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ダイバーシティとは?注目される理由と今後の展開を解説

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ダイバーシティとは?

その定義は「人材の多様性を認め、受け容れて活かすこと」とされます。
社員の多様性の高さを実現しつつ、多様性の高さによって生じる様々な社員間の違いを、企業としても、各社員としても受け容れ、そのうえで、企業経営に生かすということになります。

ダイバーシティと聞くと、LGBTや人種が思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか?その分類についてご紹介します。

ダイバーシティには二種類ある

経営学の文脈でダイバーシティが用いられる際、表層的なダイバーシティと深層的なダイバーシティの二種類に分類されます。

1)表層的なダイバーシティ

人種や性別、年齢等の外見で判別できるのものを指します。

2)深層的なダイバーシティ

性格、考え方、習慣、宗教、趣味、職歴、スキル・知識、コミュニケーションスタイル、性的指向等の履歴書等の外見からは判断しにくい部分になります。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティは、それぞれ異なるバックグラウンドや特性を持つ多様な人材を受け入れることに焦点を当てています。

一方で、インクルージョンは多様性だけでなく、それらの人材を組織の一員として受け入れ、活用するための文化や環境を構築することに焦点を当てています。多様性のある人々が組織内で自分自身を表現することで、効率よく自身の成長や社会への貢献につながります。さらに、多様性を持つ人々が組織内で活躍すれば、生産性の向上が期待できるでしょう。

まとめると、前者は多様な人材の受け入れに焦点を当て、後者は多様な人材を組織内で活かすための環境づくりに焦点を当てているという違いがあります。両者は密接に関連しており、組織が成功するためにはそれぞれの考えを組み合わせることが重要です。

ダイバーシティ&インクルージョンはなぜ注目されるのか?

これらの考え方はなぜ注目されているのでしょうか。ここではその理由について解説します。

昨今ではイノベーションが経営において重視されている

近年トレンドになっている言葉の一つにVUCAというものがあります。これは、現代の経営環境が変化が激しく不確実性が高くなっていることを表しているものです。
変化の激しい経営環境においては既存のコアコンピタンスは長続きせず、企業の競争優位も崩されやすいとされます。そのため、企業は継続的にイノベーションを生み出していく必要があるとされます。

それでは、イノベーションを生み出すために企業は何をすべきなのでしょうか?

ダイバーシティ&インクルージョンはイノベーションに効く

イノベーションを生み出すための研究は盛んに行われており、様々な主張がされていますが、多くの経営学者の意見の一致する主張の一つとして「社員の多様性の高さがイノベーションに有効だ」というものがあります。イノベーションには既存地の掛け合わせが不可欠であり、既存地の掛け合わせには社員の多様性をあげる必要があるとされているのです。そのため、昨今ではダイバーシティ&インクルージョンが注目されているのです。

ダイバーシティ&インクルージョンの企業事例

ダイバーシティ&インクルージョンの導入事例は?

Google

Googleは、ダイバーシティ&インクルージョンをすすめている先進的な企業として知られています。日本法人での取り組みについてご紹介します。

Googleは各地域、国ごとにダイバーシティ&インクルージョンを推進する担当者を設置しています。Googleアジアパシフィック地域のダイバーシティを担当し、ダイバーシティの日本統括も担っている山地氏は、Googleがダイバーシティ&インクルージョンを推し進める理由について

「文化が違う人材と一緒に働き、今までとは違う視点が入ることで、瞬間的には対立が生まれ、スムーズにいかなくなる可能性はあります。しかし、最終的には多様性が担保されているほうが、より良い結果を導くことができるということが明らかになっています。グーグルでは、長期的な視点で多様性のある環境を目指していくことこそ、イノベーションには不可欠だと考えています。」

Nikkei WOMAN SMART DUALプレミアム 「グーグルはダイバーシティーでイノベーションを生む」より抜粋

として語っています。また、女性と男性の対立が採り上げられることが多いダイバーシティですが、山地氏によると着目すべきは「従業員のバックグラウンド」だとされています。

