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タスクフォースを組む目的は?導入メリットや具体的に活動を進めるステップも解説

重要度が高く、急を要する業務が発生した場合、タスクフォースが組まれる場合があります。近年報道番組でも、タスクフォースの言葉が使われるシーンも増えました。とはいえ、本来どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。そこで今回はタスクフォースの意味とメリット・デメリットを中心に解説します。

タスクフォースとは?

タスクフォースとは緊急かつ重要度の高い業務が発生した場合に組まれる、一時的なグループです。課題や問題解決に向け、状況に応じて最もふさわしい人材を招集していきます。あくまで短期間であるのがポイントであり、解決次第グループは解散するのが特徴。招集された人材はもとの業務に戻ります。

近年では新型コロナウイルス発生時に組まれたタスクフォースが有名かもしれません。海外からワクチンを輸入し、全国民へ接種を推進するために結成されたグループです。関係する学会・経済団体・国や地方の行政機関のメンバーで急遽組まれ、接種率の高まりと同時に解散しました。

世界情勢の変化はかんたんには予測できません。そのため今後も政府の機関に限らず、一般企業でもタスクフォースが組まれるシーンは見受けられるでしょう。

タスクフォースの英語の意味

タスクフォースは英語で機動部隊や特殊部隊と訳し「task force」と書きます。taskは業務を意味する単語、forceは軍隊であるため、業務を完遂するための部隊。

タスクフォースは元来アメリカの戦闘用語として使われていました。例えば太平洋戦争時、ハワイのアメリカ海軍に「タスクフォース11(戦艦部隊)」「タスクフォース16(空母部隊)」と名付け、緊急部隊を結成したのです。

この手法は開戦以降の作戦でも重宝され、アメリカ常勝軍の象徴とも言えます。時代が進むと、軍事シチュエーション以外でも使用されはじめました。ビジネスや政治などのシーンでも使われ、最終的にはアメリカ以外の国でも利用されたのです。

タスクフォースの目的

タスクフォースの目的は、緊急性の高い業務に迅速に対応するためです。企業の業務は4つに分類されます。1つ目は緊急かつ重要な業務、2つ目は緊急であるものの重要でない業務、3つ目は重要であるものの時間をかけても良い業務、最後は重要度も緊急性も低い業務です。

この中でタスクフォースが組まれるのは1つ目、場合によっては2つ目も該当する場合があります。いずれにしても緊急性の高いタスクが発生した場合、緊急部隊が組まれるのです。いち早く業務を完遂するためにはグループの結成が不可欠であり、一致団結して取り組むからこそスピーディーに対応できます。

タスクフォースの類義語と違い

タスクフォースの類義語と違いについて解説します。

タスクフォースとプロジェクトチームの違い

タスクフォースと似た単語にプロジェクトチームがあります。どちらも課題解決にふさわしいメンバーから結成され、業務を遂行するグループです。大きな違いは緊急性が高いかどうか。タスクフォースは非常事態の際につくられる組織です。

一方、プロジェクトチームは緊急性を度外視し、中長期的な視点で業務に取り組みます。長いスパンで検証と分析を繰り返し、最良の結果を求めていくのです。一般的にはプロジェクトマネージャーとプロジェクトメンバーから構成されるのも事実。

プロジェクトマネージャーが目標や計画を立て、そのプランにあわせてチームメンバーが業務に取り組んでいきます。このあたりの役割もタスクフォースと変わらないため、近年では両者を明確に分けない企業も多いです。

ワーキンググループ、ワーキングチームの違い

ワーキンググループとタスクフォースはほぼ同じ言葉として使われます。ある業務が発生した際、課題解決のためにつくられるチームです。しかし、場合によっては使い分けをする企業や官公庁もあります。

使い分けの基準の1つ目は規模です。より大きな問題や業務がうまれた場合をワーキンググループと呼び、ごく少数の人数でまかなえるケースではタスクフォースと呼んでいるのも事実。

