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レジリエンスとは?ビジネスに取り入れるメリットや高める方法を解説

レジリエンスとは?

「レジリエンス」を耳にしたり、実務で活用した経験はあるでしょうか? 

近年ビジネスに役立つとされて注目を集めている言葉ですが、具体的にどのような意味を持つ言葉なのか理解している人は少ないかもしれません。

レジリエンスを組織運営に取り入れると、さまざまなメリットが得られます。今回は、言葉の意味や使い方と、レジリエンスを高める具体的な方法を6つ紹介します。

レジリエンスの意味とは?

「レジリエンス(resilience)」とは、日本語では「回復力、復元力、耐久力、再起力、弾力」といった言葉に翻訳されます。複数の言葉で表現されるためわかりにくいですが、簡単にいうと「メンタル面の強さ(精神的回復力)」を意味する言葉として使われています。

本来は物理学分野で使われていた言葉なので、「弾力」という意味も含みます。物体が外部からの力で変形した際に、力を跳ね返す弾力によって元の形に戻ろうとする様子を指す言葉です。

これが転じて、心に傷を負った場合に回復する力を意味する言葉となっています。昨今は心理学領域でレジリエンスが使われるようになりました。具体的には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる人とそうならない人の違いを研究する際の指標として用いられた例があります。

研究によると、同じ過去のトラウマがある人でも、トラウマを乗り越え充実した人生を歩んでいるかはレジリエンスによるものとされているのです。

ビジネスにおけるレジリエンスとは?

ビジネスにおいてはどのような意味を持つのでしょうか。具体的に知っておくと、目的意識を持ってスムーズに取り入れられます。

レジリエンス向上は会社にとって大きなメリットとなるので、しっかり理解したうえでビジネスに取り入れると良いでしょう。

2つの観点からビジネス上の役割を解説します。

自分の心をマネジメントする

人事の仕事をしていると、「精神的な負担が大きい」「うつ病になった」といった話を耳にする機会があるのではないでしょうか。

従業員の心の健康を保つのは、企業の重要なミッションだといえます。

従業員のメンタルヘルスが不安定では、会社経営がままならず、業績悪化につながる可能性があるからです。また、昨今はSNS等で会社の口コミが拡散されやすい時代です。従業員への負担が大きすぎると評価されると、人材不足に陥る可能性があります。

そこで、従業員の心の健康を保つためにレジリエンス向上に取り組む必要があるのです。メンタルヘルス対策を実施して、会社にも従業員にも優しい組織づくりに努めましょう。

柔軟に対応する力

レジリエンスとは、「困難に直面してもそれを乗り越える力」を意味します。昨今、新型コロナウイルス感染症拡大や働き方改革、労働人口の減少、石油価格の高騰、SDGsの取り組みなど、企業はさまざまな課題を抱えています。

刻一刻と変化する社会情勢に柔軟に対応できなければ、企業の存続が難しくなっているといえるでしょう。企業が変わらずに成長し続けるためには、レジリエンスを向上して対応力を磨く必要があるのです。

レジリエンスには2つの因子がある

レジリエンスには、

  • 危険因子
  • 保護因子

の2つが作用します。

この2つの因子が相互に関わり合って決まるのが、個人のレジリエンスの高さです。

何がどの因子に当てはまるのかを確認して自分を深掘りしてみると、想定外の出来事が現在の自分に影響を与えていると気付くかもしれません。

具体的に解説します。

レジリエンス「危険因子」

ストレスの要因となる経験や物事、乗り越えなければならない壁を感じたときや、困難な状況などを「危険因子」と呼びます。

例えば、

  • 戦争
  • 自然災害
  • 疾患
  • 貧困
  • 両親や自身の離婚
  • 幼少期に受けた虐待

などが危険因子です。

この因子を克服したり、うまく付き合っていくことが、レジリエンス向上につながります。

危険因子は、特別なものではありません。離婚や虐待、いじめなど、現代社会で問題視されるようなトラブルは、トラウマとなり得る出来事です。誰もが少なからずトラウマや嫌な思い出を抱えているでしょう。

レジリエンス「保護因子」

「保護因子」とは、自身の精神を保護する要因だといえます。ストレスにさらされた際や、逆境に立ち向かう際、それを乗り越える力となるものです。

例えば、

  • 個々の性格
  • 個々の思考特性
  • 家族または友人等による支援
  • 学校や地域の支援
  • 個人が獲得した問題解決スキル

などが該当します。

保護因子が多いほど、レジリエンスは高まります。個人の内面特性だけでなく、周囲の支援も逆境を乗り越える力になるため、企業としてできる限りの支援を行うことが大切です。

