コラム

人事関連でお役に立つ情報を掲載しています。ぜひご活用ください。

  1. トップ
  2. コラム
  3. 社内制度・組織づくり
  4. メンバーシップ型雇用とは?メリット・デメリットや今後の課題を解説

メンバーシップ型雇用とは?メリット・デメリットや今後の課題を解説

時代の変化にともなって、社会のソリューションが徐々に進化してきていると同時に、仕事を行える人口や従業員の働き方にも変化がみられています。

そのため、日本の雇用の根幹でもある「メンバーシップ」と呼ばれる体制についても、あらためて考えを見直す必要があります。

今回は、この雇用の概要を説明しつつ、今後の日本に求められる働き方について考えていきましょう。

メンバーシップとは

構成されたチームの各役回りを遂行し、集団の1人としてリードすることをメンバーシップといいます。同じチームにいても、スタッフの性格や年齢、受け持っている仕事などが異なります。

チームのなかで効率よくゴールに到達するためには、一任されている自身の役回りを把握しつつ、他の人たちと協力関係を持つ必要があるのです。場合に応じた柔軟な対応をしつつ、チームのゴールに向けた役割に従事し、アクションを実行することが大切です。

メンバーシップと似た用語

なかには同じような言葉もあるため、注意が必要です。ここでは、メンバーシップと似た言葉について解説します。

リーダーシップ

設定した作戦にもとづいたうえで、周りを感化させながら目標に向かって取り組む動きを指します。目標までリードできる力、あるいはスタッフたちの期待を高める力ともいえるでしょう。

メンバーシップは、物事を体系的に組み立てたうえでアクションを行い、目標に向けて自身の役回りを遂行する力です。それに対して、こちらは「目標の筋道を立ててリードする力」という違いがあります。

フォロワーシップ

リーダーやチームのために、スタッフの立場からサポートを行うことを指します。組織の生産性を最大限に高めるためには、上層部の力だけが強くても意味がありません。スタッフを含めた全員の力があってはじめて成り立つものです。

スタッフの立ち位置を意識して、チームをサポートするメンバーシップに対して、こちらは役回りはとくに関係ありません。チームのために適切なアドバイスをしたり、正当性のある批判を行ったりして全体の活性化を図るのが特徴です。

メンバーシップという言葉の使い分け

メンバーシップは企業でよく用いられる言葉ですが、他の意味として使用されることもあります。ここではその例についてご紹介します。

看護

看護で使用する場合、組織全体でゴールを明確にして、従業員それぞれがフォローを行う、という意味があります。

これは実際に、看護協会の能力開発・評価システムのなかでも説明がされています。看護師はチーム医療で患者さんをサポートするため、他のスタッフとの連携が必要不可欠です。たとえ新人だとしても、組織の1人であることを意識したアクションが重要です。

商品、サービス

ここでは「加入者」という意味合いで使用されることが多いです。たとえば、YouTubeで利用できるメンバーシップは、動画を見ている方がチャンネルに定期的な料金を支払うシステムがあります。その加入によって、限定の動画やメッセージの配信を閲覧できたり、独自のスタンプを利用できたりするのです。

このように、同じ言葉だとしても、状況によって意味がまったく異なるのがわかります。

メンバーシップ型雇用とは

雇用で用いられる言葉に「メンバーシップ型」というものがあります。ここでは、この雇用を含めたさまざまな種類について解説します。

ジョブ型雇用との違い

ジョブ型雇用は、仕事内容や就労時間、作業場所などをあらかじめ決めたうえで内定する方法です。一方、メンバーシップ型は生涯雇用を中心としたものです。仕事内容をとくに定めないまま就労を行い、職業や働く場所、残業時間は企業によって異なるというスタイルです。

日本は会社の労働組合の保有率が比較的高いといえます。そのため、パワハラやセクハラといった被害を受けた際は、早期に報告すれば解決しやすいのが特徴です。

タスク型雇用とは

期日や作業範囲が割り振られている仕事ごとに採用する形式が、タスク型雇用です。他の雇用スタイルよりも柔軟性が高く、スピーディーに成果を得られる人材を確保できるのが特徴です。これは単発作業の外注を行うようなアウトソーシングに近いといえます。しかし、このスタイルでは収入が安定せず、各種保険に入る義務がないため、サポート体制が不十分である点がネックです。

