タレントマネジメントシステムで実現するOKR導入・運用ガイド【スキルナビの具体例】
OKRの特徴(MBOとの比較)
OKRとはObjectives and Key Resultsの略で、従来のMBO(Management By Objectives)とは違った新しい目標管理の手法として注目されています。
従来のMBO と比較した場合、OKRの大きな特徴は4つあります。
1. 従業員エンゲージメントが目的
従来のMBOが昇進や昇給を決定する人事考課を目的に実施されるのに対して、OKRは企業と従業員が目標を共有することで従業員エンゲージメントを高めることを目的に実施されます。
2. 全社がスコープ
従来のMBOにおいては、目標が上司と部下の間で設定され、共有されるのに対して、OKRでは、まず全社の目標が設定、共有され、それに関連付けられるかたちで、部門や個人の目標が設定、共有されます。
3. 目標達成率60~70%が合格基準
従来のMBOにおいては、目標を100%達成することが合格基準であるのに対して、OKRでは、あえて高い目標を設定し、60~70%達成すれば合格水準に達したと考えます。
4. 進捗確認と評価を頻繁に行う
従来のMBOでは、評価は半期または年度に1回しか実施されないのに対して、OKRでは、月に1回、四半期に1回というように頻繁に進捗確認と評価が行われます。

このような特徴を持つOKRは、GoogleやFacebookといったグローバルな先進企業で採用されたことで、いっそう注目されるようになり、日本でも多くの企業で導入が検討されている状況です。
OKRを実現するために必要な作業とデータ
それでは、OKRを実際に実現するために必要な作業とデータを考えてみましょう。
最初に必要な作業は、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)データの設定です。
Objectiveは定性的な目標として、Key Resultsは定量的な指標として設定します。
また、1つのObjectiveに対して、2~5個程度のKey Resultsを設定しますので、ObjectiveとKey Resultsは1対多の関係になります。それぞれのObjectiveとKey Resultsについて、目標値が設定されます。
OKRの特徴として全社の目標が設定、共有され、それに関連付けられるかたちで、部門や個人の目標が設定、共有されるということがありますので、ObjectiveとKey Resultsは、最上位の階層から下層に向かって、「全社→部門→個人」のような順番で設定されます。
ObjectiveとKey Resultsの設定が完了し、OKRの運用が開始されると、進捗確認と評価の実施と結果の記録が必要になります。
OKRは、MBOのように人事考課が目的ではなく、従業員エンゲージメントを高めることが目的ですから、進捗確認や評価の結果は、達成率のような定量的なデータだけではなく、進捗確認や評価におけるグループ内でのやりとりの内容といった定性的な情報が記録されることが重要です。
また、MBOとは違い、OKRでの進捗確認や評価は短い頻度で複数回行われますので、進捗確認や評価の結果は、最終的なもので上書きされるものではなく、時系列に記録される必要があります。
タレントマネジメントシステムとOKR
ここまで見てきたOKRの実現に必要な作業で発生するデータは、かなり複雑な構造になりますので、紙の書類やExcelなどの表計算ソフトで対応することは難しいといえます。
例えば、ObjectiveとKey Resultsを単純な一覧表として記録するだけであれば、Excelでも十分可能でしょう。
しかし、ObjectiveとKey Resultsの1対多の関係、「全社→部門→個人」といった階層関係、さらには、それぞれのObjectiveとKey Resultsに設定された目標値までを含めると、単純な一覧表としては表現できません。