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人の特徴は3つです。

感情をコントロールできる

感情とは、

  • 喜び
  • 怒り
  • 悲しみ
  • 楽しさ

などを指します。

「カッなるとつい声を荒らげてしまう」「不安なことがあると極端に悲観的になる」といった経験がある人は、感情のコントロールがうまくできていないかもしれません。

感情の起伏が激しいと、自分の感情に振り回される形となって精神的なストレスが増大します。

一方、レジリエンスが高い人は感情のコントロールが上手です。怒りを感じても冷静にあろうと努め、不安を感じたら解消する手段を探したりポジティブに捉えようと努めます。そのため、感情の起伏が小さく、自分が振り回されることが少なくなるのです。

仕事に対する恐れがない

従業員にとって怖いのは、失敗や未経験の仕事ではないでしょうか。責任の大きい仕事ほど、人はストレスを感じて精神的な負担を感じるものです。

例えば、

  • 成約金額の大きい仕事を任された
  • 新人の教育を初めて担当する
  • 数年かけたプロジェクトのプレゼンテーションに臨む

などの場面です。

これらのビジネスシーンでプレッシャーを感じない人は少ないでしょう。

プレッシャーをどのように乗り越えるかに、レジリエンスが関わっています。臨機応変に対応できる力が高ければ、プレッシャーを跳ね除けて仕事を成功に収められるはずです。

安定した生活習慣

レジリエンスを高い状態で保つには、安定した生活習慣が重要です。精神の安定は、日々の生活が安定することで得られるともいえるでしょう。

例えば、朝に太陽の光を浴びるとセロトニンという幸せホルモンが分泌されるのはよく知られています。セロトニンは、リラックス効果やストレス解消効果があるホルモンなので、心を健やかに保てるようになるでしょう。

不安定な生活習慣では、日光を浴びなかったり、十分な睡眠時間が確保できなかったりします。その結果、精神的に不安定になりレジリエンスが高まりにくい状況になってしまうのです。

企業がレジリエンスの向上を取り入れる効果

4つの効果を紹介します。

難易度の高い目標をクリアできる

レジリエンス向上に取り組むと、従業員一人ひとりが難易度の高い目標をクリアできる力を得ます。

組織運営においては、個人の力量や経験値に基づいた人事異動が欠かせません。役職に就いていない従業員を、チームリーダーや管理職に起用するケースもあるでしょう。

従業員にとって、初めて担当する業務はプレッシャーを感じやすいものです。このとき、レジリエンスが高いと、重圧を乗り越えて企業が期待する働きをしやすくなります。

従業員全員のレジリエンスが高まった結果、企業はより高いハードルを越える力を得られるのです。

ストレスに強くなる

昨今は、メンタルヘルスケアの企業での実施や、働き方改革による個人の事情に合わせた自由な働き方が推奨されています。

しかし、労働人口が減っている現代において、従業員一人当たりの業務量を減らすことや一人ひとり丁寧にヒアリングをするのは難しい企業が多いでしょう。業務過多や職場環境や人間関係の悩みを理由に、精神的ストレスが蓄積されやすいのが現状です。

レジリエンス向上に取り組むと、従業員のストレス耐性向上や適応力アップが期待できます。心のバランスを保ちやすくなって従業員の精神的負担が減るので、離職率低下といった効果も得られるでしょう。

変革の時代でも企業の価値を高められる

企業の価値は、企業が独自で決められません。企業の価値は、消費者や他社といった第三者が決めるものです。

社会がめまぐるしく変化する現代において、「何が起きても対応できる」という企業は高く評価されます。企業としてのレジリエンスが高いと、企業のブランド価値や事業価値が高まるでしょう。