メンバーシップ雇用が議論される背景

現在ではコロナウイルスの拡大によって「ジョブ型に変更するのが正しいとは限らない」「日本はそのままの形式でも問題ないのでは」という解釈が生まれています。たしかに、社会の進歩にともなって「日本の形式はおすすめできない」「海外でメインとなっているジョブ型にするべき」という風潮になっていました。

時代の変化とともに、新しい仕事の方法が多く生まれてきています。一番重要なのは、形式にこだわるのではなく、時代にあわせて変化していくことです。

メンバーシップ型雇用の特徴

メンバーシップ型には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、そのおもな内容についてご紹介します。

終身雇用

従業員が定年退職するまでの期間は、就労を保証する制度のことです。過去に経済が発展してきた時期に取り入れられた制度であり、質の高い人材を確保するために推奨されていました。

生涯雇用は法律で決められたシステムではなく、日本の習慣といえるものです。そのため、生涯雇用といってもこの制度に大きな力があるわけではありません。しかし、従業員が大きな問題を引き起こすことがなければ、解雇されることもありません。

年功序列

従業員の年齢や勤務経験の年数に応じて昇給したり、役職に就いたりする制度を指します。年数とともに仕事を重ねていけばスキルや技術が向上するので、会社への貢献度が高くなる、という思想からきています。

利点としては、仕事を辞める従業員が減少する、人事評価がスムーズとなる、などがあるでしょう。一方で、熱心な若い従業員の仕事に対してのモチベーションが下がりやすいというリスクも潜んでいます。

企業別組合

会社で働いている従業員によって構成された労働団体です。理不尽な解雇や待遇から従業員を守りつつ、仕事を継続できる職場を作るために設立されたのが経緯です。外国では業界それぞれに設立されるので、日本とはまた異なった制度です。

こちらの利点は、理不尽な待遇を受けたときに企業にクレームを伝えやすい点があげられます。組合とともに連携すれば、会社に対しても同じ立場として話が行えるのです。

メンバーシップ型雇用のメリット

メンバーシップ型を採用する際、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、それぞれの利点についてご紹介します。

従業員は終身雇用が約束される

スタッフの生涯雇用がある程度決まる点が大きな利点の1つです。日本特有の年功序列があり、労働組合も持ちあわせているため、理不尽な解職がない点が大きな強みといえるでしょう。不安定な仕事環境から脱したいと考えている方にはおすすめの採用形式です。

異動、配置替えを行いやすい

基本的に解職されることがない代わりに、異動や配置変更を行いやすいです。

これは生涯雇用の見返りともいえる要素で、従業員としても容易に背けるわけではありません。従業員一人ひとりに決まった仕事内容を委任しているわけではないのも、その理由の1つです。

会社の目標が急遽変わったときや、メンバーの欠員が出たときなどを理由として異動を決定するパターンが多いです。

ゼネラリストを育成できる

決まった仕事内容や勤務場所を指定せず、会社側の方針でさまざまな経験を積む機会が多いため、ゼネラリストの育成にはおすすめです。

これは「幅広い知識やスキルを備えている人」という意味があります。たとえば、技術職から営業職、さらに人事といった複数の仕事を経験することで、どの業務に対しても一定の成果をあげられる人材として成長できるのです。

採用コストを抑えられる

新卒の人材をまとめて採用する機会が多いため、コストを低くおさえられるのも利点の1つです。都度採用を行う場合、従業員が離職するたびに費用をかけて採用業務を実施しなければいけません。

さらに企業のニーズに適した人材をすぐに見つけられるわけではないため、採用業務を長期間行うケースもあるでしょう。新卒を対象とした一括での採用なら、コストや時間もかからずに人材の確保が可能です。

チームワークが強化される

従業員同士のコミュニケーションが密となり、信頼関係を作りやすいのも利点といえるでしょう。協力体制をうまく作れたら、お互い連携をとりながらスムーズに仕事を行えます。信頼関係があると、企業やチームへの愛着感や所属感もより強くなるでしょう。