2つ目は位置付けです。ワーキンググループの大きな組織の中に、細分化されたタスクフォースがあります。両者を別で考えるのではなく、一グループとして捉えるケースです。このように使い分けを行うケースがあるのは念頭に置いておきましょう。

タスクフォースとクロスファンクショナルチームの違い

クロスファンクショナルチームもタスクフォースと間違われやすい言葉です。大きな違いは規模。クロスファンクショナルは直訳すると「組織をまたぐ機能的なチーム」となります。そのため、招集されるメンバーは全社に及び、場合によっては社外からも呼び寄せるケースも。

一般的に限られた部門から招集するタスクフォースとは規模が違うと分かるでしょう。取り組む課題の難易度は高く、緊急性を要する案件が多いと言えます。

タスクフォースのメリット

タスクフォースのメリットについて解説します。

課題解決にリソースを集中できる

タスクフォースの大きなメリットは課題解決にリソースを集中できる点です。人・時間・情報を集約させるため、より効率的に業務へ取り組めます。いわゆる短期集中型のチームであり、緊急性や重要度の高い課題へ取り掛かるには最適です。

また、タスクフォースを結成する際は目標が明確なため、一人一人のモチベーションも上がりやすいでしょう。集中して対応しやすくなるため、結果的に質の高い仕事ができます。

解決に適したメンバーを社内外問わず集められる

タスクフォースであれば、垣根を越えてメンバーを集められます。能力・経歴・資格有無などで選別し、場合によっては社外からも招集できるのが特徴。これもタスクフォースの目的が明確になっているからです。

目標や計画があらかじめ定められているため、プランに沿った人材確保が可能。「どのような人材を揃え、解決に向けてどんな行動を取るか?」を想定しやすいのです。結果、より短期間で業務が完了します。

新たな課題を解決できる

タスクフォースによって招集されたメンバーは多種多様です。部署も違えば、年齢や性別が異なるケースも多いでしょう。普段ふれあいの少ない人同士でコミュニケーションを取ると、新たな意見やアイディアがうまれやすいです。

相乗効果により、一人では到底思いつかない考えが出てくるかもしれません。結果的に解決の糸口が見つかりやすくなります。

タスクフォースのデメリット

タスクフォースのデメリットについて解説します。

対立しやすい

日頃一緒に仕事をしないメンバー同士が集結するのはメリットでもあり、デメリットでもあります。お互い仕事のやり方が違うだけでなく、課題解決に対する考え方も異なるでしょう。いつも一緒に仕事をしていればあうんの呼吸で仕事できるものの、何も知らない同士ではそうもいきません。

結果的に対立がうまれたり、話し合いがスムーズにいかなかったりする場面もあります。時間は限られていますが、短期間でお互いの信頼関係を深める努力も必要です。

評価へ影響がある

タスクフォースを取り入れると、少なからず評価への影響がうまれます。例えば評価者の知らない場所でタスクフォースを組んだ例で解説しましょう。招集されたメンバーは本業を離れてタスクフォースの活動に参加します。

となれば、本業が疎かになるのは言うまでもありません。評価者はタスクフォースの存在を知るはずもなく、今まで通り本業の頑張りを見て判断します。結果的に手が回らなかった本業の評価は下がってしまうのです。タスクフォースを取り入れる場合は評価者への共有が必要になります。

ノウハウの蓄積が難しい

タスクフォースは一時的なチームであるため、ノウハウの蓄積がむずかしいです。「学んだ知識を次のプロジェクトへ活かす」「実績を本来の業務で発揮する」などは現実的ではありません。学習した知識や得たスキルは、あくまでその場限りであるのは念頭に置いておきましょう。

そのため、獲得した知識や情報は共有する流れをつくるのがポイントです。ITツールを導入して管理する方法もおすすめと言えます。

サポートが不足しやすい

タスクフォースはあくまで限定的なチームであるため、サポート体制が弱くなりがちです。経営陣や管理職が介入しないグループであると、トラブルやエラーが起きた際に正しい対応は取れません。

