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労働安全衛生法とは?押さえるべき内容とストレスチェック制度について解説

会社は従業員が安全かつ快適に働ける環境の確立が求められています。そこで重要になるのが労働安全衛生法です。

当法律には働くための決まりがあり、企業は必ず守らなくてはいけません。ではどのような中身なのでしょうか。今回は労働安全衛生法で押さえるべき内容と改定後のポイントについて解説していきます。

労働安全衛生法(安衛法)とは

労働安全衛生法とは社員の安全と健康を確保するために定められた法律です。中身は従業員がストレスを感じず、快適に働くための決まりが記されています。

時代の変化によって内容も変更されており、働き方改革や新型コロナウイルスと関わる内容も記載済み。安衛法は社員が心地良く働くために、なくてはならない法律なのです。

そもそも労働者とは

労働安全衛生法では労働者の定義について書かれています。要約すると「事業者が労働の報酬を支払う対象の人物」です。しかし「同居親族のみで事業を行う場合は労働者ではない」とも明記しています。

給料が支払われる者を労働者と言い、親族のみの会社経営は除外するという意味です。本文中にある「事業者」については次から見ていきましょう。

対象となる事業者

労働者の対象となる事業者について書かれており、要約すると「事業を起こしており、労働者を雇っている者」です。会社運営を行うすべての企業に該当すると言っても良いでしょう。

また、社員の人数によって労働安全衛生法で義務付けられる内容が異なります。後述していきますので、あわせて確認していきましょう。

労働安全衛生法が成立した背景

労働安全衛生に関する法規制は、以前から存在していましたが、労働災害のおこりやすい業種に特化して定められていました。

1947年に労働基準法が制定されてから、業種などを問わず広く、労働安全衛生に関する法規制が定められるようになりました。しかし、高度掲載成長期に労働災害が急増したことによって、労働者の安全や健康を確保しなければならないという意識が高まりました。

そこで、労働基準法の内容から、安全衛生について特化させ、独立した法案が1972年に労働安全性法として作成されました。

労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則とは

労働安全衛生法と密接な関係がある労働安全衛生法施行令と労働安全衛生規則について解説していきます。前提として安衛法の下に双方があると認識しておきましょう。

「施行令」は法律を詳しく明記したもの、「規則」は施行令をさらに細かくルール決めしたものです。記載内容は異なるもののすべてつながっており、根本は同じであると念頭に置いておきましょう。

労働安全衛生法が適用されないケース

労働安全衛生法で適用されないのは親族のみの会社経営だけではありません。他にも船員は対象外と明記されています。また、国会議員・裁判所職員・鉱員なども安衛法が適用されません(一部は対象とされる)。

とはいえ、ほとんどのケースで適用されるため、労働者に該当すると自覚しておいたほうが無難でしょう。

労働安全衛生法と労働基準法の関係

労働安全衛生法と労働基準法は混同されがちですが、中身はまったく異なります。もともとは双方の法律は一緒だったものの、昭和47年に安衛法へと分かれました。労働災害の多発により労働環境を整える必要が出てきたため、法律を分けて安全面に特化したものを制定したのです。

そのため、安衛法は社員の安全性を守る法律、労働基準法はそれ以外の労働に関する法律と覚えておきましょう。

労働安全衛生法の全体像

労働安全衛生法は、以下の全12章から成り立っています。

第1章 総則
第2章 労働災害防止計画
第3章 安全衛生管理体制
第4章 労働者の危険または健康障害を防止するための措置
第5章 機械等ならびに危険物および有害物に関する規制
第6章 労働者の就業に当たっての措置
第7章 健康の保持増進のための措置
第7章の2 快適な職場環境の形成のための措置
第8章 免許等
第9章 事業場の安全または衛生に関する改善措置
第10章 監督等
第11章 雑則
第12章 罰則

事業者が注意するべき規定①:総則

「第1章 総則」では、労働安全衛生法全体に通じる基本的な事項が定められています。

事業者には、ただ労働安全性法で定められた基準を最低限守るだけではなく、快適な職場環境の用意や労働条件の改善など、労働者の安全と健康を確保することが求められています。

また、事業者は国が実施している労働災害の防止に関する施策に協力する必要があります。※(法3条1項)

