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定着率とは?定着率の計算方法や離職率との違い、数値の上げ方などを解説

社員の定着率は、企業の働きやすさを示す重要な指標であり、企業にとっても従業員にとっても大事な要素となります。

本コラムでは、定着率の基本的な定義や計算方法、離職率との違い、そして定着率を向上させるための具体的な取り組みについて、分かりやすく解説します。

従業員の定着率を改善したいと考えている企業の担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。

企業における定着率とはなに?

企業における定着率とはどのようなものなのでしょうか。

本項目では、定着率の基本的な意味や算出方法を解説します。

そもそも定着率とは何か

そもそも定着率とは、入社から離職せずに一定期間以上を働き続けている従業員の割合を指す指標であり、定着率が高いほど従業員の離職が少なく職場環境が良いと判断できます。

逆に定着率の低い場合は、従業員の離職が多く、職場環境に何らかの問題が生じていることが判断できるでしょう。

定着率の数字によって組織の状態の良し悪しを判断できるため、企業運営のうえで重要な指標となっています。

定着率と離職率の違い

離職率は定着率の逆で、入社から一定期間後に離職した割合のことであり、定着率と離職率を足すと100%になるため、片方を計算できれば100%から引くことでどちらの割合も算出することができます。

転職の動向や企業への定着性を示すうえでは、離職率が使われるケースが多いですが、企業によっては定着率を用いる場合もあります。

定着率の算出方法

定着率は、「現在の在籍従業員数÷入社時の従業員数×100=定着率」で求めることが可能ですが、この現在の在籍人数には計算期間内に中途入社した従業員を含めないため、正確な数値を出す場合は、「(〇年前の人数 – 〇年間の離職人数) ÷ 〇年前の人数 × 100 = 定着率」を使用して算出します。

また、毎年入退社の人数は変動するため、計算の対象とする期間によって結果が変わることには注意が必要です。

定着率を確認しておきたいタイミングと期間

定着率は年単位で計算するケースが多く、新卒社員が入社する年度初めの4月を区切りとして算出する企業がほとんどです。

また、業種によっては従業員の入れ替わりが激しいことがあるため、1年より短い期間で計算されることもあります。

このように、算出の対象となる期間は、企業の業界・業種や、その企業の状況などによって変化します。

定着率はなぜ重要視されている?

定着率が重要視されている背景のひとつとして、少子高齢化による生産年齢人口の減少があげられます。

生産年齢人口の減少により、採用競争が激化していることに加え、現在在籍している従業員の離職を避けたいという傾向も強まっていることにより、定着率は重要視されています。

生産年齢人口の減少は今後も続く見通しとなっており、定着率向上に取り組むことは、人材の維持・確保において、企業の重要な活動となっています。

日本企業の平均的な定着率はどれくらいなのか

日本企業の平均的な定着率について、厚生労働省が調査しているデータをもとに、さまざまな視点から紹介します。

日本全体の定着率

日本全体の業種や就業形態を統合した数値で、2020年(令和2年)における定着率は85.8%でした。

これは1年間でおおよそ7人に1人が離職している状態ですが、自然に発生する離職程度のものであると考えてよいでしょう。

就業形態別の定着率

日本の就業形態別での定着率も見てみましょう。

令和5年1月時点での数値は、一般労働者の定着率が87.9%、パートタイム労働者は76.2%となっており、前年と比べると、一般労働者及びパートタイム労働者双方で定着率の低下がみられました。

業界別の定着率

業界別の定着率はどのようになっているのでしょうか。

令和5年1年間の調査では、全産業平均の定着率が87.9%に対して、「情報通信業」「不動産業,物品賃貸業」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」「医療,福祉」「サービス業(他に分類されないもの)」の6つが平均を下回っています。

特に、宿泊、飲食、娯楽、生活関連サービス業、その他サービス業は定着率が約80%となっており、全体と比べても低くなる傾向が見られます。

新卒の平均

新卒の定着率の平均も紹介します。

2020年における新卒の就職後3年以内の定着率は、大卒68.8%、高卒63.1%となっており、新卒における入社後の数年は全体の平均に比べて定着率が低くなりやすいととらえることができます。

そのため、入社後数年間は新卒入社者のフォローを丁寧に行うことも施策として考えられるでしょう。

定着率が低い企業と高い企業の特徴と違い

定着率の違いはどのような差異から生じるのでしょうか。

本項目では、定着率が低い企業と高い企業の特徴やその違いについて解説します。

同業他社と比較した際の報酬の違い

同業他社に比べて報酬が高い企業は定着率が高い傾向にあります。

また、単に報酬面以外にも、休日数が多めで有給休暇が取得しやすい、福利厚生制度の充実している、といった制度面の充実度なども定着率に大きく関係してくるといえるでしょう。

人事評価制度の違い

人事評価の違いによっても定着率は変化します。

人事評価制度が適切で、常に適切な評価を行っている企業では従業員が達成感・充実感を得やすくなり、モチベーションの向上もしやすいため、定着率が上がりやすい傾向にあります。