さらにトップ層が加わらなければ人事考課の不安につながります。タスクフォースでの活動がトップ層から見えないため、適切な評価を下せないのです。そのため、経営陣や管理職と業務報告・情報共有を欠かさないのがポイントと言えるでしょう。

目標や課題が共有しにくい

タスクフォースでは様々なメンバーが集まるため、一人一人考え方や行動が異なります。目標や課題を共有しにくく、それぞれが別の方向へ進んでしまうケースもあるのです。

そのため、グループの目標や方針はあらかじめ共有・明確化していきましょう。例えばタスクフォース結成時にミーティングや簡易的なチームビルディングを行うのがおすすめです。

チームの目標を共有できるだけでなく、お互いの考え方の傾向を知れます。結果、チームワークの強化につながるのです。

タスクフォースに必要なもの

タスクフォースに必要なものを解説します。

課題と解決までのスケジューリング

まずはタスクフォースを結成する前に課題を明確化していきましょう。問題を見直してみると、タスクフォースを組む必要性が無いケースもあります。時間をかけて問題ない場合や本来の業務と並行して行えるケースです。

その場合はタスクフォースを結成しても無駄になるため、あらかじめ確認しましょう。それでも緊急かつ重要な案件の場合「結成していつまでに解決させるか?」「どのようなステップでゴールさせるか?」などのはっきりとしたスケジューリングが必要となります。

適切な権限と人材

たとえタスクフォースが結成されても、チーム自体に権限がなければ機能しません。始動すると他の機関や部署と連携する場面も多々見受けられます。そのチームに適切な権限がないと、力になってもらえる可能性は低いでしょう。

そのためにも、人材の選定方法は重要です。リーダーシップが取れる人材がチームにいれば、自然と影響力は強くなります。結果、周囲と連携して業務をこなせます。また、リーダーを支える参謀もタスクフォースでは必要不可欠。このように全体のバランスを見て結成するのが望ましいです。

実行とモニタリング

適切な権限と人材が揃ったら実行に移します。その際に重要なのはモニタリングです。タスクフォースは会社の重要な問題を完遂するチーム。他の企業から注目されるだけでなく、場合によっては社会から意識される瞬間もあるでしょう。

そのため、行動や態度は常に見られている意識を持たなくてはいけません。「外部に向けての発信はどれほどの影響があるか?」「決断するタイミングは社会全体を見ても適切か?」などを常に気にする必要があります。そのためにも、社内外のコミュニケーションが大切です。

振り返りと情報共有

一般的にタスクフォースはその場限りで終了し、同じメンバーが再度集結するケースはほぼありません。とはいえ振り返りと情報共有は行っておきましょう。

なぜなら、タスクを遂行する上で発生した課題は、新たなタスクフォースで活かされる場面も出てくるからです。メンバーは違っても、同じ分野で似た課題のタスクフォースが組まれる場面も。万が一招集されても前回の情報を共有しておけば、スキルや経験を活かせます。

タスクフォースの事例

タスクフォースの事例について解説します。

内閣府

平成29年1月、内閣府では2030年の展望と改革のテーマでタスクフォースが組まれました。2030年までに起こるであろう問題に対し、取り組むべき改革を示すために結成されたのです。

具体的には人口減少・高齢化への対策やインフラ・家屋の老朽化における対応について議論されました。男性の育児休暇取得推進案や都市のコンパクト化やスマートインフラなどが提唱されたのです。

日本マクドナルド

日本マクドナルドでは「お客様対応プロセス・タスクフォース」が設置されました。活動内容は主に2点。

1点目は危機管理対応の強化です。日本マクドナルドは2015年に異物混入の報道がありました。その際、会社側の対応不備が原因で信頼を落としてしまったのも事実。そのためお客様対応の向上はもちろん、品質管理の基準を再確認したのです。