そして、社内には往々にして「unconscious bias(無意識の偏見)」があり、この偏見を取り除くことで、インクルージョンが達成されるとしています。そのため、「アンコンシャス・バイアス・トレーニング」と呼ばれる研修を導入しているとのことです。

株式会社ローソン

コンビニチェーンとして大手である株式会社ローソンでも、ダイバーシティの推進に関して意欲的に取り組まれています。おもに力を入れている点としては、「男性の育児支援の活用」「女性が活躍できるような環境整備」などです。

具体的な取り組み内容としては、以下の通りです。

  • 「女性の活躍」をテーマとした冊子を配り、その重要性を浸透させていく
  • 男性が育休を取得できるために、専用の社内制度を作成する
  • 管理職の研修内容に「多様性」に関する内容を追加し、理解を深めてもらう

このような取り組みを実施した結果、女性社員の数、男性の育休取得率が増加することとなりました。

深層的な多様性も重要である

女性と男性の対立が採り上げられることの多いダイバーシティですが、山地氏によると着目すべきは従業員のバックグラウンドだと言います。そして、社内には往々にして「unconscious bias(無意識の偏見)」があり、この偏見を取り除くことで、インクルージョンが達成されるとしています。そのために、「アンコンシャス・バイアス・トレーニング」と呼ばれる研修を導入しているとのことです。

ダイバーシティが重視されないときに起きる問題

多様性の許容や受け入れが重視されないとき、どのような問題が起こるのでしょうか。ここではその問題についてご紹介します。

キャリア・働き方に関する問題

まず、キャリアと働き方に関する問題が浮上する恐れがあります。具体的には、多様なバックグラウンドを持つ社員のキャリアや、成長の機会が制約される可能性があります。育児や出産によって昇進が困難となると、望んでいたキャリアが絶たれることとなるでしょう。

また男性による育児参加が難しくなり、いつまでも性別にとらわれた組織形成をしてしまいます。男性・女性らしさを強制するあまり、服装の強要をはじめとした行動の制限につながることもあるでしょう。

多様性のある社員に対応できなければ、労働力を最大限に活用できません。これが続くと、組織は人材の流失や生産性の低下に直面することになります。企業の長期的な成功につなげるためには、多様性を受け入れ、働き方に関する問題を解決することが不可欠な要素です。

個人の生き方や生活に関する問題

個人の生き方や生活などにも問題が生じてしまいます。たとえば、育児や介護をしている従業員が十分なサポートを受けられない場合、仕事と家庭のバランスが取れなくなり、両立が難しくなるでしょう。これは、QOL(生活の質)を低下させる原因にもなります。

異なる宗教や文化を持つ社員に対する配慮が欠如すると、国籍や人種によって就ける仕事に制限がかかったり、教育格差が生まれたりする恐れもあります。その結果、社員の満足度が低下して、離職率の増加につながるのです。そのような状況にならないためにも、多様性を受け入れて、これまでの生き方や生活を送りつつ、自分らしく働けるような環境を整えることが大切です。

企業がダイバーシティーを導入するメリット

企業にとって、多様性を受け入れることはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここではダイバーシティを導入するメリットについて解説します。

優秀な人材確保と活用が可能

優秀な人材の確保と活用ができるメリットがあります。多様性のある人材を受け入れることで、組織は幅広い才能を引き寄せる機会が広がります。異なる文化や価値観を持つ人々が集まる環境であれば、新しいアイデアやアプローチ方法が生まれやすくなるでしょう。

さらに、多様性を尊重する組織は、社員の意欲を高めるきっかけとなります。社員が自身の特性が尊重されて、認められる環境であると分かれば、生産性が向上し、チームワークの強化につながります。このように、多様性を活かして優秀な人材を確保・育成・活用できる企業は、将来の成功に向けた強力な基盤を築けるようになるでしょう。

競争力を強化できる

企業の競争力を強化できるメリットもあります。多様性を持つ人材が集まることで、組織はさまざまな視点やアイデアを取り入れられるため、市場での差別化を図れます。競争の激しい環境で勝ち残るためには、異なる経験と知識を持つ社員の力によって新規性・独自性を高めることが重要です。