また、進捗確認や評価の結果も、最新のもので上書きするのではなく、それぞれのObjectiveとKey Resultsごとに時系列に記録していくことは、紙の書類やExcelなどの表計算ソフトで行った場合、明らかに非効率で膨大な作業が発生することが予想されます。
そこでOKRを長期的かつ効率的に運用するために利用すべきなのが、タレントマネジメントシステムです。
タレントマネジメントシステムは、もともと全従業員のタレント(能力)を最適化し、企業の競争力を高めることを目的とした統合人事情報データベースシステムです。
以前は、オンプレミス形式で高額な導入コストが必要とされていましたが、最近では、低コストで短期間に導入が可能なクラウド・サービスが登場しています。
そのようなクラウド・サービスの一つであるスキルナビでは、OKRの実施の際に発生するすべてのデータを、体系的に保存し、必要な時に、必要な形式で閲覧できるようになっています。このスキルナビを例にとって、タレントマネジメントシステムを利用したOKRの実現方法を解説します。
達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)の設定
OKRの開始にあたって必要となる作業が、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)の設定です。
Objectiveは定性的な目標として、Key Resultsは定量的な指標として設定します。
また、1つのObjectiveに対して、2~5個程度のKey Resultsを設定しますので、ObjectiveとKey Resultsは1対多の関係になります。それぞれのObjectiveとKey Resultsについて、目標値が設定されます。
また、ObjectiveとKey Resultsは、最上位の階層から下層に向かって、「全社→部門→個人」のような順番で設定されます。
このように、OKRの開始にあたっては、ObjectiveとKey Resultsの1対多の関係、「全社→部門→個人」といった階層関係、さらには、それぞれのObjectiveとKey Resultsに設定された目標値までを含めた大変複雑な構造のデータを設定しなければなりません。
そこで、タレントマネジメントシステムを使用することで、このようなデータを簡単に入力し、更新、閲覧できるようにする必要が出てくるのです。
SMARTの法則とFASTの法則
タレントマネジメントシステムを使用することで、ObjectiveとKey Resultsを簡単に入力し、更新、閲覧できるようになりますが、タレントマネジメントシステムがObjectiveとKey Resultsそのものを考案してくれるわけではありません。
あたりまえのことですが、目標を考案するのは、「全社」、「部門」、「個人」の目標それぞれに責任を持つ担当者や社員です。
慣れないうちは、目標を考案するのが難しかったり、考案した目標が運用段階で、うまく評価できなかったりするかもしれません。
そのような場合に、参考になるのがSMARTの法則とFASTの法則です。
SMARTの法則もFASTの法則も、どちらもOKRに限らずさまざまな目標設定に適用される汎用的な考え方です。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標設定の際に、
1.Specific(具体的である)
2.Measurable(測定可能である)
3.Assignable(誰がやるのか割り当てることができる)
4.Realistic(現実的である)
5.Time-related(期限が明確である)
の基準を設けることで、適切な目標を設定できるという考え方です。
FASTの法則
一方、FASTの法則は、目標設定の際に従うべき基準として、
1.Frequent(ゴールは頻繁に議論される)
2.Ambitious(不可能ではない範囲で野心的である)
3.Specific(具体的な指標とマイルストーンで計測できる)
4.Transparent(組織の全員から見えるよう透明性がある)
の4つが設定されています。
どちらが良い悪いというわけではありませんので、自分にとって取り入れやすい方、あるいは双方の良いところをピックアップした上で参考にするとよいでしょう。
タレントマネジメントシステムを使用したOKRの開始
それでは、タレントマネジメントシステムスキルナビを使った実際のデータ入力画面を見てみましょう。
この例では、最下層の「個人」レベルでのObjectiveとKey Resultsを設定しています。
まずは、Objectiveの入力です。スキルナビには、「全社→部門→個人」といった階層構造を伴ってデータが保存されていますので、「個人」のObjectiveを入力する際に、上位階層である「部門」のObjectiveを参照することができます。

Objective の入力が終わったら、それに紐づくKey Resultsを入力します。
ObjectiveとKey Resultsは1対多の関係を持ちますが、スキルナビでは、1つのObjectiveに関連する複数のKey Resultsを、タブを切り替えることで、同一画面で入力することができます。

MBOよりも複雑なOKRの運用
従来のMBOでは、評価は半期または年度に1回しか実施されないのに対して、OKRでは、月に1回、四半期に1回というように頻繁に進捗確認と評価が行われます。
つまり、MBOとは違い、OKRでの進捗確認や評価は短い頻度で複数回行われますので、進捗確認や評価の結果は、最終的なもので上書きされるものではなく、時系列に記録される必要があるということになります。
さらに記録する対象も、社員それぞれのObjectiveとKey Resultsごとに必要であり、本人のレビュー、評価だけではなく、上司によるレビュー、評価の結果も反映させなければなりません。
その結果、OKRでは時系列に膨大な評価データが発生することになり、紙の書類やExcelなどの表計算ソフトでの管理はとうてい不可能といえます。

タレントマネジメントシステムを使用したOKRの運用
それでは、タレントマネジメントシステムスキルナビを使った実際の進捗管理画面を見てみましょう。
この例では、本人による中間レビュー第1回、上司による中間レビュー第1回、本人による中間レビュー第2回、上司による中間レビュー第2回、本人による最終評価、上司による最終評価の計6つの中間段階が設定されています。

画面の上部には、表示対象となっているOKRの目標評価期間と、進捗状況を示す段階の種類が表示されています。
一方、画面の下部は、社員とその進捗状況の一覧表になっており、OKRの進捗の全体状況が一目でわかるようになっています。
さらに、上部の進捗状況の種類は、それぞれにチェックボックスがついており、特定の段階にある社員だけに絞り込むことも可能になっています。
次の画面は、本人の評価入力画面です。

この画面から、複数設定されたOKRそれぞれについて、自己評価の点数とコメントを入力するようになっています。
上司による評価結果の入力画面は、本人による入力画面とおおよそ同じ内容になりますが、本人が事前に入力した評価結果を参照しながら、入力を行うことができるようになっています。

さらに、多数の部下の評価を入力する必要のある上司のために、通常の進捗管理画面とは別に、本人の入力が終了し上司の評価待ちになっている社員だけのリストを表示する画面も別途用意されています。

ここまでで、MBOよりはるかに複雑なOKRの運用であっても、スキルナビでは簡単に評価結果を入力し、進捗を確認できることがおわかりになったと思います。
OKRはMBOと比較されるケースが多く見られますが、実施する際に発生するデータや運用プロセスは、MBOよりもはるかにOKRの方が複雑になりますので、例えMBOを紙の書類やExcelなどの表計算ソフトを使って実施してきた企業であっても、OKRの実施に当たっては、タレントマネジメントシステムの利用が現実的といえるでしょう。