事業者が注意するべき規定②:安全衛生管理体制

「第3章 安全衛生管理体制」では、事業所において安全衛生の確保をするための体制を明確にする必要があるとしています。責任体制を明確にするために管理者を定めることはもちろんのこと、委員会を定めることを義務付けています。

管理者等の種類選任を要する事業者・事業場・作業
統括安全衛生管理者(法10条)原則として常時1,000人以上の労働者を雇用する事業場
※林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業は100人以上
※製造業等は300人以上
安全管理者(法11条)林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業・製造業等を営む、常時50人以上の労働者を雇用する事業場
衛生管理者(法12条)常時50人以上の労働者を雇用する事業場
安全衛生推進者(または衛生推進者、法12条の2)常時10人以上50人未満の労働者を雇用する事業場
産業医(法13条)常時50人以上の労働者を雇用する事業場
作業主任者(法14条)高圧室内作業など、労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるもの
統括安全衛生責任者(法15条)建設業・造船業を営む、仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者
元方安全衛生管理者(法15条の2)建設業を営む、統括安全衛生責任者を選任した事業者
店社安全衛生管理者(法15条の3)建設業の元方事業者
安全衛生責任者(法16条)統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うもの

また、一部の事業者には以下の各委員会の設置が義務付けられています。

委員会の種類 設置を要する事業者・事業場
安全委員会(法17条)林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業・製造業等を営む事業者
※50人以上または100人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置
衛生委員会(法18条)常時50人以上の労働者を雇用する事業場
安全衛生委員会(法19条)安全委員会または衛生委員会に代えて設置可能

事業者が注意するべき規定③:危険・健康障害の防止措置

「第4章 労働者の危険または健康障害を防止するための措置」では、事業者に対して、労働者の危険や健康障害の防止をするために以下の事項を義務付けています。

  1. 危険防止措置(法20条)
    • 機械、器具その他の設備による危険
    • 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
    • 電気、熱その他のエネルギーによる危険
  2. 健康障害防止措置(法22条)
    • 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
    • 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
    • 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
    • 排気、排液または残さい物による健康障害

事業者が注意するべき規定④:機械等・危険物・有害物の規制

「第5章 機械等ならびに危険物および有害物に関する規制」では、機械等・危険物・有害物の取り扱いに関する規制が定められています。

機械等に関する規制

以下の内容に該当する機械については、「特定機械等」となり、製造の許可制や製造時の検査義務などの規制が適用されます。(法37条~42条)

  • ボイラー(小型ボイラー、船舶に用いられるもの、電気事業法の適用を受けるものを除く)
  • 第一種圧力容器(小型圧力容器、船舶に用いられるもの、電気事業法等の適用を受けるものを除く)
  • つり上げ荷重が3トン以上(スタッカー式クレーンの場合は1トン以上)のクレーン
  • つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン
  • つり上げ荷重が2トン以上のデリック
  • 積載荷重が1トン以上のエレベーター
  • ガイドレールの高さが18メートル以上の建設用リフト(積載荷重が0.25トン未満のものを除く)
  • ゴンドラ

特定機械等に該当しない機械のうち、一部は危険防止や健康障害の防止の観点から、設置するのに規格・安全装置の具備が義務付けられているものがあります。(法42条)

また、ボイラーなどについても事故の危険があるため、定期的に検査を行い、記録を残すことが義務付けられています。(法45条)

危険物・有害物に関しての規制

労働者の重度の健康被害をもたらす可能性のある特定の製品については、その製造が禁止されるか許可が必要とされています。(法55条、56条)

また、爆発性や発火性など、労働者に危険をもたらす可能性のある物質や健康被害を引き起こす可能性のある製品には、その容器や包装に特定の情報を表示することが求められています。(法57条)

事業者が注意するべき規定⑤:労働者の就業に当たっての措置

第6章「労働者の就業に当たっての措置」では、労働者を雇う事業者が採るべき措置が定められています。

労働者を雇う際には、その業務に関する安全や衛生についての教育を行うことが義務づけられています。(法59条1項)また、建設業や製造業などでは、労働者を直接指導・監督する人にも安全や衛生に関する教育が必要です。(法60条)

