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ISO9001(品質マネジメントシステム)とは?導入のメリットや手順を解説

ISO9001とは?

そもそもISOとは?

ISO(国際標準化機構)は、国際的な標準化を推進する非営利法人であり、世界中の組織や産業における標準化を促進する役割を果たします。ISOにより、さまざまな分野にわたる国際規格を策定したものをISO規格と呼びます。

ISO規格を遵守することによって、製品やサービス、プロセスの品質向上、効率化、安全性の確保などが図られます。

ISOには、標識やカード、ネジなどのサイズやデザインを定めた「モノ規格」と、組織管理の規定や手順を定めた「マネジメントシステム規格」がありますISO9001(品質)やISO27001(情報セキュリティ)などがマネジメントシステム規格に当たります。

ISO規格を取得することで、国際基準に基づいて組織を管理・運営している証明となります。他企業との競争力強化のためにも、ISOを認証取得するメリットは大きいと言えます。

ISO9001の概要

ISO9001の概要について紹介します。

ISO9001の規格要求事項

一言で言えば、「適切な作業手順やマニュアルを設定すること」となります。重要なのは、「適切な」という部分です。と申しますのも、業種や企業規模、提供するサービスによって最適な作業手順やマニュアルは異なります。そのため、各企業が自社に最適な形を模索することが必要になるのです(これが、ISO導入コンサルが巷に数多存在する理由のひとつです。)。

品質マネジメント7原則

品質マネジメント7原則は、ISO9001の土台となるガイドラインを指します。項目ごとの内容とともに、品質マネジメント7原則を紹介します。

  1. 顧客重視:顧客のニーズや求められるものを把握して、満足度向上を目指すこと
  2. リーダーシップ:リーダーは組織の方針を明確にして、取引先や従業員に伝達すること
  3. 人々の積極的参加:全従業員が組織の目標達成に向けて積極的に参加すること
  4. プロセスアプローチ:業務プロセスを明確にして、効果的にシステムに反映すること
  5. 改善:継続的に改善を繰り返し、問題解決や品質向上を目指すこと
  6. 客観的事実に基づく意思決定:過去の記録や実績などの事実に基づいて意思決定を下すこと
  7. 関係性管理:顧客や取引先などの関係者と密接な関わりを構築・維持すること

品質マネジメント7原則は、組織改善を目指す企業においてISOが推奨している規律です。ISO9001を取得し、効率的に顧客満足度の向上や、組織パフォーマンス向上につなげるためにも、品質マネジメント7原則の遵守は必要不可欠となります。

他のISO規格との違い

他のISO規格と異なる点について紹介します。それぞれの特徴や取得する利点を把握しておきましょう。

 ISO14001:環境マネジメントシステム

ISO14001は、環境マネジメントシステムに関する国際規格で、組織が環境への影響を評価し、環境リスクを最小限に抑えるための仕組みやルールを提供します。

ISO9001は品質マネジメントに焦点を当てる規格ですが、ISO14001は環境への責任や持続性に焦点がある違いがあります。

ISO14001の導入により、組織は環境リスクを減少させ、法的要件や規制に適合でき、環境への貢献、社会的な責任を果たせます。ISO9001と同様に、ISO14001も国際的に認められた認証を取得でき、組織の信頼性と競争力を向上につながります。

環境保護の意識変革が重要視される現代社会において、ISO14001の導入は組織に環境保全への取り組みをアピールするためにも取得する企業が増えています。環境への配慮と持続可能性の向上が実現し、企業の世間的評判の上昇に役立ちます。

 ISO27001:情報セキュリティマネジメントシステム

ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格です。ISO9001との違いとして、焦点が情報セキュリティに置かれている点が挙げられます。

ISO27001の導入により、組織は情報セキュリティに関連するリスクを評価し、適切な仕組みや手順作りを講じられます。情報漏洩やサイバー攻撃などからネットワーク情報を保護し、機密性、可用性、完全性の確保を目的としています。