一方で、人事評価が適切でないと、評価に透明性がなくなり、従業員のモチベーションが下がり、定着率の低下にもつながるおそれがあります。

ワークライフバランスの重要視度の違い

ワークライフバランスをどの程度重要視しているかも大事なポイントです。

定着率が高い企業は、ワークライフバランスに配慮することで、心身の健康を保ちやすく、残業時間の適正化やメンタルケアの仕組みなど、従業員が健康的に働ける環境を用意している傾向にあります。

一方で、定着率の低い企業は、ワークライフバランスへの配慮が欠けており、ライフステージの変化に対応することが難しく、結果的に離職に繋がりやすくなってしまいます。

人間関係や風通しの違い

人間関係や風通しの違いも、定着率に影響を及ぼします。

従業員同士の関係性が良好である場合、悩みや相談を話しやすく、職場内の居心地も良くなるため定着率のアップにつながりやすくなります。

逆にコミュニケーションが少ないと、環境に馴染めず、離職につながりやすくなってしまうでしょう。

定着率の低下が起こる原因

定着率の低下が起こる原因もさまざまなものがあります。

本項目では、6つの原因を解説します。

業務内容が適正に合っていない

能力が高い人材に対し業務の内容が軽い、やりたい業務内容があるにもかかわらず、全く関連のない業務を任されるなどの適性に合わない状態が続くと、生産性・やる気の低下が起こり、離職へもつながってしまいます。

結果として定着率の低下が起こってしまうため、その人の能力や給与に合った業務を任せるように心がけましょう。

職場内の人間関係が悪化している

退職の原因が職場内の人間関係であることも多く、上司が威圧的であったり、先輩が厳しく分からないことがあっても質問がしにくいなどの環境にあると仕事の能力も上がらず、居心地も悪くなってしまいます。

人間関係の悪化にはさまざまな原因があるため、定期的に社内の状況を調査・把握する必要があります。

ハラスメントがある

近年、問題視されていることがハラスメントであり、セクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)、アルコールハラスメント(アルハラ)などが挙げられ、上記のようなハラスメントは離職だけでなく、従業員の精神面への長期ダメージも引き起こします。

また、ハラスメントは労働基準監督署などへの相談を通して調査が入るだけでなく、企業のイメージダウンにもつながるため、常に注意を払う必要があります。

職場・企業・自身の将来性が感じられない

従業員にとって、職場・企業・自身の将来性が感じられないことも定着率の低下が起こる原因になります。

昇格しにくい、この企業での将来の目標が立てられない、といった理由のほかに、企業の業績の低迷や業績の衰退などで働き続けることを諦め、転職してしまうケースが見られます。

評価や給料面に不満がある

評価制度があいまいであったり、努力して成果を出しても評価されず、給料面にも変化がないといった環境は、労働への不満につながります。

このような場合において、同じ業務内容で給料が高い・しっかりと評価される会社が他にあった時には転職に繋がりやすく、定着率の低下が起こるリスクが高まります。

心身に負担がかかっている

残業が多い、休日も仕事をしなければならない、有休がとりにくいなど、プライベートな時間を取りにくい場合は心身に負担が大きく出てしまいます。

このような場合、従業員は、働きたくても働けない状況に追い込まれてしまうため、結果として退職や転職をする人が増加し、定着率の低下が起こってしまうでしょう。

定着率向上で期待できるメリット

定着率が向上することで企業が期待できるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

本項目では5つのメリットを解説します。

優秀な人材を自社で活躍させられる

定着率が向上することで、優秀な人材が長く働いてくれるため、他の従業員や部下の働きやすさも変わってきます。

また、長く勤務してくれている従業員がいることにより、業務の生産性も向上することが期待できます。

優秀な人材が定着することで、業務のノウハウやスキルが蓄積され、全体の生産性向上につながるでしょう。

採用と人材育成のコストが減少する

定着率が向上するということは、離職率が下がることに直結します。

そのため、新たな採用や一から人材を育成する手間を減らすことができ、コスト削減に直結します。

採用のための求人広告費や人材紹介会社への紹介料、各種システムの導入費用や、教育研修のためのコストだけでなく、社員の負担といった労働時間も削減することができるでしょう。

従業員のモチベーションが向上する

一般的に「定着率が高い = 働きやすい環境」と考えられるため、職場内の環境が良いことは、従業員の労働に対するモチベーション向上につながってきます。

働きやすい環境を整え、定着率を高めることで、組織に対する不満を少なくするだけでなく、チーム同士の結束を高めるなどの効果が期待できるでしょう。

生産性と顧客満足度が向上する

定着率が向上すると従業員の熟練度も上がるため、生産性やサービス、品質の向上につながります。

生産性やサービス、品質の向上により、顧客満足度への良い影響も発生し、結果として業績の向上にもつながるでしょう。

企業イメージの向上が期待できる

就職希望者が企業を選ぶ際には、賃金や福利厚生はもちろんのこと、企業の働きやすさを重視することが多いです。

そのため、定着率が高く、離職者が少ないということは労働環境が良く、長く働けるという企業にとっての良いイメージを与えることができるでしょう。

定着率の向上は、企業イメージの向上を目指すうえでも大きなメリットとなります。

定着率を上げるためにはどうすれば良いの?