2点目はお問い合わせプロセスの見直しです。莫大な社内情報の一元化を目指し、データベースを刷新。その中には異物混入時の緊急通報システムの見直しも含まれました。

味の素SVC

味の素ではASV経営を取り入れています。ASVとは「Ajinomoto Group Creating Shared Value」の略語です。利益を確保するだけでなく、社会・経済価値を創造する取り組みを行っています。社内では複数のタスクフォースが組まれ、中でも「全社オペレーション変革タスクフォース」は味の素を代表するタスクフォースです。

社員一人一人のASVを向上させるために作られたチームであり、最終的には企業文化変革を目的としています。その成果もありASVは他企業でも認知され、味の素は業界問わず模範とされる企業へと成長しました。

ウェルクス

株式会社ウェルクスは保育・介護人材紹介企業です。ウェルクスの目標は「お客様だけでなく、従業員にも愛される会社」を掲げています。そのためPS(パートナー・サティスファクション)向上に特化したタスクフォースを結成中。PSは直訳すると従業員の満足度です。

ゆえにプライベートを大切にしながら働く方法を考えたり、従業員同士の仲を深めて働ける環境づくりを目指したり。従業員満足度を高めるためのタスクフォースがうまれました。結果、ウェルクスは職場見学やピクニックなど、家族で楽しめるイベントを定期的に開催しています。

タスクフォースの活動を進める流れ、ステップ

タスクフォースの活動を進める流れを解説します。

タスクフォースを編成する

タスクフォースを編成するにあたっては3つのステップで進めていきます。1点目はメンバー選定です。タスクフォースにおいて最も重要な段階と言えるでしょう。解決すべき課題に対し、最適な人材を選定していきます。

性格・スキル・経歴などを考慮し、バランス良く選定しましょう。選定の際はまず核となる人物から抜擢するのがポイント。リーダーになる人物を選定し、その周りから固めていきましょう。

2点目は課題とスケジュールの共有化。課題をあらためて洗い出し、ゴールに向けて細かくスケジューリングしていきます。スケジュールにはある程度の余裕を持ち、確実に達成できるスパンで行うのが重要です。

最後は方向性の決定。タスクフォースには様々な人が存在するため、あらためて目標の方向性を決めていきましょう。

タスクフォースで活動する

実際に活動する際は4つのステップで進めていきます。まずはじめはチームワークの確立です。普段一緒に仕事をしないメンバーが集結するため、お互いの価値観や考え方を共有していきましょう。ミーティングで全員が話す機会を設けたり、チームビルディングでコミュニケーション強化を図ったりするのがおすすめです。

2点目はモニタリングです。タスクフォースの活動は企業や社会から注目されます。第三者の視点から客観的に捉え、課題を常に見える化させておきましょう。

3点目は振り返りです。実際に行動へ移したら「何が原因でうまくいかなかったのか?」「次はどうしたらスムーズにいくか?」などを見つめ直していきます。振り返った点をもとに教育や研修へ活かすのもポイントです。

最後はノウハウの共有。タスクフォース内にとどまらず、社内に情報共有していきましょう。ノウハウが蓄積されれば、次回タスクフォースが組まれた際、質の高い結果が得られるはずです。

緊急性の高いものはタスクフォースを組んでみましょう

タスクフォースとは緊急かつ重要度の高い業務が発生した際、課題解決に向けて一時的に組まれるグループです。人・情報・時間などのリソースを集約し、課題をスピーディーに解決できるのが大きなメリット。

他にも社外からメンバーを集められるため、より適した人材を抜擢しやすい利点も。タスクフォースを導入する際はメンバー選定→スケジューリング→実行→振り返りの順で進めていきましょう。

日本マクドナルドや味の素SVCといった日本を代表する企業も取り入れているため、ぜひこの機会に導入を検討してみてください。