情報資産の保護を目的とするISO27001は、情報サービス業や金融業などが主な取得業種となります。

情報セキュリティに関する対応が重要となる現代のデジタル環境では、SO27001の導入は有効な手段となります。

ISO45001:労働安全衛生マネジメントシステム

ISO45001は、労働安全衛生マネジメントに関する国際規格です。ISO45001は、組織が労働者の安全と健康を保護し、労働環境の安全性の向上を促進させます。ISO9001との主な違いは、焦点が労働安全衛生にある点です。

ISO45001の導入により、組織は労働者へのリスクを評価し、労働安全衛生に関する法的要件や規制に適合するための対策を講じられます。労働災害の防止、職場の安全な運営、従業員の健康保護などが主な指標です。

ISO45001認証の取得により、組織は従業員の安全と健康への取り組みを示し、企業の信頼性を高められる効果が生まれます。ISO45001の導入は、組織が労働環境を改善し、労働者の安全性を確保する重要な手段です。

ISO9001を導入するメリット

ISO9001を導入するメリット3つを詳しく紹介します。

生産性が高まる

質マネジメントシステムの導入で、作業手順やプロセスが明確になることで、無駄な時間やリソース浪費を減少させ、企業の利益率アップやコスト削減につながります。

品質マネジメントの基準を遵守し、効果的な業務プロセスを確立することで、組織は効率的に成長し、顧客満足度を高めやすくなります。

品質が向上する

製品やサービスの品質向上や維持できる点も、ISO9001導入による組織のメリットです。ISO9001導入により、作業手順やルールが明確化されるため、従業員の入れ替わりがあっても、一定の品質を保ちやすくなります。

毎年の審査による継続的な品質向上で顧客満足度のアップや取引先の拡充などが見込めるのも利点です。作業内容が明確化されるため、経験が浅い従業員でも迷わずに業務に取り組めるようになり、個人の意欲促進やスキルアップを促す効果も生まれるでしょう。

品質の維持・向上により顧客からの信頼を築き、市場での地位を確立するために、ISO9001の導入は非常に重要です。

業務の効率化につながる

ISO9001の導入により、組織内の業務プロセスの効率化につなげられます。ISO9001は組織の仕組みやルールを再構築し、効率性を向上させるための指針を提供します。適切な手順や作業手順の確立により、課題解決や業務効率化、教育コスト削減などの効果の実現が期待できます。

業務の効率化は、組織のノウハウや人員を最適に活用し、競争力を維持するために不可欠な要素です。ISO9001の導入は、業務プロセスの改善と効率化が実現され、組織の長期的な成功につながる重要な取り組みとなります。

ISO9001を導入するデメリット

ISO9001を導入するデメリットを2つ紹介します。メリットとのバランスを考え、企業にとって取得する重要性があるのか検討しておきましょう。

コストや手間がかかる

ISO9001の導入には多くの利点がありますが、一方でコストや手間がかかることも考慮しなくてはいけません。

ISO9001は、取得時や審査費用、コンサルタント費用などのコストが発生します。加えて、ISO9001の取得には約6ヶ月~1年半の期間がかかります。

取得期間中は費用や人員を確保しなくてはいけないため、本来の業務にかける時間や手間を削減する必要性がある点に注意が必要となります。

ISO9001の導入を検討する際には、コストや手間がかかる部分を考慮しつつ、メリットとのバランスを取るようにしましょう。効果的な導入計画と運用体制の確立が、デメリットを最小限に抑え、長期的な成功につなげる鍵です。

管理する書類や記録が増える

ISO9001の導入には多くの書類や記録を管理する必要があるのも、デメリットの一つです。

ISO9001に関する書類やマニュアルを作成・保管しておかなくてはいけないため、管理ルールや保管場所などを決めておくことが重要となります。

ISO9001取得も、維持するために定期的に関連書類の管理ができる体制を整えることも、検討しておきましょう。適切な文書管理システムやプロセスを導入することによる、効率的な運用が求められます。