ダイバーシティが尊重される環境を推進できれば、社員の意欲やチームの協力性の向上も期待できます。また、多様な人材を受け入れる企業は、グローバル市場での展開にも成功しやすくなるでしょう。

このように、多様性の受け入れを推進し、異なる視点を活用する文化を醸成することが大切です。この方針が組織に浸透すれば、企業はビジネスの変化に対応して成長の継続が可能となるでしょう。

創造性や革新性が期待できる

企業の創造性と革新性を高められるメリットもあります。異なる視点を持つ社員が協力することで、新しいアイデアやアプローチ方法が生まれやすくなります。革新的なプロジェクトや製品が生まれれば、競争力を高めて、顧客やクライアントに新たな価値の提供が可能です。

また、多様性のある社員がいれば、異なる文化や価値観に対する理解が深まり、国際市場での展開にも有利に働きます。顧客とのコミュニケーションや異文化間のビジネス取引の際に、スムーズに成約できるきっかけとなるでしょう。

このように、さまざまな視点からのアイデアや交流を生み出せる環境は、企業の競争力を支える柱となります。多様性を尊重し、創造性と革新性を生み出しやすい文化を築くことは、企業の成功に欠かせないものなのです。

ダイバーシティ&インクルージョンを導入するには?

ダイバーシティやインクルージョンを導入するにはどのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは導入時のポイントについて解説します。

制度設計でダイバーシティ&インクルージョンの達成を狙う

上記のGoogleの例であった通り、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する担当者を設置することも一つの打ち手でしょう。しかし、担当者を設置する企業は増加傾向にあるものの、ダイバーシティ&インクルージョンはあまり進んでいません。その原因として、従業員の意識が変革されていないこと、担当者の意識が改善されていないこと、採用が変革されていないことの三点の理由が考えられます。

一点目については後述しますが、担当者はダイバーシティ&インクルージョンを推進する理由を明確に理解する必要がありますし、採用についても多様性を確保できるような制度設計を構築することで、採用担当者個々の意思決定に左右されずにダイバーシティ&インクルージョンを推進することができます。

社員教育(研修)でダイバーシティ&インクルージョンの意識を向上させる

ダイバーシティ&インクルージョンを推し進めるにあたって、社員教育は不可欠です。多様性が高い状態とは、従業員間の対立が生じやすい状態であり、従業員が他者との違いや対立を受容できることが必須なのです。Googleの例でもあるように、社員研修は有効な打ち手になるでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンは今後どうなるのか?

ダイバーシティやインクルージョンは今後どのような変化があるのでしょうか。ここではその展望について解説します。

ダイバーシティ&インクルージョンは欧米を中心に更に進展し、国内でもその流れは加速する見込みである

アメリカのテック企業を中心に、ダイバーシティ&インクルージョンは推進されてきましたが、昨今では製造業やサービス業でもダイバーシティ&インクルージョンのイノベーションへの有効性に注目が集まっており、欧米諸国ではダイバーシティ&インクルージョン推進の流れはまだ暫くは続くと考えられます。
国内においては、女性の社会進出推進の波に乗って、男女格差を是正する方向での多様性が高まると考えられます。一方で、性別は表層的な多様性の項目であり、表層的な多様性のみを高めることは企業経営に悪影響を及ぼすという研究結果も現れています。その意味では、深層的な多様性を高める取り組みも、女性登用と併せて行っていく必要があるでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンにHRテックを利用

ダイバーシティやインクルージョンを推進するには、HRテックの利用がおすすめです。

HRテックを利用してダイバーシティ&インクルージョンの現状認識・施策考案・施策実行を支援する

自社のダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で重要なことは、自社の多様性をモニタリングすることです。とはいえ、社員一人一人をみていても、全体観はつかめません。木を見ずに森を見るためには、HRテックの力を借りることも一つの手でしょう。HRテックの中には社員の属性分析等が可能な物もあり、ダイバーシティ&インクルージョン推進の強力な助けになると考えられます。
(参考:タレントマネジメントシステムに求められる機能

参考記事