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労務管理とは?知っておくべき業務内容と効率化の方法4つを解説!

労務管理

従業員の労務環境や労務状況を管理する「労務管理」。長時間労働やブラック企業など、従業員の不満と成り得る環境を作り出さないためにとても大切な業務です。では、労務管理を円滑に行うためにはどういったことが必要になるでしょうか?今回は労務管理に必要なスキルや業務内容、労務管理の現場の課題を詳しく解説していきます。

労務管理とは

労務管理とは、社員の労働条件や労働環境、福利厚生などを管理する業務のことを言います。詳しくは後ほど説明しますが、具体的な仕事内容として、勤怠管理や入社、退社に伴う社会保険の手続きなどが含まれます。社員が持つスキルを十分に発揮するためには、労務管理による環境の管理が必要不可欠です。

労務管理の目的

企業の経営資源として「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つが挙げられることが多いです。そのうちの1つである「ヒト」についての管理を行うことが労務管理の役割になります。「ヒト」に関する業務は、図べ手の企業において重要度が高いと言えます。

例えば、優秀な経営者がいて、その企業の理念が魅力的なものであっても、社員の業務へのモチベーションが低いと長期的な発展は望めません。モチベーション向上のためにも、適切な労働条件、環境づくりは深くかかわってきます。

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労務管理に必要なスキル

労務管理の業務を受け持つ社員は、労働に関する法規の知識、スキルを身に着ける必要があります。企業の活動においてコンプライアンスを重視し、社会からの信頼を向上させ、適切な業務を行うことが求められています。

近年では、人材マネジメントシステムや労務管理システムの台頭により、労務管理の業務において高度な専門的知識は求められなくなっています。必要最低限のITに関する知識を持ち合わせていれば、誰でも簡単に業務を遂行することが可能です。

その代わりに労務管理に従事する社員には、経営者に近い視点を持って物事を見通すことが重要視されています。人件費をいかに抑えて、利益を増やしていくか、適切な労働環境づくりを行い、社員のモチベーション向上を図るかなど、長期的な視点で行うべき課題の解決を担っていく必要があります。

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労務管理の業務内容

労務管理の実際の業務内容は、労働契約の手続きや健康管理など、多岐に渡ります。今回は具体的な業務を7つ紹介します。

  • 労働契約やそれに伴う手続き
  • 各種規則の整備
  • 各種保険の手続き
  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 法定三帳簿の整理
  • 安全・健康管理

労働契約やそれに伴う手続き

労働契約の締結は、社員を新しく雇用したり、契約社員の契約更新の際に必要となります。労務管理を担当する社員は「労働契約の締結」や「労働条件の通知」などの業務を担っています。

労働契約を締結する際には、社員に労働条件を説明します。労働契約の締結と並行して、社員の労働条件が記載された「労働条件通知書」の交付が義務付けられています。記載内容としては、企業と社員の間で雇用契約の内容についての合意がなされたことを証明する「雇用契約書」と似たようなものです。この2つの書類を兼用し「労働条件通知書兼雇用契約書」として社員に交付することも可能です。

各種規則の整備

労務管路を担当する社員は、就業規則や社則の規定・変更も行います。就業規則とは、企業と社員との約束事を明文化した、職場でのルールブックのことを指します。常時使用する社員が10名以上の場合、就業規則の作成と、作成した就業規則の労働基準監督署への提出が義務付けられています。

各種保険の手続き

健康保険や厚生年金保険をはじめとした「社会保険」や「雇用保険」の手続きを行うことも、労務管理における重要な業務です。入社・退社や休職時、異動時などに手続きを行う必要があります。

また、手続きを行う際に、社員から収集する「マイナンバー」の管理を適切に行うことも、労務管理の重要な役割と言えます。

勤怠管理

「何時に勤務を開始し、何時まで勤務したか」や「休憩や有休休暇を適切に取得していたか」など、社員の勤怠の管理を行うことも、労務管理の重要な役割と言えます。企業の始業時間、就業時間、有給休暇などを把握し、時間外労働の有無や有給休暇の取得状況などを適切に記録しましょう。

また「働き方改革」の一環として2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」を正しく理解する必要があります。これにより、長時間労働の是正や、近年増加している新しい働き方への対応が求められます。

給与計算

社員を雇用する全ての企業において重要な「給与計算」も、労務管理の業務に含まれます。社員の勤怠を適切に把握し、残業手当等の各種手当の金額や、欠勤のため控除する金額などを確定させていきましょう。

給料を支払う際には、社会保険料や雇用保険料などの控除額を正確に計算することが必要になります。その額に誤りがあると、社員とのトラブルにつながる可能性があるため、細心の注意を払って業務を行いましょう。

法定三帳簿の整理

法定三帳簿とは、労働基準法により、企業に対し整備・管理・保管が義務付けられている帳簿のことを指します。この法定三帳簿の整理を行うことも、労務管理の業務に当たります。具体的には「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つが該当します。

この書類を適切に管理していないと、労働基準法違反となってしまい、企業に罰則が科されてしまう可能性があるため、注意して業務を行いましょう。

安全・健康管理

職場の安全衛生管理や、社員の健康管理も、労務管理の重要な役割と言えます。安全面や健康管理については、労働安全衛生法で規定されています。「衛生管理者を代表としたスタッフの任命」や「社員への安全衛生についての教育の実施」「健康診断やストレスチェック」など、必要な対策を実施する必要があります。