また、投資家から資金援助を受けやすくなるのも大きなメリットです。高いレジリエンスは、社外へのアピールポイントとなります。

順応性が高くなる

逆境を乗り越える力を指すレジリエンスは、まさに今の時代に欠かせないものです。社会的背景や世界情勢によって変化する環境に、企業は柔軟に対応しなければなりません。

企業が変化する際にレジリエンスが低いままでは、大きすぎる課題に負けて成長が止まってしまう可能性があります。

困難を乗り越えて適応する力であるレジリエンスを高め、状況変化への順応性を高めておくことが大切です。

レジリエンスを高める6つの方法

「レジリエンス」を構成する6つの要素をご存じでしょうか。

それは、

  • 自己認識
  • 自制心
  • 精神的敏速(柔軟)性
  • 楽観性
  • 自己効力(肯定)感
  • つながり

の6つです。

これらの要素を組み合わせながら適切な対応を取るのがポイントです。それぞれの要素を活用した効果的な方法を6つ紹介します。

6つの方法で効果を最大化し、従業員にとっても企業にとっても働きやすく成長しやすい環境づくりに努めましょう。

①俯瞰的に自分を見つめ直す

「あなたの強みと弱みは何ですか」と聞かれたら、何となく答えられる人は多いかもしれません。では、「自分の思考の癖」や「人生の目標、10年後のあなたの姿」や「人生で最も大切な価値観」を聞かれたらどうでしょうか。

自分自身の感情や価値観を、客観的に把握できている人は多くありません。俯瞰的に自分を見つめ直すと、自己を正確に認識できるようになります。困難な出来事があっても、俯瞰的に自分がやるべきことを冷静に見極められるようになるでしょう。

②セルフコントロールの方法を持つ

感情の起伏が激しく、つい感情を表に出してしまう人は、レジリエンスが低い状態にあるといえます。感情が大きく動くこと自体がストレス因子となるため、自分自身をコントロールする必要があります。

自制心や自律心を持てる工夫をすると、感情が大きく動きそうな場面でも、自分の感情や行動を律することが可能です。

感情に左右されず、その時々に適した対応が取れるので、困難を乗り越える力が身につくでしょう。

③ポジティブ思考を心がける

何でも悪い方向に考える「ネガティブ思考」でいると、小さなプレッシャーですら重くのしかかり、精神的負担が大きくなります。失敗への不安や恐れが大きいと、目標を達成するための行動も尻込みして、なかなか達成に至らないという事態が起こり得ます。

レジリエンスを高めるには、ポジティブ思考を心がけることです。意識して物事を前向きに捉えるだけで、ストレス因子が「恐れる対象」から「成長の糧」に変わります。

ポジティブ思考を持つと、問題を解決する意欲やアイデアがあふれやすくなるので、問題解決が早まるのでおすすめです。

④物事の全体像を捉える

逆境を迎えたときに大切なのは、物事の全体像を捉えたうえで冷静に対処することです。有事の際は、精神的敏速性を備えて、物事を多面的かつ広い視野で確認するようにしましょう。

ビジネスシーンにおいては、感情的な発言や行動をできるだけ避ける方が信頼を得やすいはずです。何か起きたら、その原因と解決方法を理論立てて考えることが、問題解決への近道です。

⑤自己肯定感を高める

大きなプレッシャーを感じたとき、「自分ならできる」という意味を込めて手のひらに「人」という文字を書いた経験はありますか?

「自分ならできる」という自己肯定感や自己効力感は、困難を乗り越えるためにとても重要な要素です。

自分に自信がない状態では「これでいいのだろうか」と不安が先立ち、行動に遅れが生じます。対応が後手に回り、問題解決までに要する時間が長くなる可能性があります。

諦めずに困難に立ち向かう姿勢を保つためにも、自分への信頼を持てるよう工夫してみましょう。

⑥強い信頼関係を築く

人が本来の能力を発揮するためには、人と人とのつながりが重要になります。

例えば、

  • 家族
  • 友人
  • 職場の同僚
  • 職場の上司
  • 採用時に知り合った人事担当者

など、人同士の関係性はさまざまです。

多種多様な関係性の中から、強い信頼関係を築ける相手を見つけると、レジリエンス向上が期待できます。なぜなら、誰かとの絆は「保護因子」となり、逆境を乗り越える力を与えてくれるからです。

レジリエンスを取り入れてみましょう

レジリエンスがビジネスシーンでも活用され始めている背景には、常に変動する社会情勢や働き方の変化があります。

企業が取り入れると、さまざまなメリットを得られます。企業だけでなく従業員にとってもメリットが大きいので、積極的に取り入れることをおすすめします。

企業が成長を続けるためには、従業員のレジリエンス向上を目指すと効果的です。その重要性を理解し、従業員が無理なく働ける職場環境づくりに努めましょう。