内部リンク:ISO 9001を取得するメリット・デメリット

 ISO9001を取得する流れ

ISO9001を取得するまでの流れは、以下のとおりです。

  1. 組織の体制を整える
  2. 品質マネジメントシステムの構築
  3. 品質マネジメントシステムの運用
  4. ISO審査期間による審査・認証取得

ISO9001を効率的に組織全体に浸透させるためには、的確な導入スケジュールや人員体制の確立が重要となります。上位職や管理層は、取得までに必要な要素や手順の流れを把握しておくことが大切です。

詳細な手順や方法は、次項で詳しく紹介します。導入を検討している企業は、取得までの流れについて押さえておきましょう。

ISO9001認証を獲得する方法

4つのステップに分けてご紹介します。

ステップ①体制を整える

1.プロジェクトチームを編成する

ISO9001認証取得に向けて必要な作業量は決して少なくありません。認証取得を担当するPJTチームを作り、作業に集中できる環境を整えると良いでしょう。

2.社内に周知する

ISO9001は社内の多くの部署に関係します。そのため、社内に認証取得に向けて動くことを周知し、協力を取り付けることが大切です。

3.社内勉強会

PJTチームメンバーがISO9001について詳しくなる必要があります。しかしながら、ISO9001についてはwebや書籍に情報が溢れているものの分かりにくい物が多く、独学での学習はなかなか難しいものです。そのため、社内勉強会等を利用した学習が適しているでしょう。

ステップ②品質マネジメントシステムの構築

1.品質管理の方針・目標を策定する

ISO9001認証取得の目的は自社サービスや製品の品質の一定した良さを社内外に認知させることにあります。そのため、自社サービスや製品の品質がどのようであるべきなのか、目標を設定する必要があります。

2.マネジメントシステムの適用範囲を決定する

次に、マネジメントシステムの適用範囲を決めます。一般的には企業全体に適用させることが多いですが、支店や部署限定で適用させることも可能です。

3.品質マネジメントシステムを構築する

上記にて設定した目標品質を安定して達成するためのマネジメントシステムを構築します。上記で設定した適用範囲における業務フローを見直し、理想状態を設定することで、現状とのギャップを洗い出し、対応策を考えます。

ここまでが、計画の策定に該当します。PDCAでのPに該当するものです。

ステップ③品質マネジメントシステムの運用

1.品質マネジメントシステムに関する社員教育を行う

新たに構築した品質マネジメントシステムを社内にてスムーズに運用していくためにも、社員への説明は欠かせません。上述したステップ①の「社内への周知」が、このタイミングで生きてきます。

2.現場でマネジメントシステムを実際に運用する

ついにマネジメントシステムの運用を開始します。作成したマニュアルに沿って、運用していきます。

3.マネジメントシステムの改善

計画したシステムに全く不具合が生じないということは考えにくく、社員からのフィードバックを基に改善していくことが不可欠です。

4.取得に向けた内部監査、マネジメントレビュー

目立った問題点を修正し、マネジメントシステムをスムーズに運用できるようになった後、自社従業員による内部監査と、経営者によるマネジメントレビューを実施します。

ステップ④ISO審査期間による審査・認証取得

1.ISO審査機関を選び、契約する

自社内での作業が完了した後、ISO9001認証審査を依頼する審査機関を選別し、契約する必要があります。審査機関は複数存在しておりますが、各機関によって若干契約内容や特徴が異なることもありますので、自社に最適な審査機関を見つけることも重要です。

2.ISO審査機関による文書審査を受ける

マニュアルなどの文書を中心に、適用範囲の妥当性や、ISO9001の規格要求事項に組織のマネジメントシステムが対応できているかどうかなどがチェックされます。

審査員が会社に直接訪問するものになりますので、社内調整は必須になるでしょう。

3.文書審査での指摘事項を改善する

文書審査の次は実地審査になります。実地審査までに文書審査での指摘事項を修正して臨めるように準備しておく必要があります。

4.ISO審査機関による実地審査を受ける

実地審査は文書審査の一か月ほど後に予定されます。実地審査での指摘事項は改善報告する必要がありますで、準備する必要があります。

5.審査登録を行う

上記の改善報告を提出し、無事認可された場合、審査登録に進むことができます。最終報告書と登録料の請求書が送付され、入金後に認証書が発行されます。晴れて認証登録の完了です。