なお、特定の危険な業務、例えばクレーンの運転などでは、特定の免許や技能講習を終了していることが、その仕事に就くための条件とされています。(法61条)

事業者が注意するべき規定⑥:健康保持増進措置

「第7章 健康の保持増進のための措置」では、労働者の健康を保持・増進するための措置として、健康診断やストレスチェックの実施などを定めています。

健康診断

事業者は、労働者全体に対して一般的な健康診断(法66条1項)を提供する必要があります。

さらに、特定の有害な業務に従事する労働者や過去にその業務に従事した経験のある労働者には、医師による特別な項目の健康診断(法66条2項)を行うことが義務付けられています。

ストレスチェック

事業者は、労働者に対して、医師・保健師などによる心理的な負担の程度を把握するための検査(=ストレスチェック)を行わなければなりません。(法66条の10第1項)

事業者は、労働者にストレスチェック(心理的負荷の検査)を提供し、その結果は労働者へ直接通知されます。医師や保健師は労働者の同意なしに結果を事業者に提供できません。(同条2項)

労働者は希望すれば医師との面接指導を受けられ、その結果を基に事業者は必要な措置を医師の意見を参考にして講じる必要があります。(同条3項~6項)

事業者が注意するべき規定⑦:快適な職場環境の形成のための措置

第7章の2「快適な職場環境の形成のための措置」では、事業者に職場環境を改善するよう求められています。事業者は、安全衛生水準の向上を目指し、計画的で継続的な措置を講じ、快適な職場環境を作り出すことが法的に定められています。(法71条の2)

  1. 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
  2. 労働者の従事する作業の方法を改善するための措置
  3. 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設・設備の設置・整備
  4. 1~3のほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

厚生労働大臣は、上記の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針を公表しています。(法71条の3第1項)

参考

厚生労働省ウェブサイト「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」

事業者が注意するべき規定⑧:労働基準監督署などによる監督

労働基準監督官は、労働安全衛生法の施行に必要と認めるときは、事業場へ立ち入って検査・作業環境測定・製品等の収去を行うことが可能となっています。(法91条1項)

労働安全衛生法に違反がある場合、都道府県労働局長や労働基準監督署長は作業停止や建設物の使用停止を命じることができます。(法98条1項)

また、急を要する場合で事実が明確でなくても、労働災害の危険がある場合は緊急措置としてこれらの命令を出せます。(法99条1項)

なお、労働者は違反がある場合、都道府県労働局長や労働基準監督署長、または労働基準監督官に申告して是正を求めることができます。(法97条1項)

事業者が注意するべき規定⑨:雑則

事業者は、労働安全衛生法・労働安全衛生施行令・労働安全衛生規則の要旨を、以下のいずれかの方法で、労働者に周知させなければいけない決まりになっています。(法101条)

  1. 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
  2. 書面を労働者に交付すること
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

また、事業者は労働安全衛生法等に基づき作成した書類を保存する義務を負います。(法103条1項)

事業者が注意するべき規定⑩:罰則

労働安全衛生法に違反する行為の一部は、罰則の対象とされています。

主な違反行為罰則(法定刑)
・特別の安全衛生教育の不実施(法59条3項)
・健康診断等に関する秘密漏えい(法104条)
6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(法119条)
※法人にも50万円以下の罰金(法122条)
・衛生管理者の不選任(法12条1項)
・産業医の不選任(法13条1項)
・衛生委員会の不設置(法18条1項)
・労働災害防止措置の不実施(法30条の2第1項)
・安全衛生教育の不実施(法59条1項)
・健康診断の不実施(法66条)
・書類保存義務違反(法103条)
50万円以下の罰金(法120条)
※法人にも50万円以下の罰金(法122条)

労働安全衛生法に違反した場合

労働安全衛生法に違反した場合は懲役または罰金が科せられます。最大3年以下の懲役または300万円以下の罰則対象となるのです。

尚、罰則は両罰規定となっており、罰を受ける労働者だけでなく、事業者も対象となります。連帯責任となるため、ルールは会社全体で守っていかなければいけません。

罰則となる主なケース

罰則の対象となるケースは様々ですが、いくつか例をあげていきましょう。

例えば、前述した最も重い罰則の場合「許可を得ずに労働者の健康を害するものを製造・使用・譲渡すると罰則の対象」とあります。許可を受けずに危険物に関わってはいけないと要約可能です。

