大きい売上が取れただけで本当は能力がない」などと不平不満がうまれてしまいます。

次に行うのは基準の明確化です。柱に据えた3要素を基準化していきます。例えば「月に100万円上がったらA評価」「社内プレゼン大会に2回参加したらS評価」など、業績・能力・意欲をバランス良く明確化していきましょう。基準化する際は数字を有効に使うと説得力が増します。

ワークを実施する

評価者研修を実施する際は座学だけではなくワークも行っていきましょう。頭で見て聞いて学習するよりも、実際に作業を進めると覚えが早いです。

具体的にはケーススタディによるグループディスカッションや評価面談のロールプレイングが導入されています。

例えば評価面談のロールプレイングでは事前に評価者(Aさん)と被評価者(Bさん)の両者へ評価基準を伝えておきます。Bさんがあるプロジェクトの結果をもとに自己採点。そしてAさんがBさんを評価して面談する流れです。

この面談では「評価者と被評価者の評価が大きくブレていないか?」「両者が面談でコミュニケーションが取れているか」に着目しています。両者の評価が大きくブレていれば、評価制度を見直す必要があるのです。

このように座学だけでなく、実践を通じた研修も重要となります。

評価者に求められる指針を共有する

評価者に対しては指針を共有しておきましょう。評価は被評価者の人生を左右すると言っても過言ではありません。1回の評価で昇格が実現して人生が豊かになる人もいれば、能力が正しく評価されずに数十年給与が上がらないで苦しむ人もいます。

そんな大きな決断をする評価者にとっては評価に対する心構えが必要です。具体的には「週1回評価者面談を行い評価基準をリマインドする」「社員との関わりにおいて重要なポイントを共有する」などの対策が不可欠。

また、評価基準を定期的に見直し、修正をかける企業もあるでしょう。そのような企業ほど指針を共有していく必要があります。

被評価者が納得し、モチベーション高く業務へ取り組める制度を構築していきましょう。

評価者研修を人事評価に活用するポイント

研修を人事評価に活用するポイントを解説します。

適切な評価基準の設定

評価者研修の効果を上げるためにも、適切な評価基準を設定していきましょう。

例えば、前述した評価面談のロールプレイングでは評価者と被評価者の両者による疑似評価を行っていきます。被評価者が認識している自己評価と評価者による査定に大きなズレがうまれれば、評価基準を見直す必要があるでしょう。「細かく職種別に評価を分ける」「評価軸のバランスを保つ」などの改善が必要です。

評価基準が公正になれば、評価者研修の質も上がっていきます。結果的に評価者研修を実施する意味合いも大きくなってくるのです。このように、評価基準を設定する際は現場の声を大切にする必要があります。

能力開発、人材育成

効果的な能力開発や人材育成を行うためには「どのように人材を育てていくか?」「どのスキルを優先的に伸ばしていくか?」などの戦略が必要です。

方向性を明確化しておけば、より優秀な人材の育成が可能となります。そのためにも、評価研修で行うロールプレイングやケーススタディでイロハを学び、人材育成へつなげていくのがポイントです。

社員のスキルがアップするだけでなく、面談の質も上がっていきます。結果的に面談の効果が高まれば、社員の成長へとつながるのです。このように、評価者研修と人材育成双方向で良い循環がうまれます。

組織活性化による業績向上

研修を実施し評価に反映させていけば、組織の活性化につながります。活性化が実現すると「目標達成のために頑張ろう」「同期には負けていられない」となり、モチベーションが上がっていくのです。

結果的に会社全体の新陳代謝がうまれ業績アップにつながります。また、評価研修を受けた管理職は質の高い評価基準を設定するため、斬新なアイディアをうみ出す効果もあります。このように組織活性化による業績向上を図るためにも、人事評価や実績を反映させる仕組みづくりが重要です。

評価者研修が会社全体の成長につながる

評価者研修は社員を公平・公正に査定するために行われる、評価者に設けられる学習機会です。評価の現場では評価者の個人的な感情や思い込みによって評価がぶれるケースがあります。

そんな事態を招かないためにも、評価者に対して公平な評価基準をあらためて説明していきます。当研修は評価者の育成を目的としていますが、最終的には会社全体の成長につながります。この機会に評価者研修の導入を検討していきましょう。