ハラスメント対策

セクハラやパワハラは従業員の不満になり、離職につながる可能性もあります。ハラスメントの被害にあっている従業員の相談に乗ったり、さまざまなハラスメントから従業員を守ることも労務管理の大切な仕事のひとつです。特に被害の多いパワハラとセクハラを例にあげて紹介します。

パワハラ対策

パワハラ(パワーハラスメント)とは、役職や上下関係の優位性を背景として起こることが多いです。権力を行使して部下を怒鳴りつけたり、暴力を振るうなどがパワハラにあたります。パワハラの被害が出てからでは遅いので、日頃から従業員に目を配り、パワハラに悩む人が出ないように注意しましょう。

セクハラ対策

セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、性的な嫌がらせのことで、男性から女性に対してだけではなく、性別問わず行なわれることがあります。セクハラが起こった時のために相談窓口を設置するのもいいでしょう。もしセクハラが起こってしまった場合は被害者のプライバシーを守りながら対応することが重要です。

労務管理の現状の課題

労務管理についての現状の課題を今回は4つに分けて解説します。

  • 多様な働き方への対応
  • コンプライアンス
  • 情報管理

多様な働き方への対応

先述の通り「働き方改革」が浸透しつつある近年では「リモートワーク」や「副業・兼業」「ワーケーション」など、働き方についての多様化が進んでいます。従来通り労務管理を行っていると、これからの働き方に対応できなくなってしまいます。このように多様化する働き方に対応していくため「就業規則の改定」や「社内規則の新たな項目作成」などを行う必要があります。

コンプライアンス

労働基準法をはじめとした「労働法」についても、時代の変化に対応する形で改正があります。企業が法令違反とならないように、法改正に関連した情報の確認を定期的に行う必要があるでしょう。このような対策を行うことで、コンプライアンス(法令順守)に繫がります。

情報管理

労務管理では、社員の「住所」や「連絡先」などの個人情報を扱います。従来は紙ベースでの管理が主流となっていましたが、近年ではデータで管理する企業も増加しています。機密情報などが社外に漏えいしてしまわないように、アクセス制限を設定したり、セキュリティの高いソフトウェアを導入するなど、情報管理を徹底して行う必要があります。

⇒労務管理の課題について詳しく知りたい方はこちら

労務管理を効率化させるには

働き方改革や企業の生産性の向上を目的として、厚生労働省は「働き方改革推進支援助成金」などの様々な助成金の制度を設けています。労務管理を効率化させ、企業の生産性を向上させるには、どのようなことに取り組めばよいのでしょうか?今回は具体的な方法4つを解説します。

書類のペーパーレス化

企業の情報の管理を、紙ベースからデータでの管理に移行する「ペーパーレス化」は、労務管理の面だけでなく業務全般において有効であると言えます。ペーパーレス化に移行することで、労務管理で使用する様々な情報の管理・更新が容易になります。しっかりとセキュリティ対策を行ったうえで、ペーパーレス化を進行させていきましょう。

労務管理システムで勤怠管理

管理する社員の数が増加したり、働き方が多様化していくと、従来のような表計算ソフトで勤怠管理や給与計算を行うのが困難になります。そのため、労務管理システムでの管理に移行することで、社員の勤怠管理や給与計算を効率的に行うことが可能になります。

労務管理システムの種類は多岐にわたるので、自社に必要なシステムを選ぶようにしましょう。

⇒労務管理のシステムについて詳しく知りたい方はこちら

アウトソーシングや業務委託の利用

労務管理は、法律などの知識が必要な専門性の高い業務を行うのに対し、企業に直接的な利益を与えない「間接部門」の業務であると言えます。このような業務は「アウトソーシング」や「業務委託」などの外部の力を借りることにより、効率的に行うことが可能です。このような活用で、コアな業務に専念できる時間が増え、業務の効率化や生産性を向上させることができます。

業務の流れの見直し

業務についての流れを定期的に見直すことも、労務管理の効率化に繫がります。行っている業務を最初から洗い出すことにより、業務にムダな工程がないかや、別の部門や外部に委託できる業務がないかなどを把握することが可能になります。

テレワークや在宅勤務の労務管理

コロナウイルス感染拡大防止のためにテレワークや在宅勤務に切り替えた企業も多いでしょう。しかし、テレワークや在宅勤務では従業員の様子を直接見ることができないため、労務管理の業務が滞ってしまいます。
働き方がそもそも変わっているので、今までの就業規則を変更したり、新たに在宅勤務の規則を策定するなどして対応しましょう。
併せて今まで支給していた交通費や諸手当をどうするかも検討しましょう。
ワーケーションの場合も同様です。状況に合わせて柔軟に対応することが大切です。

⇒テレワークの労務管理について詳しく知りたい方はこちら

効率化を図り、生産性の向上を目指しましょう

社員の「労働条件」や「労務環境」などの管理を行う「労務管理」の業務は、どの企業にとっても欠かせないものです。様々な業務を正確に行い、テレワークや副業などの新しい働き方にも対応していくためには、最新の法律や規則を正確に把握しておくことが重要です。また「労務管理システム」や「アウトソーシング」なども活用し、労務管理の効率化を図り、企業全体の生産性の向上につなげてみてはいかがでしょうか。