他にも「労働者雇用時に安全衛生教育を行っていない場合は罰則の対象」があり、場面や状況別に決められています。

労働安全衛生法に違反した過去の事例

ここからは安衛法に違反した過去の事例を見ていきましょう。まずは平成27年に起きた「急傾斜地における草刈作業現場での災害事故」です。崩落防止用の上部部分での作業にあたり、安全帯を使用させず防止措置を取ることなく作業を行わせていました。結果的に当事例は死亡事故へとつながっています。

続いては同じく平成27年に起きた「伐木現場における災害事故」です。現場責任者の確認不足により、立木の伐倒に伴い作業員へ直撃。結果的に当事例でも死亡事故へとつながっています。

【企業・事業者】労働安全衛生法で押さえるべき内容

労働安全衛生法で押さえるべき内容を解説します。

配置するスタッフ

安衛法には企業経営において配置すべきスタッフが明記されています。

具体的には安全管理者・衛生管理者・作業主任者など。例えば50人以上の従業員がいる場合は衛生管理者と産業医を配置しなければいけません。

また、10人以上50人未満の職場では安全衛生推進者の配置が必要です。このように従業員数によって配置スタッフが変わるため、事前に確認しておきましょう。

労働者への安全衛生教育

労働者に対する安全衛生教育の実施義務についても書かれています。行うタイミングは従業員雇用時と作業内容変更時です。正社員に限らず派遣社員・パート・アルバイトにも義務付けられています。

具体的な内容は働く上での安全確保や業務スキルを上げるための座学です。場合によっては長丁場の教育となる場合もあるため、ポイントを押さえて学んでいきましょう。

労働者の健康保持のための措置

安衛法には労働者の健康保持のための措置について明記されています。具体的には年1回健康診断を実施する義務があります。

また、直近では50人以上の職場では後述するストレスチェックも義務付けられているのです。社員の健康を保持し、快適に働くための措置と言えるでしょう。

健康被害や危険から守るための労働災害防止の措置

社員の健康保持だけでなく健康被害や危険から守るための労働災害防止措置についても書かれています。

例えば「高所作業時における安全帯の着用義務」「荷物の引き上げ・組立作業時のヘルメット着用義務」など、場面によってルールが決められています。

他にも脚立や足場の状態確認義務のような細かい点まで記載されているため、事前にチェックしておきましょう。

危険を伴う場合の届出

危険を伴う作業を行う場合は届出が必要なケースもあります。具体的には「危険な作業を伴う機械の設置」「危険な場所で使用するもの」などが発生する場合は労働基準監督への届出が必要です。

具体的な詳細や申請書式は厚生労働省のホームページに掲載されているため、該当する場合は確認しておきましょう。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは日頃起こるであろう災害事故を事前に予測し、あらかじめ対策を立てる手法です。当手法の義務付けについても安衛法では明記されています。

また、災害事故への対策が立てられたら周知するのもポイントです。情報共有を徹底することで事故を防げます。

危険な業務に対する就業制限

安衛法には危険な業務に対する就業制限についても書かれています。具体的にはクレーン運転や高所作業などを伴う場合は資格が不可欠。

必要資格については労働安全施行令や規則などで決められており、無資格による就業で罰則の対象とならないためにも、事前に確認していきましょう。

危険物・有害物の取扱・表示義務

危険有害物質を取り扱う場合は容器の外側に記載することが義務付けられています。危険物は発火・爆発性など、有害物は化学物質のように健康状態が悪化するものです。

また、具体的な記載内容は名称・危害を及ぼす作用・取り扱い上の注意など。損害を与えるおそれのある物品を扱う場合は適切な手順を踏んでいきましょう。

定期自主検査

定期自主検査では事業者がボイラー・クレーン・ゴンドラなどを一定期間ごとに検査する必要があります。

各項目によって検査を行い、機能を維持しているか確認していきます。結果の記録は最低3年間保管する必要があり、あらかじめ保管体制を整えておく必要があるのです。

また、機械によっては検査資格が必要な場合や専門業者による検査が不可欠なケースもあります。

安全衛生委員会(安全委員会・衛生委員会)の設置

安衛法では委員会の設置が課せられています。目的は過重労働や健康障害などの対策について話し合いの場を設けるためです。

安全衛生委員会は安全委員会と衛生委員会の役割を兼ねており、労働者への周知の徹底や議事録の3年間保管が義務付けられています。また、毎月1回以上執り行う必要があり、参加者へ周知していきましょう。

