人事異動の種類や目的は?実施理由や時期なども徹底解説!

人事異動は、組織の活性化や人材育成を目的に行われる重要な施策です。
配置転換や昇進などその種類は多岐にわたり、実施するうえで留意するべき点も多々あります。
本記事では、人事異動の種類や目的、実施理由や時期について解説します。
人事異動と種別
人事異動とはどのようなものなのでしょうか。
本項目では、人事異動の概要や種別について解説します。
人事異動とは
人事異動とは、企業が従業員に命じ、その配置や地位を変更することです。
主に転勤や昇格・降格、部署の異動や出向などを指しますが、権利の濫用や差別の禁止などの特別な定めもあるため、人事異動を行う際には細心の注意が必要です。
人事異動の種別
人事異動の種別には統一的な定義はないものの、大別すると「企業内の人事異動」と「企業間の人事異動」のふたつに分けることができます。
「企業内の人事異動」は異動や昇格・降格、役職への任命などを指し、「企業間の人事異動」は出向・転籍などを指します。
人事異動とジョブローテーションの言葉の違い
人事異動と類似する言葉に「ジョブローテーション」があります。
ジョブローテーションは従業員の育成や組織の生産性向上を目的として、定期的に従業員を異なる部署や職務に配置し、計画的に複数業務を経験させる手法を指します。
一方で人事異動は、前述の通り、企業が命じる配置転換全般を指します。
ジョブローテーションの結果として、部署間の異動や出向などの人事異動が生じることは多々あります。
人事異動の実施時期
人事異動の実施時期は企業によって様々ですが、日本の企業の多くは、決算期を目処に人事異動を実施する傾向があります。
決算期は企業にとっての節目となる時期であるため、新体制の発足や評価・業績を踏まえた見直しのタイミングとなるためです。
日本の企業の多くは3月を決算期としているため、会計年度の始まりである4月や、下期の始まりである10月に人事異動が実施される企業が多いです。
6種類の人事異動
人事異動は大きく「社内の人事異動」と「会社同士の人事異動」の2つに分けることができ、細かく分けると6種類に分類することができます。
本項目では、6種類の人事異動と併せて、サービス業や小売業の人事異動における注意点を解説します。
社内の人事異動
企業が実施する社内の人事異動は「配置転換」と言われます。
配置転換には「部署移動」「職種変更」「転勤」「昇格・降格」の主に4つがあります。
・部署異動する
「部署移動」はマーケティング部から商品開発部への異動など、所属部署の変更のことをいいます。
・職種変更する
「職種変更」は事務職系から営業職系など、業務内容の変更のことをいいます。
企業内で新規に部門・部署が設置される場合、職種変更が伴いケースが一般的です。
・転勤する
「転勤」は勤務地や拠点の変更を伴う異動のことをいいます。
引っ越しの必要性は異動先の住所によって変わるため、必須ではありません。
・昇格や降格する
「昇格・降格」といった等級変更も配置転換のひとつに数えられます。
組織の下位職階から上位職階に異動したり、逆に上位職階から下位職階に異動したりすることを指します。
会社同士の人事異動
他社との間に実施される人事異動には、在籍出向と移籍出向のふたつが挙げられます。
出向する
「出向」とは、出向元の企業との雇用関係を維持したまま、他社の事業所に勤務することをいいます。
転籍する
「転籍」とは、在籍していた企業を退職し、他社と新たに労働契約を結んで勤務することをいいます。
サービス業や小売業の人事異動の取扱
サービス業や小売業の場合、従業員の店舗間の異動が実施されるケースもあるでしょう。
その場合、異動が社内なのか系列会社なのかによって、取り扱いが異なります。
店舗間異動
同一企業の店舗へ異動する場合、在籍期間によって下記のように取り扱いが変わります。
・一時的な応援業務などで1か月以内と期間が短い場合:出張
・1か月よりも長期となる場合:異動
他社店舗への異動
系列会社など別企業の店舗へ異動する場合も、企業ごとに就業規則で取り決め(1か月など)、その期間内であれば出張扱いとするのが妥当でしょう。
人事異動を行うための目的
人事異動を行う目的は様々なものがあります。
本項目では大きく5つの目的を解説します。