定着率を上げるためには、現在の定着率を調べ、離職理由が何なのかを理解する必要があり、その離職理由をもとに改善施策を考え、実行に移す必要があります。

また、改善施策の実施後は、定期的なフィードバックを行い、実際の従業員満足度やエンゲージメントを測る必要もあるでしょう。

現状を把握したうえで改善施策を検討・実行し、定期的なフィードバックを通して改善を繰り返すことで、定着率の向上につながります。

定着率の数値を向上させる7つの改善施策

定着率を向上させるための具体的な施策について解説します。

従業員の満足度の調査

従業員満足度とは、職場環境や労働条件、人間関係などに対する満足を示す指標です。

これを定期的に調査することにより現在の問題点を洗い出すことができ、それをもとに適切な改善施策を検討・実施することで、定着率の数値を向上させることができるでしょう。

職場環境の改善

労働環境や社内環境に問題点がないかをチェックし、労働基準法に反するような問題に対してすぐ対処するのはもちろんのこと、社内ルールにおいても従業員に負担のかかるようなことがあれば改善する必要があります。

有給休暇を取得しやすい体制の構築や、残業時間の抑制、業務分担の見直しなどが考えられます。

人材配置の見直し

個々の裁量は異なるため、ひとりひとりの希望やスキル・経験を把握し、適切に業務の配置を行うことが重要です。

ひとりひとりの希望や能力に合った人材配置を行うことで、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながり、定着率向上の効果も期待できるでしょう。

評価制度の見直し

1つの評価基準に絞らず、業務内容や部署ごとに異なった評価制度を導入し、また評価する人材も上司だけに絞らず、多方面からの意見を取り入れることで納得のいく評価ができるように改善することも重要です。

各個人を適切に評価できるように制度を見直すことで、評価への不満を減らし、定着率の向上を狙うことができるでしょう。

給料や福利厚生の見直し

給料水準や福利厚生の充実は定着率向上に影響します。

他社と比較し自社の内容を見直すことや、優秀な人材においては平等な見直しの他に、評価に基づいた報酬を導入することでより定着率の向上が見込めるでしょう。

また、福利厚生には住宅手当や資格取得支援金などさまざまな種類があるため、自社に合ったものを検討しましょう。

コミュニケーションの向上

上司・部下やチーム内での関係性を深めたり、社外でコミュニケーションが取れる場を設けるなど、話しやすい環境や働きやすい雰囲気を作ることで良好な人間関係が構築され、満足度の向上にもつながります。

具体的には、社内イベントやランチ会の実施、コミュニケーションスペースの設置などが考えられますが、自社に合った施策を検討・実施することが重要です。

人材育成とキャリアサポートの強化

人材育成やキャリアサポートを充実させることで、自身の成長を実感できたり長期的な展望を持てたりと、定着率の向上とモチベーションのアップが期待できます。

ただ、育成・サポート施策の内容や、サポートを行う人材をしっかりと見極めて行わないと逆効果になる場合があるため、事前に十分な検討を行ったうえで実行することに注意しましょう。

定着率が向上した企業事例

実際の企業ではどのような施策が行われているのでしょうか。

本項目では定着率が向上した企業事例を3つ紹介します。

スターバックス

飲食は離職率の高いアルバイトが中心の業界であり、スターバックスでも長期雇用は大きな課題でした。

そこで、スターバックスは、研修制度やキャリア支援の強化、「コーヒーセミナー」「表彰制度」「福利厚生の充実」などの施策を実施し、離職率が業界平均より大幅に低下しています。

大和ハウス工業

大和ハウス工業では、若手社員の3年以内離職率が高く、現場定着が課題でした。

そこで、若手社員へのOJT強化とメンター制度の導入や、「社内資格制度」「地域手当」「住宅補助」など福利厚生の拡充を行ったところ、若手社員の3年以内離職率が20%台 → 10%台へ改善されたという事例があります。

LUSHジャパン

LUSHジャパンでは、現場のスタッフの離職率が高く、ブランド価値に直結していました。

そこで、社内公募によるキャリアチェンジ制度や「自分らしさを大切にする働き方」推進(髪型・服装・表現の自由など)、メンタルヘルスサポートや相談体制の整備を導入したことにより、社員定着率が大幅改善されています。

定着率の向上は企業成長のために重要

定着率の向上は、企業側にとって無駄なコストや非効率な業務などのマイナス面や無駄な行動を減らすことができるというメリットにつながります。

そのため、適度に現状の見直し・把握を行い、改善を重ねることが重要です。

こういった取り組みにより、定着率の向上と持続的な企業成長を実現することができるでしょう。