快適な職場環境の形成

従業員が快適に働くための環境づくりが義務付けられています。具体的には騒音や振動の防止・休憩部屋の設置・清掃の実施など、心地良い環境をつくるためのルールが書かれているのです。

また、トイレに関しても従業員数によって設置が必要な便器の数が決まっているため、事前に確認しておきましょう。

労働安全衛生法で健康診断が義務化

前述の通り、安衛法では健康診断が義務化されています。そのため、労働者はこれから解説する健康診断を受けなければいけません。

受けていない事実が発覚した場合、50万円以下の罰金が科せられます。会社全体の連帯責任となるため必ず受診しましょう。

雇入時の健康診断

まずは雇入時に診断を実施します。診断項目は身長や体重の検査・血圧測定・心電図検査など、一般的な診断を行っていきます。

また「雇入時の診断を受けなくても、他の病院で診断した結果を証明できれば良い」とも明記済み。入社前に各自で診断を受けてもかまいません。しかし「入社3か月前後の記録」とあるため、あまりにも古い診断記録は無効となります。

定期健康診断

定期診断は雇入時とは別に1年に1回行う診断です。すべての労働者が対象となるため、必ず受診しましょう。診断項目は雇入時と同じく尿検査・血液検査・自覚症状の有無など、一般的なものです。

また、年齢に応じて省略できる診断項目もあるため、事前に確認しておきましょう。基本的には年齢が低いほど診断項目が少ないです。

特定業務従事者の健康診断

最後に紹介するのは特定業務従事者の健康診断です。特定業務従事者とは放射線にさらされた業務を行う方や深夜業務を課せられている方になります。危険と隣り合わせで働いている社員や心身的ストレスがかかる従業員が対象です。

検査項目は前述した2つの診断と同じですが、半年に一度受診する必要があります。頻繁に受ける必要があるため、事業者による情報共有が重要です。

2015年より義務化されたストレスチェック制度

ストレスチェック制度について解説します。

ストレスチェック制度に関わる人・役割

ストレスチェックの対象者は「正社員及び1年以上の勤務または1年以上の雇用が予定されている非正規社員」とされています。そのため、ほぼすべての従業員が当制度の対象となるのです。

実施者は医師・保健師・看護師が該当。制度の作成は衛生管理者や心理カウンセラーなどが行っていきます。

フロー1:事業者・担当者による事前準備

まずは事業者と担当者による事前準備を行っていきましょう。事業者は社内でストレスチェックを実施する旨を共有し、目的も随時示していきます。

なぜなら、今回の受診が初めての方もいるからです。基本的な方針が決まったら、衛生委員会で協議をします。協議が完了したら実際に内容を決めていきましょう。最後はあらためて従業員への周知です。

フロー2:担当者によるストレスチェック

事前準備が完了したら次は担当者によるストレスチェックの実施です。

まずは各従業員がシートの項目を記入していきます。記入したデータは医師や保健師が確認し、ストレスが高く病気の可能性がある方を特定。面接指導を行うかを決めていきます。

尚、チェック結果は守秘義務があるため、情報は厳格に管理していきましょう。

フロー3:労働者へ結果を通知

続いてチェック結果を労働者へ通知していきます。ストレスが高いかどうか、またストレス過多により面接の可能性があるかどうかを通知。

また、いかなる場合でも労働者の許可が無ければ、本人の結果を事業者が知ることはできません。万が一労働者の許可を得て結果を知っても、記録を作成して5年間保存する必要があります。