事業拡大や統合において人材を見直すため
事業拡大や統合において人材を見直すことは陣移動の大きな目的のひとつです。
新規事業を成功させるための配置変更、部署を創設したり廃止したり統合したりなど、企業は経営戦略に合わせて組織図をつねに更新し、人員を配置し直す必要があるため、人事異動が行われます。
適正人材を配置し、成果を上げるため
適正人材を配置し、成果を上げることも人事異動の大きな目的の一つです。
従業員のスキルや適性に合った適材適所の人材配置を実現させることで、業務の生産性やモチベーションが向上し、成果にもつながりやすくなるため、従業員はもちろん企業にもメリットがあります。
部署全体を躍進させるため
部署全体を躍進するためにも人事異動は行われます。
人事異動を通じて新しい業務にかかわることで、従業員はこれまで身につけられなかったノウハウを取得することができ、人材育成の効果も期待できます。
これにより、個々の成長を後押しすると同時に、組織全体のスキル向上と活性化が実現され、部署全体の躍進へとつながります。
従業員のスキルアップを目指すため
組織内のスキル・経験のアンバランスを解消することも、人事異動を行う目的のひとつです。
スキルや経験のアンバランスさを解消することで、従業員のスキルアップにつなげることができるでしょう。
企業目標達成に向けて健全性を維持するため
組織の新陳代謝をよくするために人事異動を活用し、マンネリ化や不正防止のため組織に新しい風を送り込もうとする企業が増えています。
目的を達成するには組織の人材状況を把握している必要があり、人事異動を行うことで組織の健全性を維持することが重要です。
人事異動を行う上での4つの検討材料
人事異動を行う際には、事前に十分な検討を行うことが重要です。
本項目では4つの検討材料を解説します。
1. 就業規則で定められた異動事項の確認をする
就業規則で定められた配置転換や転勤・転籍といった異動事項を確認します。
各異動事項について、期間の規定があるかどうか、従業員との同意が必要かなど、事前に確認したうえで検討を行いましょう。
2. 人事異動が必要な理由をはっきりさせる
人事異動が異動先の部門・部署だけでなく企業全体にとってどのような影響があるのか、メリット・デメリットを整理します。
人事異動を行う理由を明確にすることで、よりよい効果が期待できるでしょう。
3. 本人の希望・適性・状況を把握する
候補となる従業員を絞り込む準備として、業務経験や業績、適性や希望キャリアなどパーソナルな情報を一人ひとり確認します。
たとえば、勤務地の変更がある場合は、単身赴任の可能性や親族への影響なども把握しておきましょう。
4. 異動先の配置シミュレーションを行う
人事異動を行う際は、一人ひとりのスキルや経験などの人事データをもとに、異動先での役割やパフォーマンスを想定した配置シミュレーションを行い、最適な人員配置を検討することが重要です。
人事異動を行う際のメリット
人事異動を効果的に実施することには様々なメリットがあります。
本項目では人事異動を行う際に期待される成果や、その具体的な内容について紹介します。
人事異動を行うことによって期待できる成果
人事異動を行う目的は様々あります。
従業員のモチベーションを管理するために、インセンティブの意味をこめて異動を行う場合もあれば、組織の硬直化を防ぐためにポジションを変更することもあります。
人事異動の効果は、そのとき企業がどのような組織課題を抱えているかにより、万能薬のように期待できる効能が変わるものといえます。
業績を上げる「人材データの分析」
人事異動の効果を高めるには、人材データを分析するとよいでしょう。
データ分析した結果をもとに人事異動を実施すれば、直感的・主観的な異動を避け、データを土台にしたロジカルな人員配置を行うことができます。
そうすることで、より人事異動の成果を高め、業績の向上につなげることができるでしょう。
適正人材の配置
人事異動を適切に行うことで、従業員個人の適性を踏まえた配置となれば、それぞれが持ち場でパフォーマンスを発揮しやすくなり、ひいては本人のエンゲージメント向上にもつながります。
人材育成の期待
高いスキルと指導力をもつリーダーの配置は、部下の成長が期待できます。