ISO9001の取得にかかる費用と期間

ISO9001の取得には、6ヶ月~数年かかり、30万~100万円の費用が相場とされます。必要な期間や費用は、企業の業種や規模、従業員数などの要素により変動します。

ISO9001取得までの期間としては、構築や運用時に発生する課題の有無などが関わり、支障が出た場合には予定より長引くことも考えられます。ISO9001についてのスキルや知識を持つ人材がいるか、いないかも、円滑な環境構築に影響があります。

ISO9001の運用は、コンサルティング会社に依頼するのも可能です。コンサルティング費用が、ISO9001の取得にかかるコストや人的負担を最小限にできる利点があります。

導入により企業に品質向上と競争力強化などのメリットがあるISO9001ですが、必要予算や人材などを考慮して、導入計画を立てることが重要です。

ISO9001の導入企業事例

ISO9001の導入事例を紹介します。実際に認証取得をした企業の、目的や成果を参考にしてみてください。

導入事例①株式会社シャトレーゼ

株式会社シャトレーゼは、洋菓子・和菓子などを製造し、全国に店舗を展開する企業です。

シャトレーゼは、顧客の安全面への関心の向上や、原材料費の高騰などの環境の変化をきっかけとして、ISO9001に基づく品質マネジメントシステム構築に着手しました。

ISO9001導入後の成果として、従来よりも顧客からのクレーム件数が30%減少という結果につながっています。マニュアルや手順書の作成・管理強化により、問題発覚時に行う対応のレベルアップが図られたほか、社内教育体制の整備にも役立てられています。

参考:株式会社シャトレーゼ様 | 日本品質保証機構

導入事例②三和鋼器株式会社

三和鋼器株式会社は、鉄塔および鋼構造物の設計から製作、施工までを一貫して提供し、電力、通信、交通などのインフラ整備に貢献しています。高品質と短納期に焦点を当て、多様な鋼構造物を製造しており、さらに太陽光発電パネルの架台など新たな市場にも進出しています。

三和鋼器は、ISO9001の導入により品質向上と顧客満足度の向上を図りました。ISO9001導入に関して、初めは専門用語や手順の変化などに戸惑いがあったものの、社内でのISO活動の意義が浸透し、自発的な取り組みへと変化しています。

定期的な品質管理委員会で各部門の目標達成状況が報告され、改善点が認識できることで、目標が明確化され、継続的な改善・品質向上が社内文化として根づく結果が生まれました。

三和鋼器では、ISO9001によるマネジメントシステムを生かして、経営内容の改善を進め、社会の発展に貢献し続ける企業として成長しています。

参考:情報誌 ISO NETWORK Vol.24 | 日本品質保証機構

ISO9001へのタレントマネジメントシステム活用方法とは?

ISO9001の取得を進める際、従業員のスキルや技量の把握・管理はとても重要なポイントとなります。

タレントマネジメントシステムは、従業員ごとの評価やスキルなど、さまざまな個人や組織の情報をデータ化し、まとめて管理を備えた機能です。

タレントマネジメントシステムの導入によって、社員のスキルの把握と育成計画の策定・実行を効率化できます。ISO9001導入の際には、タレントマネジメントシステムを活用して、効率的な組織管理を行いましょう。

ISOの導入を検討しましょう

ISO9001は品質マネジメントにおける国際的な基準であり、導入することで組織に品質の向上や競争力の強化をもたらします。

一方で、ISO9001の導入には初期コストや手間がかかりることや、多くの書類と記録を管理する必要があるなどのデメリットも押さえておきましょう。導入を検討する際には、導入・維持コスト、時間や人的リソースなどを把握し、的確に導入計画を定めることが大切です。