フロー4:医師による面接指導への申請

医師による面接を希望する場合はこの段階で申請可能です。

また、医師が「面接が必要」と感じれば、労働者本人へ申し出るよう勧奨していきます。それでも申し出ない場合は相談やカウンセリングの場を提供する対応も必要です。

そのため、事業者にとってはストレスを感じている人が医師へ申し出やすい環境づくりも重要となります。

フロー5:医師による面接指導

従業員から面接指導の申し出があれば約1ヵ月以内に実施していきます。

医師が面接で確認する内容は「現在の勤務状況」「心身的負担の状況」「生活環境の変化」など、直近の状況を様々な角度からヒアリング。

基本的には事前に回答したチェックシートをもとに指導しますが、具体的な悩みや不満は積極的に相談していきましょう。医師が経験に基づいてアドバイスを送ってくれます。

フロー6:医師の意見を聴取する

医師は指導結果報告書と意見書を作成し事業者へ提出します。事業者は約1ヵ月以内に医師へ聴取し、状況を把握していきます。

医師と事業者の間でうまれる齟齬を防ぐためにも、2つの書類提出が必要なのです。

フロー7:就業上の措置の実施

医師から意見を聴取したら対応策を考えていきます。「異動したら改善しそうか?」「業務量を減らしたらストレスが減りそうか?」などを検討していきましょう。

案が決定したら労働者へ相談し、本人が納得したら措置を実施します。本人が納得せずに実施するとさらにストレスを抱える可能性もあるため、この段階での話し合いは重要です。

2019年に改正された労働安全衛生法のポイント

労働安全衛生法のポイントについて解説します。

労働時間の把握

労働時間については厳格な管理が求められるようになりました。

具体的にはタイムカード・ICカード・パソコンによる管理を要求していきます。「いつどれだけ働いているか?」「特定の従業員だけ多く働いていないか?」などを見える化するためです。

尚、労働時間は3年間保管する必要があり、グループウェアや勤怠管理システムで適切に管理していきましょう。

労働者への周知

労働者への周知は主に産業医と労働者に関する内容が書かれています。

具体的には「労働者が医者へ相談する方法」「労働者自身の心身に関する情報の管理体制」などを労働者へ周知すべきと明記されているのです。

PC上の掲示板やメールで労働者全員が的確に把握できるよう、周知していきましょう。

労働者の心身の状態に関する情報の収集・取扱

続いては労働者の心身の状態に関する内容についてです。「労働者の健康確保が必要な場合のみ、心身の情報を取り扱うことができる」と書かれています。

従業員が快適に働くことを目的として聞くなら問題ありません。それ以外のプライベートに関わるような目的であれば、心身の状態を確認してはいけないのです。

医師による面接指導

労災事故件数を限りなく減らすためにも医師による面接指導が見直されました。従来時間外労働100時間の労働者が面接対象でしたが、改正後は80時間に変更。

また、研究開発に従事する労働者や年収1075万円以上かつ専門的なスキルを要する労働者の場合、本人の許可なしに面接指導を行う必要があります。

産業医・産業保健機能の強化

以前よりも産業医の存在は大きくなりました。産業医が労働者の健康を管理できるよう、事業者は産業医に対して情報提供が可能。

「このままでは病気にかかる可能性がある」「すでに大きなストレスを抱えて働いている」と産業医が判断すれば、事業者へ勧告します。

その後、事業者は衛生委員会に報告しなければいけません。このような流れが確立されました。

2020年に公布された労働安全衛生規則の変更点

2020年に交付された労働安全衛生規則の変更点を解説していきます。

「健康管理手帳の様式変更」「トンネルなどの掘削作業主任者の職務項目の追加」などが変更されました。今後も規則は変更が予想されるため、随時チェックしていきましょう。

新型コロナウイルスに感染した場合は就業できない

新型コロナウイルスに感染した場合は就業できません。感染力を伴うウイルスであり、過去にも集団感染が何件も報告されています。

まずは病院へ受診し今後の判断を仰いでいきましょう。通常は一定期間自宅待機となり、待機期間が終了すると出社可能です。

また、感染した場合の給与について気になりますが、休業手当が発生する場合もあるため確認しておきましょう。

社員の安全と健康の確保のために労働安全衛生法の確認を

労働安全衛生法は従業員が快適に働くために制定されている法律です。具体的にはストレスチェックの実施や産業医による問診で健康維持をはかっています。

あわせて事業者は広い視野で労働者の健康状態を確認していく必要があるでしょう。また、安衛法は随時内容が変更されているため、見逃しがないよう確認が不可欠です。