長期間の計画を進める際もチームごとの衝突が減少し、最後まで協力しながら作業を進められます。

愛社精神を育みやすい

生涯雇用は、従業員にとって「ずっと居られる職場」「安定感・安心感を享受できる場所」というイメージを持ちやすいです。同時に「企業に貢献をしたい」「企業を大事にしたい」という思いも大きくなるので、信頼性の高い従業員として成長できます。

経験年数が多くなるほど、新しく仲間である従業員が徐々に増えていき、さらに企業への信頼感を高められるでしょう。

メンバーシップ型雇用のデメリット

利点が多い一方で、注意しなければいけない点もあります。ここでは、おもなデメリットについてご紹介します。

組織の新陳代謝が停滞する可能性がある

生涯雇用を中心とした企業だと、従業員がすぐに退職してしまうと教育にかかった費用対効果を得られない危険性があります。企業に長期間居続けてもらうためには、給料や会社の補助などの条件を調整する必要があります。

従業員としては安心だと思うかもしれませんが、かえって人材の入れ替わりが停滞し、企業の勢いが落ちていく危険性があるのです。この問題を解決するためには、人材の退職や離職を促す仕組みも重要です。

スペシャリストを育てにくい

メンバーシップ型は幅広い業務を学ぶのに優れた雇用である一方、特定の分野に突出した人材の教育には向いていません。会社内でも複数の業務を入れ替える取り組みを行うための教育が中心なので、いずれかの分野に特化した体制を作れないからです。企業として専門的なスキルが必要となった場合は、体制自体を新しく変える必要があります。

人件費がかかる

経験年数が増えるごとに給料も高くなる関係上、長期的な目線でみるとコストが徐々にかさみます。人材を1人確保するだけでも、少しずつコストが増えていくので、企業としても今後大きなダメージとなる可能性があります。新人に対しての教育コストも必要となるので、短期・長期ともに費用対効果が得にくいこともあるでしょう。

人員整理がしにくい

生涯雇用は法律による制度ではありませんが、従業員を容易に解雇はできません。そのため、成果が乏しかったり、生産性のある仕事ができなかったりする従業員にも、将来的に多くの給料を支払う必要があります。

以前は従業員を自発的に退職させるために、明らかに不平等な待遇を行う企業もありました。しかし、現在ではこのような事態が発生すると、世間の信用問題に大きく関わることとなります。

新たな人材を採用しづらい

職の流動性が高い現在、質の高い人材の採用が求められています。しかし先ほど説明したように、生涯雇用が足枷で従業員の入れ替わりが乏しく、メンバーの整理が困難です。そのため、質の高い人材を確保する余裕がなくなってしまいます。

質より量を重視していた時代では、その心配はなかったかもしれません。しかし、時代が変わった今、メンバーシップ型を不自由に感じるケースが増加傾向です。

正規雇用と非正規雇用の待遇差が大きくなる

正規と非正規の従業員の差が広がっている点も、課題として取り上げられています。たとえば、どちらも同様の成果を生み出しても、前者の方が待遇が厚くなりやすいのです。

この問題については、2020年に行われた労働の見直しにより、同じ仕事を行う場合は雇用の種類に限らず、共通の給料を支払う義務が生まれました。そのため、ある程度緩和された問題といえます。

生産性が下がる可能性がある

仕事の成果と昇給が結びつきにくいのが生涯雇用の特徴です。長期間勤務をしていれば、熱心に仕事を遂行せずとも給料は基本的に上がるのです。

つまり、若い従業員は経験年数が少ないため、いくら仕事を頑張ったとしても、その成果に応じた給料は得られません。

結果的に、若い従業員のモチベーション低下をもたらし、一人ひとりの生産性の低下が連鎖的に起こってしまうのです。

成果が給与に反映しづらい

給料は基本的に経験年数によって左右されるため、若い従業員がいくら貢献をしても成果が反映されにくいです。そのシステムによって若い従業員のモチベーションが低下すると、企業全体の生産性のダウンにつながります。