一方でリーダーに対しても、マネジメント能力の育成機会が創出できます。
人事異動を適切に行うことで、職位によらない従業員のスキル向上を実現することができるでしょう。
退職率の減少
現状の就労環境に不満を抱いている場合は、異動によって問題を解消でき、ひいては人材定着につながるでしょう。
人事異動を適切に行うことで、従業員の不満解消、エンゲージメントの向上につなげ、退職率の現象を期待することができます。
人事異動を行う際のデメリット
前項では人事異動のメリットを紹介しましたが、人事異動を行う際にはデメリットが生じる可能性もあります。
本項目では、人事異動を行うことで生じる可能性があるデメリットについて紹介します。
従業員に対する負担ダメージ
人事異動を行うことで、従業員に負担ダメージを生じさせてしまう場合があります。
勤務地や通勤経路の変更は、従業員のワークライフバランスの維持に支障をきたす可能性があります。
また、職種や職場環境の変化は、従業員の心身にも負担をあたえます。
人事異動で起こりうる労使トラブル
もっとも致命的なデメリットは、労使間でトラブルが発生するケースです。従業員にとってあまりにも不利益が大きい場合、使用者の人事異動命令が適法か否か、裁判所で争われることがあります。
人事異動で労使トラブルが発生しないよう、事前に従業員の希望なども十分に理解したうえで、人事異動を決定することが重要でしょう。
キャリアアップが望めない
頻繁な異動によって、重合院の専門的なスキルや知識の積みあげが難しくなり、キャリアアップが望めなくなってしまうケースもあります。
事前に本人のキャリア形成の意向を十分に理解したうえで、意向を踏まえて人事異動を検討しましょう。
実際に人事異動を行うときの5つのステップ
実際に人事異動を行う際にはどのような手順が必要なのでしょうか。
人事異動は次の5つのステップで行われます。
1.人材データの調査をする
現場であがっている要望や優秀な人材の情報を吸い上げることで、適切な異動につながる人材データを集められます。
人材データは、最新のデータを照会する必要があることを覚えておきましょう。
最新の人材データを照会したうえで、異動の必要性を検討することが重要です。
2.異動候補者を決める
最新の人材データを照会したら、データに基づいて異動対象者を選定しましょう。
また、選定後すぐ対象者に伝えるのではなく、まずは異動対象者が所属する部署の責任者に打診することを忘れてはいけません。
異動対象者が所属する部署の責任者だけでなく、異動先の部署の責任者に確認をとることも重要です。
3.異動候補者と妥結させる
対象となる従業員の異動が、責任者間で認められたら、異動対象となる従業員に直接合意を取りましょう。
異動に対する合意は、現在在籍している部署の責任者が、従業員との面談を実施し、合意を取るのが一般的です。
4.異動の内示を出す
従業員から異動の合意が得られ、正式に人事異動が決定した段階で内示を出します。
人事異動の内示は、一週間から一か月前を目安にしましょう。
転居を伴う異動の場合は、準備期間を与えるなどの配慮も重要です。
5.異動先でのフォローをバックアップする
人事異動は、実施しただけで終わりではありません。
異動した従業員が、異動先で十分に能力を発揮できるようになるまで、フォローする必要があります。
また、人事異動を行った後の効果検証も行うことで、人事異動の効果を高めていくことができるでしょう。
人事異動を実施する際の注意点とポイント
本項目では、人事異動を適切に実施するための注意点とポイントを紹介します。
相手が納得しやすい人事異動を行うルールを決める
就業規則の中に、人事異動についてのルールを定めておくことで、人事異動が原則拒否できないものになります。
人事異動を、拒否できないものであると従業員が把握しておけば、異動そのものを不服に感じられることは少なくなるでしょう。
事前にルールを明確にしたうえで、周知をすることも重要です。
異動の理由を正確に伝える
現在の部署での仕事にやりがいを感じている従業員の場合、「なぜ自分が異動なのか」と強く感じるでしょう。
人事異動そのものをネガティブなものと捉えてしまい、離職につながってしまう可能性もあります。
人事異動に関する誤解が発生しないよう、明確な異動の理由を伝えるようにしましょう。