一方で、ジョブ型は業務のむずかしさや量数、役回りによって給料が左右されます。熱意の高い従業員にとっては、こちらの方がメリットは大きいといえるでしょう。

メンバーシップ型の企業が研修を行うべき理由

メンバーシップ型を取り入れている会社は増加傾向ですが、まずは研修を行うことをおすすめします。ここでは、その理由についてご紹介します。

スキルのボトムアップを行うため

理由の1つとして、スタッフのスキルを底上げして、適切な生産力をキープする必要があるからです。若いスタッフは新しいスキルや経験を吸収する能力が高い傾向にあるので、生産性の向上につながりやすいです。

その若いスタッフにならうように、経験年数を重ねても仕事のパフォーマンスを落とさずに意識する必要があります。会社としても、妥当性のある給料を払うためにも、高いスキルを兼ね揃えたスタッフが求められるのです。

ジョブ型雇用に人材が流れているため

時代の変化とともに、会社が評価の仕組みをあらためて考えたり、労働者が自身の分野を活かした仕事を探したりなど、ジョブ型の思考が広がっています。そのため、会社間で質の高い人材の確保が激化する可能性が高いです。

生涯雇用という安定性・安心感があるからといって、時代の流れを追わずにいることはもうできません。生産性の低いスタッフが増加しないように、知識や技術のアップグレードが必要不可欠です。

実施するべき研修

実際にどのような教育を行うべきなのでしょうか。ここでは、実施するべき研修について詳しく解説します。

新入社員研修

新人研修で行うべき内容としては、以下の通りです。

  • ビジネス面での礼儀
  • コミュニケーションスキル
  • それぞれの専門的なスキルの獲得
  • 課題解決のためのマインド作り
  • PDCAサイクルを回すためのセッション など

このような内容を実施して、企業のスタイルに慣れてもらいましょう。また入社してある程度経過したころに、今までを見つめ直したり、新しいゴールを設定したりなどの課題も取り入れてみましょう。

リーダーシップ研修

この研修は、役職を持っている方や中堅レベルの従業員だけでなく、今後の新企画のリーダーになる方にも必要です。リーダーに必要なスキルは以下のようなものがあります。

  • 鑑識力
  • タスクの把握力
  • マネジメントスキル
  • ネゴシエーションスキル など

今後も社会が変化するごとに、リーダーとして求められるスキルが変わる可能性が高いです。その変化に応じて、必要なスキルの獲得が重要です。

メンタルヘルス研修

社会や職場環境の急激な変化が起こりやすい今、従業員にとっても心の負担が高まりやすいといえます。メンタル面が低下すると、その方はもちろん、会社にとっても悪影響をおよぼす可能性は高いです。

対策として、メンタルのセルフケアを行うための基礎的な方法を学ぶ勉強を実施しましょう。精神面が削られると離職や退職の危険性も高まるので、予防が重要であることを従業員にも周知しておきましょう。

メンバーシップ型雇用の今後と課題

利点や欠点を理解したうえで、今後どのような解決すべき点がみえてくるのでしょうか。ここでは、その詳しい内容についてご紹介します。

生産年齢人口の減少

高齢化社会が進んでいる今、仕事を行える方は徐々に減少傾向となっています。働ける人材が少なくなるので、これは会社にとっても大きな問題といえるでしょう。

この問題は1990年代からすでにはじまっていたとされています。2065年あたりになると、仕事を行える人材は2020年と比べると5割ほどに落ち込むといわれているのです。

この問題を解決するためには、社会の進歩とともに新しい働き方を開拓する必要があると予想されます。

ジョブ型雇用への移行

今後の社会情勢や人口問題を考慮する限り、ジョブ型へ変更する必要性もあると考えられます。しかし、物事は単純ではないため、その考えが最適解とは限りません。

ここ最近では、新しい業務が生まれるごとに人材の確保を行う「タスク型」、働く場所が決められた「正社員(ジョブ型)」なども現れています。

このように、型に当てはまらないような雇用形態を模索していくことも重要となってくるでしょう。

時代の変化に伴いジョブ型雇用が注目されています

メンバーシップ型は、一見安定性があり従業員にとっても安心感のある体制といえるでしょう。しかし、時代の変化にともなって、その地盤は少しずつ崩れつつあります。

今後予想されるであろう、労働人口の減少や人材の流動性が進行していく時代に対応するためには、あらためて企業の働き方について考え直す必要があります。

企業の成長を止めないためにも、現在の問題点を振り返り、新しい体制作りを検討してみましょう。