経営方針や現場の意見をヒアリングする
人事異動が、企業の経営方針に沿った異動であるかどうかを、経営層や人事部が重要視することが大切です。
また、現場の従業員や組織に対して、人事異動が適切かどうかを事前にヒアリングしておくことも重要です。
情報漏洩を防止するためのリスクと決まりを周知徹底する
人事異動の情報が事前に漏れると、まだ内示が済んでおらず、その影響を被る従業員からは「私の知らないところで勝手に決まっていたんだ」と、企業に対する不信感やメンバー間のわだかまりが生じる恐れがあります。
情報漏洩を防止するために、従業員に対してリスクの説明と、内示時期などの決まりを周知徹底することが重要です。
人事異動を行う前に知っておくべき法律
人事異動を行ううえで、法律に抵触しないかも重要なポイントです。
ここでは知っておくべき法律を4つ紹介します。
男女雇用機会均等法(男女差別の禁止)
男女雇用機会均等法 6条により、従業員の性別によって差別的な異動を行うことは禁止されています。
男性だから、女性だから、という理由で人事異動を決定することがないよう、細心の注意を払いましょう。
労働契約法(出向命令の濫用禁止)
労働契約法 14条には、出向に関する規定があります。
本当に出向させる必要性があるかどうか、その従業員でなければいけないのか、などを考慮したうえで、出向命令を行うようにしましょう。
育児・介護休業法(従業員の育児・介護の状況配慮)
育児・介護休業法の26条には、人員配置に関して、従業員の育児や介護に配慮することが規定されています。
特に、人事異動によって従業員を転勤させる場合、転勤によってプライベートに支障が生じることが分かった場合は、状況に合わせた配慮を行う必要があります。
公益通報者保護法(内部通報者に対するハラスメント防止)
第5条では、内部通報者に対する不利益な取り扱いを禁じています。
内部通報者に対して、人事異動による報復行為を行うことがないように注意することが必要です。
そもそも、人事異動は拒否できるの?
そもそも、人事異動は拒否できるのでしょうか。
本項目では人事異動の扱いについて解説します。
人事異動の拒否はできない
使用者による人事異動命令を、労働者は原則として拒否できません。
就業規則や雇用契約書に違反していない限り、企業は従業員の異動について決定権限があります。
人事異動が無効になる場合の条件
人事異動命令は原則として拒否できませんが、使用者による人事権の濫用にあたる場合や、異動が従業員に対し著しく不利益をあたえる場合には、命令を拒否できる可能性が高まります。
拒否された際の対応すべきこと
従業員から人事異動を拒否された場合はどのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは拒否された場合の対応手順を記載します。
1.なぜ拒否するのかを問う
まずはなぜ人事異動について拒むのか、真摯な姿勢でヒアリングします。
2.問い詰めるような言動はやめる
理由を尋ねても、なかなか真意が読み取りにくいケースも十分に考えられます。
過去のトラウマや家族のケア、本人の心身の状態など、深刻な理由が背景にあるときは率直に回答を得られるとは限りません。
問い詰めるような言動は控え、じっくりと聞き出すことが重要です。
3.異動の経緯をきちんと説明する
本人の考えをヒアリングしたら、企業にとってなぜ人事異動が必要なのか、丁寧に説明します。
また、本人のキャリア形成やスキルアップにつながることを示すなど、従業員が納得できる理由を伝えましょう。
4.待遇の改善などの対応を検討する
転居など、異動に伴う金銭的な負担がある場合は、待遇の改善を本人に伝えて、納得が得られないか試みましょう。
基本給の昇給や引っ越し費用の負担など、様々な対応が検討できます。
よりよい人事異動を行うならスキルナビ!
人事異動は、組織の活性化や従業員の成長を促す重要な施策ですが、人事異動の適切な判断には、スキルや経験、従業員データなどの可視化が欠かせません。
当社ではスキルマネジメントツールのスキルナビを提供しており、従業員が保有するスキルや従業員データを可視化することが可能です。
適切な人事異動を行い、企業成長を目指すためにスキルマネジメントツールの導入を検討されてはいかがでしょうか。